2018年2月28日

『運は人柄』鍋島雅治・著 vol.4970

【これは傑作。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4040821653

本日ご紹介する一冊は、『築地魚河岸三代目』『東京地検特捜部長・鬼島平八郎』などの原作を作った人気作家、鍋島雅治さんが「運」を語った、異色の新書。

高卒で彼女を追って大阪に行き、同じホテルでアルバイトをしたところ、こともあろうに彼女が入社3カ月でホテルの上司と電撃結婚。

茫然自失、どん底の状態からチャンスをつかみ、奇跡的に大学進学、漫画家への道が拓けたという運の良い著者が、自身の経験と成功した大御所漫画家のエピソードから、「運」「人柄」を論じる、じつに興味深い内容です。

本書には、著者の師であり、『子連れ狼』『御用牙』などのヒット作で知られる小池一夫氏や、『うる星やつら』『めぞん一刻』『らんま1/2』『犬夜叉』などで知られる高橋留美子氏とのエピソードが収められており、これがまた味わい深い。

キャラクターを考えるのが仕事である原作者ならではの人間洞察の視点、作品作りのノウハウも、本書の内容に厚みを加えています。

新書でこれほど読み応えのある内容ですから、つべこべ言わずに買え!と言いたいところですが、ぐっとこらえて、赤ペンチェック行きましょう。

———————————————–

見返りを考えてかけた恩というものは、受けた身からしたら少し複雑な気持ちになりますよね。ありがたいことはありがたいのだけど、どこか利用されているようでもあってなんだかいい気はしない。そんなことでは、「愛嬌」や「可愛げ」にはつながりにくいのです。となれば、やっぱり見返りは求めないほうがいい

結果は、一番には変わりないものの、大賞なしのまたしても準入選。小池先生のお帰りを待ってそのことを報告すると、先生は嘆息して「バカだなぁ編集者ってヤツらは、大学受験みたいに切り捨てるための賞じゃなく、才能を拾い上げるための賞じゃないか。すまないな、オレが出席していれば間違いなく大賞をやれたのにな」とおっしゃったのです。その言葉だけで感無量で、大賞を取ったよりもうれしく涙ぐんでいると、小池先生はわたしの肩に手をあて、こうも言われました。「だが鍋島、大賞は1回こっきりの100万円だ。だがお前は3回受賞して1回50万円。計150万円で大賞を上回る、いわば“賞金王”じゃないか。大賞は何人もいるが、賞金王はおまえただひとりだ。これは威張っていいぞ! 胸を張れ!」わたしは、涙が止まりませんでした。小池先生のこのときの言葉が、のちのわた
しの矜持である、人を言葉で励まして生きていこう、頑張っている人を応援していこう、という生き方の芯をつくった

小池先生は、最後にMさんに対して、こう言います。「おまえは真剣度が足りない。作家はそれぐらい、どんなことであってもいちいち深く考えるものなんだ。考えろ。もっと考えろ。感じてる場合じゃない。考えるんだ」

いろいろな人を幸せにしようということは、いろいろな人とかかわることでもある。“縁の引き出し”が多くなり、結果的にその後の好運やよい流れを引き込みやすいことにもつながる

目の前の損得などではなく、「好き」を判断基準にすることも、運と人柄をよくする方法のひとつかもしれません。それは継続のなによりの原動力になるからです

以前、高橋先生は、あるインタビューで「なぜ結婚を考えなかったのか」と問われ、こう答えていました。「だって、漫画を描いている時間が人生で一番楽しい時間で、その楽しい時間で自分の人生を埋め尽くしたんだから、わたしは幸せ者だったのです」

自分の目を覚まさせてくれたのは、高橋留美子先生でした。高橋先生はこう言います。「本当のプロは自分の作品に自信を持つものだし、読者はきっとそれを理解してくれると思っている」

「あれほどまでに勉強したのだから、うまくいかないはずがない」
「あれほどまでに練習したのだから、勝てないわけがない」
これは努力さえすれば手に入れられる自信です

そもそも人生なんてそんな楽なものじゃないと思っていて、「ならば大変なほうを選ぼうじゃないか」と自らそういう道を選んでいる

———————————————–

著名漫画家との感動のエピソードあり、読み応えある漫画論あり、著者の成長物語あり…。

ずるいぐらいに良い本です。

「軽い自己啓発書」を連想させる現在のタイトルからは、想像できないほど読み応えがあります。

猛烈に押し売りしたい一冊です。

———————————————–

『運は人柄』鍋島雅治・著 KADOKAWA

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4040821653/

<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B079N5MJKT/

<楽天ブックスで購入する>
http://bit.ly/2ozDnES

———————————————–

◆目次◆

はじめに
第1章 運は呼び込むもの
第2章 「運は人柄」と気づくまで
第3章 人柄を「上げる」メソッド
第4章 運のよい漫画家たち
第5章 漫画のコツは生きるコツ
おわりに

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー