2004年8月31日

『商いの道』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569604412/

本日の一冊は、先週、古本屋で見つけた10冊のうちの一冊です。古本屋、あるいはアマゾンのマーケットプレイスでないと入手が困難な絶版本です。

著者はご存知、イトーヨーカドー・グループの創業者、伊藤雅俊氏。『商いの道』という王道タイトルと、和紙の風合いが楽しめる渋い装丁にひかれて、思わず買ってしまいました。

で、その中身はというと…。

ひとことで言うと、決して今では流行らない本だと思います。経営書には、「実践の書」「考え方を学ぶ書」「心構えを学ぶ書」といった種類がありますが、現在もっとも大きな部数が出るのは、「考え方を学ぶ書」であり、「心構えを学ぶ書」は、いつしか流行らなくなってしまいました。

これは一体どうしてなのでしょうか?

がむしゃらに頑張ることよりも、工夫すること・考えることの価値が高まったからでしょうか? あるいは多くの良書が模倣され、読者が同じスタイルに飽きてしまったからでしょうか?

いずれにせよ、確かに言えることは、創意工夫も実践も、もとは心構えから生じる、ということです。そして、優れた仕事を成し遂げた方は、皆、心構えも優れている、ということです。

こういった視点で見た場合、本書は、いまどきのビジネス書にはない光を放っています。その内容は、まさに『商いの道』であり、シンプルな言葉ながら、著書の商売にかける真剣な思いや覚悟が伝わってきます。

では、さっそく、その言葉のうち、気になる部分だけをピックアップしてみましょう。
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 本日の赤ペンチェック
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「お客さんは来ないもの」「取引をしたくてもお取引先は簡単に応じてくれないもの」「銀行は貸していただけないもの」、そのようなないない尽くしから、商いというものは出発するのだよ(伊藤氏の母君)

商売とはね、お客さまを大事にすること、そして信用を大事にすること。それに尽きるのだよ(伊藤氏の母君)

人を愛する、ものを作り上げる、それと同等の感動が、”商い”という行為にはあるように思えてなりません。お客様が安心感と満足感を持って商品を買っていってくださる、私どもを信頼されて買っていってくださる、そのありがたさに、商いの本質があるように思います

商人というのは、自らは何も生産せずに、人さまの作られたものをお預かりして、お使いいただく人さまに手渡しする仲介業です。ですから、お客さまから信用を得ると同時に、問屋さん、メーカーさんからの信用も得なければなりません。そこに商いの立脚点があるのです。

商人にとって利益よりも大切なのが信用――と言われる所以です

農民は連帯感に生きる―――商人は孤独を生甲斐にしなければならぬ(「商人の道」より)

商いだけでなく、もの作りの現場でも、芸術の道でも、人生に成功する早道を一つだけ挙げろ、と聞かれたら、私は、「どれだけ人間が好きか」ということを挙げます。人間が生きている様子、泣いている様子、笑っている様子、怒っている様子、喜んでいる様子、人間のすべてをながめて、すべてに関わりたいと考えている人は、半ば成功したも同然です

品物を手にして、「これにいくらの価格をつけるか」が商いの重要なポイントです

地位とお金は誰でも欲しいものですが、それだけを目標にして成功した人はいない

ひらがなで話す人は知恵の人です。書物で得た学問的な知識よりも、実践を通して身についた知恵のほうが、商人には必要です。

お客さまの心の奥底の、お客さま自身も気がつかない欲求を満足させてこそ、プロの商い

成長を考えるな、生存を考えよ
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いかがでしょうか。一見すると平易な物言いですが、見事に商人の進むべき道と心構えを示しています。

というわけで、本日の一冊は、

『商いの道』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569604412/

です。中古で数が限られているため、例のごとく、急がないとなくなってしまいます。欲しい方はお早めにお願いします。

目次

プロローグ 商人の原点 (ないない尽くしからのスタート時代が変わる怖さ ほか)
1 商いの心構え (誠実を貫く難しさ誠実さがお金を集める ほか)
2 心に残る出会い (謙虚なる人柄の崇高さ商売の原点を学ぶ ほか)
3 これからの日本へ (大変な時代への予感銀行神話を見直す ほか)
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