2018年11月1日

『武器になる知的教養 西洋美術館賞』秋元雄史・著 vol.5147

【これでバッチリ】
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最近、ビジネスパーソン向けの教養本が花盛りですが、本書は、西洋美術の鑑賞法に関する、決定的一冊。

著者は、東京藝術大学大学美術館館長・教授の秋元雄史さんです。

もし読者のみなさんが、これからアート投資をするとしたら、その作品がこれまでの美術史と照らし合わせて、どんな新たな価値をもたらすことになるのか、という視点が不可欠。

その点本書は、これまでの美術史の流れをじつに簡潔にまとめており、かつイノベーションのポイントを技術的な面も踏まえて解説してくれます。

美術鑑賞する人の多くは、その作品あるいはアーティストが「有名だから」鑑賞するのだと思いますが、大事なことは、なぜその作品あるいは彼らが有名になったのか、という意味の部分。

本書は、その意味について素人にもわかりやすく、かつ技法については必要最低限に細かく解説しています。

また、その作品が生まれた社会的背景や、当時のアーティストの境遇などもきっちり書き込まれているため、理解がスムーズに進みます。

最近、アートに興味を持ち出していろんな本を読んでいますが、ビジネスパーソンは、本書と山本豊津さんの『アートは資本主義の行方を予言する』を読めばバッチリでしょう。

※参考:『アートは資本主義の行方を予言する』
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さっそく、ポイントをチェックして行きましょう。

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宗教画は識字率の低かった当時、文字の読めない人々にキリスト教の教えを伝えるため描かれたもの、いわば“見る聖書”だったのです。そのパトロンは当然、教会です

イタリア・フランス・スペインといったカトリック世界では「見る聖書」だった宗教美術を、より劇的に表現することで人々の心に訴えていこうとする気運が高まったのです。こうして、。ルネサンスに代わり、西洋美術の新たな潮流になるのがバロック美術です

当時ヨーロッパ最大の貿易都市となったアムステルダムを擁するオランダでは、富を持った裕福な市民階級の邸宅の壁を飾る肖像画や風景画が描かれるようになりました。中でも人気を呼んだのが、一般市民の日常を描いた風俗画です。寡作と謎めいた生い立ちで知られるフェルメールの作品は、いずれも静けさの中に佇む市民たちをとらえている点から、まさにこの時代の代表的な作家といえます

《牛乳を注ぐ女》の大きさは、四五・五×四一センチほどで、それほど大きなキャンバスに描かれた作品ではありません。フェルメールの絵は、それまでのヨーロッパ絵画のように教会や宮殿ではなく、市民の家に飾られることを想定して描かれたからです

色彩分割法とは、太陽の光を構成する七色のスペクトルを重視し、キャンバスにその七色を混ぜずに、並べて描いていく手法のことです。たとえば青色の点と黄色の点を並べてキャンバスに置いて、離れた場所から見た場合、私たちの網膜はそれを緑色と認識します。この現象を、絵画的手法として考え出したのです

一九世紀半ば、アメリカでチューブ入りの絵具が考案されたことで、屋外で絵筆を握れるようになったのです。屋外で光を描いた印象派も、チューブ入りの絵具が考案されていなければ現れなかったことでしょう

ゴッホがそれまでの印象派と最も異なるのは、色彩を光の表現だけでなく、感情を表現するものと考えたことです

マティスは明るい色と暗い色を同時に強調して使うことにより、夫人の印象やマティス自身が感じた夫人の内面を表現している

色彩の革命を起こしたマティスと形の革命を起こしたピカソは、ともにアフリカの原始美術、彫刻やマスクなどから多大な影響を受けていました

デュシャン「泉」
「ただ一つだけのハンドメイドにこそ価値があり、美こそ善である」
といった、美術界の既成概念を打ち破るためでした

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読んでみて思ったのは、「アートの歴史はイノベーションの歴史」だということ。

一世を風靡した芸術家たちの試みを見ていると、自分たちも世間をあっと言わせるイノベーションが起こせそうな気がしてきます。

それにしても、著者秋元さんの解説は簡潔かつ要点を踏まえていて、じつにわかりやすい。

ビジネスパーソンが教養として読むなら、断然この一冊です。

これを読まずして、フェルメール展に行くことなかれ。

もう行ってしまった人は、残念ですが、本書をお買い求めの上、再度ご来場ください(笑)。

「印象派は好きだけど、それ以外はよくわからない」という人も、本書を読めば、視野が大きく広がり、楽しみが増えることでしょう。

これは、オススメの一冊です。

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『武器になる知的教養 西洋美術館賞』秋元雄史・著 大和書房

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◆目次◆

第1章 知的教養人は必ず知っている西洋美術史
第2章 知的教養を育てる西洋美術の読み解き
    ルネサンスから印象派まで
第3章 知的教養を育てる西洋美術の読み解き
    フォーヴィスムからポップ・アートまで
第4章 西洋美術鑑賞を知的トレーニングにする作法

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