【想いをつなぐ、売れるデザインとは】
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本日の一冊は、「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」の商品デザインを手掛け、「ニッカ・ピュアモルト」の商品開発にも携わっている、グラフィックデザイナーの佐藤卓さんによる、デザイン論。
われわれが日常接している大量生産品のデザインがいかにして生まれ、どのように人々の心をつかんでいるのか、具体例を示しながら解説されています。
本書によれば、パッケージデザインの判断指標は以下の3つ。
・「価値(バリュー)」を伝える
・「印象(インプレッション)」を現す
・「知覚(シズル感)」を誘う
では、それを具体的にどのように行っていくのか、そのアプローチ方法と目のつけどころ、考え方が興味を引く内容です。
たとえば「ロッテ クールミントガム」のデザインリニューアルで著者が着目したのは、天面と側面のデザインがほとんど同じくらい、視界に入ってくるということ。
従来のデザインは、両方からよく見えるように、同じデザインを天面と側面に施していたのですが、著者は「今までの二倍の広さでデザインを考えればいい」と捉え、側面に5体のペンギンを並べました。しかも右から2番目のペンギンにだけは、手を挙げさせて…。(この秘密は、本書でご確認ください)
このようなデザインの秘密が本書では書かれており、強烈なアハ体験が得られるという意味では、かつてベストセラーとなった『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』を髣髴させる内容です。
※参考:『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』
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さっそく、いくつか気になった部分をチェックしてみましょう。
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大量生産品のデザインはそれ単体としての「デザイン」の存在だけでは機能しない(評価し得ない)。販売チャネル、幾多の売り場を経由して、そこに陳列されてこそ機能する(評価される)ことになる
本当は、パッケージデザインの良し悪しだけで商品を売ることはできないのです。つまり商品にはもともと価値があって、その価値や魅力がきちんと表現されているデザインであれば、自ずと売れるはずです
一つ気がついたのは、クールミントガムの正面性についてです。従来のパッケージでは、天面と側面にほとんど同じ要素が入っていました。これは発売当初はパッケージされている枚数が少なかったため、商品の正面と言えるのは、ガムの幅にあたる天面だけだったことに由来しています(中略)パッケージをよくよく眺めていると、この天面と側面のデザインがほとんど同じくらい、視界に入ってくることに気づきました。つまりクールミントガムの正面は、天面と側面の二面、斜めから見た角度だったのです。このことに気がつくと、俄然自由になりました。今までの二倍の広さでデザインを考え
ればいいからです
今までのファンというのは、まさにメーカーにとっての財産です。そんなファンにどれくらいの変化までは許容してもらえるか。それと同時に、新しくなったことへの嬉しさや楽しさを感じてもらえるか。その許容値を探ることが、リニューアルにとっては大切なこと
キシリトールの特徴は、なんといっても「歯に良い」ということにあります。そこでこの時は、歯磨き粉や歯ブラシといった、デンタル用品のイメージからデザインを構成することをすぐに思いつきました。そこからは「デンタル」というイメージがガムという食品になじむような調整を行っていけばよいわけです。そしてシンボルマークになったのは奥歯を真上から見たところ
「そのまま」というキーワードが誕生したことによって、みんなが共有できる「軸」ができたのです。この時に身を以て体験したのは「言語が明快になるとデザインも定まる」ということです
細かいことですが、青に変更した際には、白い地色と青い色を敷いたその境界に細い線を入れました。この線を入れることで、丁寧につくられているという印象がグッと高まるのです。またこの細い線は、店頭に置かれた時に、遠くからは見えませんが、近づくと見えてくる。つまり、距離によって情報が変化するのです。それは、パッケージの正面、「おいしい牛乳」というロゴのベースに、白い牛乳が注がれているグラスの写真が敷かれているヴィジュアルも同じです。遠くからは単に白い地色に見えますが、近づけばグラスがあることがわかる
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「商品の魅力をどう伝えるか」はビジネスにとって一大事ですが、その際に大切となる考え方を、本書は教えてくれます。
即効性のあるノウハウが書かれているわけではありませんが、現場でマーケティングに取り組むすべての方に重要な気づきを与えてくれる内容だと思います。
ぜひ読んでみてください。
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『大量生産品のデザイン論』佐藤卓・著 PHP研究所
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◆目次◆
1.「大量生産品」をデザインするということ
2.アイデンティティを共に構築する…VI、CI
3.デザインとの出会い
4.電通で学んだこと
5.デザインの解剖
6.デザインの解剖から見えてきたもの
7.プロフェッショナルであるということ
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