【さわや書店「文庫X」の仕掛け人が語る】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121505891
本日ご紹介する一冊は、出版業界で大きな話題となったさわや書店「文庫X」の仕掛け人が、そのマーケティングと狙いを明らかにした、注目の一冊です。
表紙・タイトルを隠して文庫を販売するという斬新な企画。
それが功を奏して、「文庫X」は何と4ヶ月半でさわや書店だけで5034冊、他の書店を含めると10万冊売れたといいます。
本書は、何がその原動力だったのか、この仕掛けの本当の意味は何だったのか。その真相がわかる内容です。
小手先の仕掛けだけで売れたんじゃない。さわや書店が積み上げてきた信頼があったから売れた、という部分にリアリティを感じました。
本好きならご存知かと思いますが、盛岡のさわや書店は、これまでにも絶版寸前だった『天国の本屋』を仕掛け映画化にまで押し上げたり、『思考の整理学』200万部達成の火付け役となったり、『永遠の0』を見出したり、出版業界で数々の伝説を作り上げてきた有名書店です。
一度訪れた人なら、そのパネルやPOPの数、内容に圧倒された経験があると思います。
本書では、そんなさわや書店のマネジメント、売れる秘密も垣間見ることができます。
さっそく、気になる内容をチェックして行きましょう。
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表紙を隠すのは何のための「手段」だったのか。それは、「先入観を取り除くこと」だ
「文庫X」は「モノ」を売ったのではなく、「体験」を売った
お客さんが何を求めているのかを知ること自体は、とても大事なことだ。しかし、求めているものを満たす意識ばかり持ちすぎると、大きなヒットは生まれにくくなってしまう
「『文庫X』を売る“共犯者”になる」という「体験」も与えることになった
「文庫X」はオリジナルカバーの上からビニール掛けをしているのだが、レジでそのビニールを剥がさないでほしい、という反応がかなりあった。これは、ビニールを剥がすという行為も「体験」の一部と捉えられていたという証左だろう
「長江の初陣だから、勝たせてやってほしい」
店長は、彼らにそう言ったのだという。この話を聞いて、僕は泣きそうになった
「文庫X」は「手に入らない」本だったが、それでも手に入れた人は12月9日までに10万人以上いたのだ。その10万人がみな、誰に強制されたわけでもないのに口を噤んで秘密を守る。そういう空気が、確実に醸成された。それは奇跡と言ってしまいたくなるぐらいの状況だった
「文庫X」を読んでくれた方は皆、一緒に「文庫X」を売ってくれた“共犯者”だ。“共犯者”の皆さんは、「『文庫X』のタイトルを明らかにしない」という行動で本の売り上げに貢献したのだ
「パネルは、同じ本でも、さわや書店で買えば別の本に感じられるように付けている」(田口店長)
現代では、「共感」によって様々なものが広がり、繋がりが生み出されていく。「文庫X」もまさに「共感」によって広まっていったものだ。そのこと自体を問題視しているつもりはない。しかし一方で、こういう弊害もあるのだ、と指摘したい。それは、「共感できないもの」を無意識のうちに排除してしまうということだ
結婚に限らず、「幸せ」を追求するすべての行動に対して同じこと
が言えるだろう。まずやってみる。やってみる中で、自分の輪郭が
はっきりしてくる
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年に200~300冊の本を読み、1冊読む度に3000字~5000字程度の感想文を書き続けてきたという著者の文章は、じつにスムーズで、読んでいてまったくストレスを感じさせませんでした。
マーケティングの話から、それを仕掛けた自分の半生、支えてくれたさわや書店の体制、そして今回のキャンペーンで伝えたかったこと…。
じつに自然な流れで今の時代に必要なメッセージを伝えており、一気に読み進めることができました。
しばらくご無沙汰していましたが、この読書を機に、またぴょんぴょん舎(盛岡の有名焼肉店)とさわや書店に行ってみたいと思います。
おすすめの一冊です。ぜひ読んでみてください。
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『書店員X「常識」に殺されない生き方』
長江貴士・著 中央公論新社
<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4121505891/
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http://bit.ly/2sGMlBh
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◆目次◆
第一章 「文庫X」とはなんだったのか?
第二章 「普通」からの逸脱
第三章 世の中を疑ってみる
第四章 「常識」や「先入観」を超えた先の「自由」
対 談 「文庫X開き」清水潔×長江貴士
付 録 文庫Xを作ったもの
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