2004年8月5日

『名経営者が、なぜ失敗するのか?』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822244121/

私が思うに、リサーチものの醍醐味というのは、調査結果そのものに驚きの発見があり、その分析の結末にドラマがある、ということだと思います。

その点、今日の1冊はどうでしょうか。結論から言うと、興味深い事例が豊富で、しっかりと書かれたいい本だと思います。

帯にも書かれているように、本書は、「日米欧韓60社の大企業の失敗のケーススタディを6年間かけてフィールドワーク」した結果であり、当然読みごたえがあります。著者は一流で文章も読みやすい。まったく申し分ないのですが、せっかくここまでやったのなら、リサーチの結果得られた生のデータや関係者の声、分析の過程といったものをもっと詳しく示して欲しかったと思います。

とは言え、さすが10ヶ国語に翻訳されているベストセラー、中身は本当に興味深いです。

紹介されている失敗事例は、日本人にわかりやすいところから行くと、ブリヂストン、クエーカー・オーツ、アップル、バーニーズ、ゼネラルモーターズ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、雪印乳業、ソニー、コカ・コーラ、ダイムラークライスラー、モトローラ、ワールドコム、エンロン、日産自動車など。

かつての経営者や関係者へのインタビューを中心に、これらの失敗の原因と経営者が気をつけるべき点を指摘しています。

とは言え、決して60社の失敗事例を、だらだらと並べているわけではありません。きちんと、以下のような場面ごとに分けて、それぞれの事例を説明しています。

1.新規事業に乗り出す時
2.変化に対応すべくイノベーションを導入する時
3.M&Aを実施する時
4.競争相手に対抗する時

この本を読んでいると、やはり経営は最後は「人」なのだなあと思います。なぜなら、本書によると、彼らは無能だから失敗したのではなく、慢心や欲望、過去の経験の罠に陥ったから失敗したのです。

このような重要な指摘は、第9章で「失敗するトップの”七つの習慣”」としてまとめられています。そして最後、第11章には、若干食い足りない感はありますが、「名経営者は、いかに学ぶべきか」と称して、提言がまとめられています。

というわけで、本日の一冊は、

『名経営者が、なぜ失敗するのか?』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822244121/

です。450ページにおよぶ厚い本ですが、内容の充実度、訳文の読みやすさから、読むのは決して苦痛ではありません。久々に読みごたえのある1冊でした。

目次

第1章  ”名経営者”が、失敗する理由
第2章  新規事業の失敗
第3章 「イノベーション」と「変化」への無為無策
第4章  M&Aの矛盾
第5章  戦略のミス
第6章  経営者のゆがんだ現状認識
第7章  ドリーム・カンパニーの幻想
第8章  失われた〝シグナル〟
第9章  失敗するトップの〝七つの習慣〟
第10章 未来を予測せよ
第11章 名経営者は、いかに学ぶべきか?
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