【押井守監督の幸福論】
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本日の一冊は、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』や『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』などの作品で知られる、映画監督・演出家の押井守さんによる幸福論。
「幸福論」「仕事論」「ニセモノ論」「政治論」「人間論」「映画論」の計6つの章からなり、それぞれのテーマについて著者が持論を語る、じつに刺激的な読み物です。
条件を洗い出し、優先順位をつける、という考え方は、仕事でも幸福でも当てはまることで、誰にでもでき、かつ強力な方法だと思いました。
<偉大な人間は「あれも、これも」とは言わない。「あれか、これか」をちゃんと言えるのである>
まさにおっしゃる通りで、この代表例として大正期の偉大な映画監督・牧野省三氏の話が紹介されています。
<牧野省三は映画にとって重要な要素として、「1スジ、2ヌケ、3ドウサ」と言った。「スジ」とは脚本のこと、「ヌケ」とは撮影や現像技術、そして「ドウサ」とは演技を表している。牧野は「ホン(脚本)が良ければ、どんなやつでも良い演出家になれる」と言ったことがあるように、脚本を最重視していた(中略)そういう考えで仕事をすれば、牧野は脚本づくりに全力を投入するはずだ。そして、脚本さえしっかりしていれば、話の面白さだけでなく、現場の段取りや俳優たちの士気にも影響するだろう。つまり、脚本がすべての出来を決定するくらいの重要性があると牧野はふんだ>
正直、「仕事論」はちょっと古めかしい感じがしましたが、その他は概ね興味深く読ませていただきました。
「幸福論」「ニセモノ論」「政治論」「映画論」あたりがおすすめです。
さっそく、いくつか気になったポイントをチェックして行きましょう。
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僕が認知している世界が、本当にそのままに存在するのかどうかはわからないし、わかったところで他人と共有することはできない
ものごとを突き詰めて考えていくと、すべてのものが解体する。そして、意味が消えていく
人間は孤独のうちには絶対に幸福になれない。必ず幸福を確認する相手が必要になる。それが、僕がこれまで生きてきて得た結論だ
幸福には絶対の尺度がない
大事なことは自分を決め付けることなく、そのときそのときで今の自分がもっとも必要だと思われること、なすべきことをなすだけだ
人生において必要なことは、優先順位をつけることに、ほかならない。優先順位を考える前にやるべきことは、幸福なら幸福で、幸福になるための条件をいくつかの要素に分類することだ
「良い原作があって、良い脚本があって、良い監督がいて、良いキャスティングができて、良いスタッフがいて、良い宣伝ができたら、良い映画ができます」もしもあなたが映画監督で、スタッフに「良い映画を撮るための条件は?」と聞いて、そんな答えが返ってきたら、ためらわずにスタッフをクビにした方がよい。そんなことは、どんな馬鹿でも言える。なぜならそれは、当たり前のことだからだ。大事なのは、そのいくつかの要素のうち、自分は何が最も重要だと思うのか。どれを優先すべきと思っているのか、ということにほかならない
偉大な人間は「あれも、これも」とは言わない。「あれか、これか」をちゃんと言えるのである。これは、人生においても同じだ。幸福になるために、自分は何を選ぶのか。それができなければ、絶対に幸福にはなれない
自ら選び取った人生を送れたのなら、それが幸福ということだ
「自由」は人間が勝ち得た最大の美徳という言われ方がよくなされるが、「自由」そのものに絶対の価値があるわけではない。自由とは抽象的な概念ではなく、何かをなすための方法論的な価値でしかない
可能性をいつまでも留保するということは、いつまでも選択しないということであり、それは可能性がないということだ
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情報との付き合い方、家庭との付き合い方、仕事との付き合い方…。
巨匠がとらえる「幸福の真理」は、われわれ日本人の一般常識とは異なりますが、説得力があります。
幸福の要素を因数分解することや、仕事で成果を出すためにどの変数を重視するかという話、自由は手段にすぎないという話など、いろいろと勉強になりました。
週末の読書におすすめです。ぜひ読んでみてください。
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『ひとまず、信じない』押井守・著 中央公論新社
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◆目次◆
序論 虚構の中に真実を宿らせる
第1章 幸福論──幻想は人を不幸にする
第2章 仕事論──説得する努力を怠ってはいけない
第3章 ニセモノ論──つまり、初めからフェイクなのだ
第4章 政治論──覚悟を決めない政治家たち
第5章 人間論──人間以上に面白いものがあるはずがない
第6章 映画論──「良い夢を見た」でもいいじゃないか
あとがき 僕らには言葉が必要だ
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