【遠藤周作の処世術】
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先日、長崎市にある「遠藤周作文学館」を訪れた際、気になるエッセイが売られていたので、買ってきました。
本日ご紹介する一冊は、『沈黙』『海と毒薬』などの作品で知られる小説家、遠藤周作さんが遺したエッセイ。
「PENTHOUSE」創刊一周年となった、1984年5月号から1987年12月号まで、44回にわたり連載されたエッセイをまとめたもので、やや内容は古いですが、ユーモアあふれる処世術が書かれています。
医療や心理学、ジェンダー、蓄財、マナーに関する部分は、さすがに今ではそぐわないところがありますが、第2の人生の生き方、好奇心を持って調べるコツ、クリエイティブに仕事するコツ、喧嘩の仕方などは勉強になりました。(逆に言うと、こういうモノは陳腐化しないんですね)
なかでも勉強になったのは、「名前を二つか三つ持とうよ」と見出しがついた部分。
ご存知の通り、著者は人生の後半、「狐狸庵」という名前を持ち、自分のもう一つの面を出して活動しましたが、人生100年時代には、こういう考え方も必要だと思います。
本文中には、セカンドネームの持ち方について、著者からのアドバイスもあるので、参考にするといいでしょう。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きます。
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「なぜ、そんな年よりじみた名をつけたの」「そのほうが、生きかたが楽ですからね」と答えると、三島氏は言下に、「僕はそんな年寄りじみた名前は嫌いだな」と言った。なるほど、そう言われればたしかに三島氏の三島由紀夫という名前(あれもペンネームである)は若々しい。年寄りじみていない。しかし若々しすぎて、もし氏が六〇歳になり七〇歳に達した時にはこの名から受けるイメージはそぐわなくなる、違和感がする。違和感どころか、時には滑稽感を与えるかもしれない。すばらしく敏感だった三島氏がこのことに気づかなかった筈はない
私がもし遠藤周作という名だけで人生を押し通していたならば、自分のなかにあるユーモアの面、くだけた面は随分と制約をうけただろう
毎日の生活や人生を自らの「好奇心」の欠如のためにツマらぬものにするな
ツマらぬもの、役にたたぬものは人々が見棄てているから、それを逆利用すると、かえって稀少価値がでるものだ
ゴルフなどやめろ、カラオケなどやめろ、テニスなどストップせよ──とまでは言わないが、もう一つ、君だけの、あなただけの──それによって君たちの人生が肥えるような楽しみと悦びとを探そうじゃないか
相手が得意としていることをあらかじめ知ってそれを話題にしてみろ
最高の情報収集とは自分の専門についての不断の勉強と、どんな人の話にも耳かたむけることだ
私は脂がのったところで仕事をやめることにしている。脂がのったところで仕事をやめておくと、次の日、脂がのったままでなめらかに筆がすべるからである
人から可笑しがられる部分をひとつ持て
「勝つ」「負ける」は単純に決めてはならない。戦闘に勝っても戦争に負ける場合があるからだ
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内容の8割はくだけた話ですが、残りの2割は実用的だったり、示唆に富んでいたり、教養あふれていたりして、ぐいぐい引き込まれてしまいます。
ぜひ読んでみてください。
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『周作塾 読んでもタメにならないエッセイ』
遠藤周作・著 講談社
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◆目次◆
※多過ぎるので省略します
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