【伝える内容に意志はあるか】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883354172
本日ご紹介する一冊は、広告の業界紙「アドバタイムズ」の連載91回分に新たに未掲載の9篇を加え、100篇にまとめたもの。
電通の営業企画局次長、コーポレートアイデンティティ室長を経て、電通総研常任監査役を務めた著者が選ぶ、『日本の歴史的広告 クリエイティブ100選』です。
「広告」の文字は「広」と「告」から成りますが、本書を読んでいて感じたのは、最近の広告は「広」ばかり意識していて「告」が乏しいんじゃないかということ。
もちろん、SNSが普及することによる炎上リスクや多様性への配慮があることはわかりますが、やはり、広告には「意志」が必要だと思うのです。
その点、本書に掲載された日本の歴史的広告は、いずれも「意志」がみなぎっていて、心を揺さぶります。
絵や言葉は若干古めかしいのですが、読み始めるとさほど気にならないばかりか、その時代のクリエイティブの斬新さ、メッセージの底にある意志の力に圧倒されます。
「真理は万人によって求められることを自ら欲し、芸術は万人によって愛されることを自ら望む」と謳い上げた「岩波文庫発刊」の広告、「魚には、いい水が必要だ。人には、いい夢が必要だ。TOAST!乾杯!!」と書かれたサントリーの広告、「女性よ、テレビを消しなさい」と訴えた角川書店の広告など、いずれも今では考えられないパワーにあふれており、読み応えがあります。
今でも応用できそうな広告のヒントもあります。
読者に伝書鳩の飛翔時間の予想をさせたラクトー(カルピス製造元)の「空中マラソン競争」、「エンゼルは…男の子? それとも女の子?」と題したクイズキャンペーンで438万通の応募を集めた森永製菓の広告、新館落成広告に用いた人月を記述して、その労力をアピールした三越呉服店の広告など、「これは使える!」と思ったアイデアがいくつかありました。
絵が紹介できないのが残念ですが、いくつか気になった言葉をピックアップしてみましょう。
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1913(大正2)年2月18日、星製薬の「求婚広告」は典型的なスタンツ広告(読者をアッと驚かす、トリッキーな広告)である。長谷川まつ子という17歳の和装の美人が結婚相手を求める体裁で、よく読んでゆくと「淋病新薬ホシノゴール及び梅毒新薬ホシサヨリン」の説明になってゆく。巧みな構成で読者は興味を抱かずにはいられない。学歴、年齢、収入、持参金など、具体的に結婚相手の条件が記されている。これは薬のターゲットでもあるのだろう
1918(大正7)年1月12日、森永ミルクキャラメルの広告は、この年の1月に引退した最強横綱へのオマージュだ。スペース中央に横綱太刀山の大きな手形が突き出すようにこちらに迫ってくる。突っ張りで一時代を築いたスピード溢れる相撲。拡げられた力強い指からパワーが発せられている。原寸大の手形に多くの読者が自分の手を重ね合わせ太刀山の手の大きさに驚いたことだろう。黒い掌に白抜きで、「天下無敵 実質の抜群! 名声の卓越! 森永ミルクキャラメル」と文字が入る。まさしく天下無敵の横綱の「お墨付き」だ
1928年(昭和3)年9月25日の「懸賞模擬総選挙」は、雑誌「平凡」創刊を強烈にアピールする大胆な広告だ。この年2月20日、普通選挙法による初の衆議院議員選挙が行われたが、有権者は満二十五歳以上の男性に限られ、治安維持法による思想弾圧の下での選挙だった。「国が興るも興らぬも一に適材が適処にあるか否かによる。普通は実施せられたが果して適当なる人物が議会に送られたか。帝都市会の醜悪、政局の不安定、政党の利己的離合、今や国民は新人物の出現による正しき政治の実現を望んで止まない。」コピーは実施された普通選挙を厳しく批判し、平凡社自ら模擬総選挙を行い、全国各地の理想的人物を選ぶことを呼び掛けている
1957(昭和32)年4月~6月に行われた森永製菓「森永のエンゼルは…男の子? それとも女の子?」クイズキャンペーンは、大きな話題になった。60日間に438万5000通という驚異的な応募数を記録。投票の多いほうを正解にするところがミソだが、キャラメル、チョコレートの外箱に答えを書いて送るため、販売に直結するキャンペーンだった
1959(昭和34)年4月27日、日本麦酒(現・サッポロホールディングス)「ミュンヘン サッポロ ミルウォーキー」は、世界に視座を置いた鮮やかな広告だ。「これが世界のビール三大名産地です」と一言でサッポロビールの優位性を表現する。広告のビジュアルは世界地図が大きくひろがり横に一本の太い線が引かれている。「いずれも北緯45度付近にあって、優秀なホップを栽培できる気候に恵まれているのが特長です」とコピーは記す。たしかにミュンヘン、サッポロ、ミルウォーキーがそこに位置している。サッポロが、ビールの本場として知られるミュンヘンと同緯度にあるのはクリエイティブの「発見」といえよう
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広告代理店に入ってコピーライターになる、という選択肢が就職活動時、なかったのが土井の後悔の一つですが、個人メディアが普及した現在、「誰もがコピーライター」という見方もできます。
自身の発言で社会を揺さぶるには、何が必要か。
本書をじっくり読めば、見えてくる気がします。
ぜひ読んでみてください。
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『日本の歴史的広告 クリエイティブ100選』
岡田芳郎・著 宣伝会議
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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883354172/
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http://bit.ly/2hEHU64
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◆目次◆
第一部 奇想天外、あっと驚く、人を惹きこむ広告
第二部 アイデアに満ち、企画性豊かな広告
第三部 新しい試み、実験、新機軸を知らせる広告
第四部 思わず笑ってしまうユーモラスな、面白く、考えさせる広告
第五部 魅力的で、好奇心をそそられる広告
第六部 文化性に溢れ、人間性豊かな広告
第七部 社会に訴える、問題提起する広告
第八部 タイムリーで、時代のニーズにこたえ心をうつ広告
第九部 物語性のある、感動的な広告
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