2005年8月29日

『戦略の本質』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532165296

本日の一冊は、名著『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』の執筆陣が、大逆転をおさめた歴史上の戦いをもとに、逆転を可能にする戦略とリーダーシップについて論じた注目の一冊です。

※参考:『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122018331

毛沢東の反「包囲討伐」戦、バトル・オブ・ブリテン、朝鮮戦争、ベトナム戦争などを題材に、戦争を勝利に導いた歴史的リーダーたちが、何を戦いの原則としていたか、そして彼らの軍を逆転に導いた原因は何なのか、を淡々と分析しています。

「戦略の本質は彼我の相互作用のなかにある」と主張したのは、かの有名なクラウゼヴィッツですが、本書のなかで読者は、移り行く状況のなかでリーダーが何に着目し、どう戦略を立てるべきなのか、を学ぶことができるでしょう。

静的な原則論ではなく、まさに進行中の戦いのなかで生かせる、さまざまな知恵が盛り込まれている、興味深い論考です。

ちょっと記述は硬いですが、ぜひ読んでおきたい一冊です。
————————
■ 本日の赤ペンチェック
————————
戦争や戦略の本質は過去も現在も、そして未来も変わらない。ただし、戦争様相、戦略の方法や具体的応用は、それぞれの位相が変化すれば、常に変わる可能性がある

戦略の本質は彼我の相互作用のなかにある

◆毛沢東が実施し、兵士の使命感の昂揚に貢献した「三大民主」
1.幹部と兵士の間で作戦および訓練の策定と事後評価の討論の自由
2.幹部と兵士の相互批判の許容
3.兵士への給与と炊事管理の権限委譲

◆毛沢東の戦いの6条件
1.軍隊と人民とが一致しており、人民は積極的に紅軍を援助している
2.主動的に有利な作戦陣地を選ぶことができ、敵を罠にかけることができる
3.各個撃破によって優勢な兵力を集中できること
4.敵の弱点を攻撃できること
5.敵が力を消耗しつくすのを待って、攻撃することができること
6.敵の失策を作り出し、敵の隙に乗じ、攻撃を加えることができる

攻撃のための防御、前進のための後退、正面に向かうための側面への転向、直進のための迂回などは、いかなる事物の発展過程にも不可避

メタファーの活用は、組織における価値の共有と創造性開発のリーダーシップの要件

制約のある資源をいかに有効に集中的に活用し、優位性を確保するか。これが戦略の基本原則

物事を成すには、さまざまな抵抗や対立、摩擦を克服しなければならない

◆賢慮型リーダーシップが要請する5つの能力
1.他者とコンテクストを共有して共通感覚を醸成する能力
2.コンテクストの特質を察知する能力
3.コンテクストを言語・概念(普遍)で再構成する能力
4.概念を公共善に向かってあらゆる手段を巧みに使って実現する能力
5.賢慮を育成する能力
———————-
『戦略の本質』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532165296
———————-
■目次■
序章 なぜいま戦略なのか
第1章 戦略論の系譜
第2章 毛沢東の反「包囲討伐」戦――矛盾のマネジメント
第3章 バトル・オブ・ブリテン――守りの戦いを勝ち抜いたリーダーシップ
第4章 スターリングラードの戦い――敵の長所をいかに殺すか
第5章 朝鮮戦争――軍事合理性の追求と限界
第6章 第四次中東戦争――サダトの限定戦争戦略
第7章 ベトナム戦争――逆転をなしえなかった超大国
第8章 逆転を可能にした戦略
参考文献
━━━━━━━━━━━━━━━
■ご意見、お問い合わせは、
eliesbook@yahoo.co.jp
■マガジン登録、変更、解除
http://eliesbook.co.jp/bbm/
━━━━━━━━━━━━━━━

この書評に関連度が高い書評

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー