2018年2月1日

『リンカーンのように立ち、チャーチルのように語れ』 ジェームズ・ヒュームズ・著 寺尾まち子・訳 vol.4943

【米歴代大統領のスピーチ戦略】
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先日、スピーチライターを主役にした小説、原田マハさんの『本日は、お日柄もよく』をご紹介しました。

※参考:『本日は、お日柄もよく』
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スピーチノウハウもきちんと盛り込まれた読み応えある読み物でしたが、本日は、さらに本格派のスピーチ本を紹介します。

本日ご紹介するのは、歴代アメリカ大統領4人のスピーチを指導した最強スピーチライター、ジェームズ・ヒュームズによるスピーチの古典『Speak Like Churchill, Stand Like Lincoln』の邦訳。

アイゼンハワー、ニクソン、フォード、レーガンのスピーチライターやフォーチュン500企業のCEOのスピーチアドバイスを務める著者が書いているということで、アメリカでは長年、リーダーたちに読み継がれてきている本格テキストです。

リーダーたちの歴史を変えたスピーチの実例と、そこで用いられている21のテクニックを解説しており、スピーチで飯を食っている土井も思わずうならされました。

間の取り方、始め方、差がつく引用テクニック、信頼を勝ち取るための数字のテクニック、うならせる例え話、流れを変える質問、万雷の拍手を呼ぶ締めくくりなど、最後まで一気に読みました。

さっそく、気になるポイントを見て行きましょう。

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初の民主的な選挙で選ばれたメキシコ大統領(初の独裁者ではない大統領)、ベニート・フアレスは、140センチに満たない身長で、不器量だった。(中略)フアレスはすぐに話し出さず、聴衆一人ひとりの顔をじっと見て、自分を見下している人々が目をあわせるように仕向けた。そうやって、ざわめきが静まるまで1分近く聴衆を見まわしながら、頭のなかで最初の言葉をくり返した

チャーチルはかつてこう言った。「礼儀正しい始まりは、愚かしい始まりである」。ありきたりな言葉で切りだせば好感は持たれるかもしれないが、ひどく退屈でつまらない印象を与えてしまう

1946年、老政治家バーナード・バルークは、国連原子力委員会でこう言った。「我々がここにいるのは、生きるか死ぬかを選択するためである」

アメリカ北西部の偉大なネイティブ・アメリカンの長であるシアトルは、1854年に白人の聴衆をまえにして、こんな際どい話から始めた。「貝殻が残る地面を、かつては波立つ海がおおっていたように、われわれの仲間が、この国をおおっていた時代がありました。いまはもう記憶の彼方、悲しい記憶の彼方です」

「わたしは王子ではなく、開拓者に見られたいのだ」
フランクリンはアメリカ製のブロード地の服を着て、かつらもかぶらなかった。上流階級の人々が少数派を好むことを見抜いていたからだ。彼は、哲学者ルソーの唱える“自然人”が大流行していた時代に、新世界の“自然人”を演じ、上流階級の人々に刺激を与えた

スーツには必ず自分のトレードマークを加えることも忘れてはいけない

アテナイの偉大な弁論家だったデモステネスは、優れた演説のためにすべき3つのことは何かと質問され、こう答えた。「行動、行動、
行動!」。つまり、第一に聴衆にどう行動させたいのかを考え、その考えに基づいて演説をせよと助言したのだ

25年後、今度はわたしが共和党の予備選挙でライバル候補にパワー・ブリーフをぶつけた。先に話したのは、現職議員だった相手候補。彼はわたしを“よそ者”呼ばわりし、とつぜん自分の選挙区に引っ越してきて、アパートメントを借りたと思ったら立候補を表明した。と非難した。そして15分の長口舌のあと、共和党婦人クラブの女性たちに向けてこう締めくくった。「なんの経験もない、この選挙区の土地さえ持っていない“よそ者”を、どうして信用できるでしょう?」わたしは立ち上がり、ポケットから46センチ四方の白い紙を取りだして慎重に広げた。「じつは、わたしも土地を持っているのです。これがワイルドウッド墓地の権利証です。現在4代にわたる家族がここに眠っており、いずれ神のご意思で5代目も眠ることになるでしょう」

対比は、フランクリンのお気に入りの手法だった。
・真実の半分はしばしば偉大な嘘である
・よい戦争も悪い平和もない
・敵に秘密を知られたくなければ、友には言うな
・きょうできることは明日に残すな

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素材となるスピーチが一流、解説する人間が当事者でかつ文章のプロ、となると、これが面白くないわけがありません。

これまで漫然と使っていたテクニックも見事に言語化されており、スピーチを上達させたい人はもちろん、指導する人にも使える一冊だと思いました。

読んだ人だけの特典として、著者おすすめの引用句などもまとめて紹介されています。

何度も読んで実践したい、スピーチノウハウの決定版です。

ぜひ読んでみてください。

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『リンカーンのように立ち、チャーチルのように語れ』
ジェームズ・ヒュームズ・著 寺尾まち子・訳

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◆目次◆

「クモ」が「ライオン」になる日
テクニック1 まずは「沈黙」
テクニック2 強烈な「第一声」
テクニック3 正しい「外見」
テクニック4 先に「結論」
テクニック5 思い切って「短く」
テクニック6 差がつく「引用」
テクニック7 信頼を勝ちとる「数字」
テクニック8 スパイスとしての「視覚資料」
テクニック9 本物の「ウィット」
テクニック10 うならせる「たとえ話」
テクニック11 魅せる「ジェスチャー」
テクニック12 失敗知らずの「原稿の読み方」
テクニック13 「詩」を語る
テクニック14 胸に刺さる「決め台詞」
テクニック15 流れを変える「質問」
テクニック16 絶妙な「強調」
テクニック17 威厳が増す「能動態」
テクニック18 「資金調達」のための語り
テクニック19 「スイッチ」を入れる
テクニック20 万雷の拍手を呼ぶ「締めくくり」
テクニック21 堂々とわが道を

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