【未来を変える力と愛の技術】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862760813
本日の一冊は、オックスフォード大学経営大学院「科学・イノベーション・社会研究所」の特別研究員であり、さまざまな企業、政府の変革プロジェクトを支援してきた著者が、「変革の技術」を述べた一冊です。
「変革」というと、企業再生のプロが書いた組織改革の本を思い浮かべますが、利害関係の複雑さという点では、民間企業よりも政治の方がはるかに高度な問題解決を扱っています。
著者は、こうした政治の世界でも、グローバルな問題解決に従事してきた人物で、本書でも、グアテマラの内戦終結後の和平協定、南アフリカの人種差別問題など、さまざまな難問のエピソードが登場します。
著者が本書で提示するのは、決して小手先の問題解決ノウハウではなく、われわれ人間が陥りがちな感情の問題をどうクリアするか、という技術。
具体的には、人間の根本的な衝動である「力」(成長・自己実現へと駆り立てる力)と「愛」(分断したものを和合へと導く力)のバランスを取る方法を指南しています。
著者いわく、愛なき力は無謀であり、乱用されやすい。力なき愛は感傷的で実行力に乏しい。
力か愛かの対立ではなく、両方の意義を理解し、バランスよく行なうこと。それによってこそ、変革は成し遂げられる、と著者は説いています。
もし読者が自らの状況を変えたいなら、組織を変え、周囲を変え、人生を好転させたいなら、きっと本書はいい気づきを与えてくれると思います。
ぜひ読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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むずかしい社会問題に取り組むには、戦争でも平和でもない方法、集団による創造が必要だ
人はそれぞれ独立した存在であり、自分の行為が他人に影響を及ぼすことはない(他人の行為が自分に影響を及ぼすこともない)と考えるのはまちがいだ
力と愛はまさに補完的な関係にある。それぞれが持てる可能性をすべて発揮するには、相手が必要なのだ。力だけを重視した「テラ・ヌリウス」の世界観がまちがっているのと同様に、「愛こそはすべて」(オール・ユー・ニード・イズ・ラブ)の世界観もまちがっている
「現代の深刻な危機を生み出しているのは、まさにこの道徳なき力と力なき道徳の衝突なのです」(キング牧師)
他者を見ないこと、あるいは人として見ないことは、「させる力」の最たるものだ
だれかに「解決」されたい人はいない
人生の目的は、世界の一部となること
他者とつながっているという感覚──感謝、思いやり、愛──を押しのけたり、捨てたりすれば、野放しの力によって、悲しみや恐怖や苦痛が際限なく生み出されてしまう
「社会にとっては好都合だが、自分にとっては不都合な新聞記事を読んでも幸せでいられるようになったとき、自分が成熟しつつあると悟った」(哲学者ピエール・テイヤール・ド・シャルダン)
私が「愛」と呼んでいるのは、他者が完全になるのを、すなわち潜在能力を最大限に発揮するのを手助けする性質のことである
グアテマラ人の同僚の一人は、イエズス会の修道士からこう教えられたそうだ。才能があるということは長所ではない、責任なのだと。結局、才能は授かりものなのだから、本人の手柄ではない。私も自分の機織の才能を使う責任があると思った
「未来に向かうものごとの中で最も重要なのは、人間どうしの境界を壊すことである」(量子物理学者デヴィッド・ボーム)
力の無視は、世間知らずの単純さか、ずるさの証拠なのだ
二本の脚で歩く鍵は、片方の脚に集中しているときにも、もう片方を忘れてはいけないということだ
システム思考には「システムは、そのシステムが今生み出している結果を生み出すのに最適なように設計されている」という興味深い恒真命題(トートロジー)がある
マンデラは、「黒人 対 白人」から「南アフリカ国民が一丸となって自分たちを攻撃する者に対抗する」という構図に変えることに成功した
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『未来を変えるためにほんとうに必要なこと』英治出版 アダム・カヘン・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862760813
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◆目次◆
監訳者まえがき
はじめに
序 章 ほんとうに未来を変えるには
第一章 ものごとを動かす「力」の二面性
第二章 人と人をつなぐ「愛」の二面性
第三章 力と愛のジレンマ
第四章 転ぶ──自らの状況を問う
第五章 よろめく──両面を見る
第六章 歩く──未来を共創する
終 章 一歩を踏み出す
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