2017年4月29日

『道を継ぐ』佐藤友美・著 vol.4665

【伝説の美容師・鈴木三枝子氏の教えとは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4990843649

休日のオフィスに出勤したら、いつものようにたくさん本が届いていました。

そのなかに見慣れない出版社の本があり、本の間に熱心な手書きの便箋がはさんでありました。

手紙をもらうこと自体はよくあることで、それだからといって気に留めることはありません。ただ、この手紙は他とはちょっと違っていました。

【一筆箋】
土井様 突然のお手紙失礼いたします。●●でごあいさつさせていただきました佐藤友美と申します。短い人生を、仕事と社員教育に注いで生きた女性の評伝を書かせていただきました。不躾ながらお送りさせて下さいませ。 佐藤友美

【便箋】
死後八年たつ今も、お墓にお参りする人々が絶えない、伝説の女性美容師の人生を描いた書籍をお送りさせていただきます。発売数日で、あらゆる世代からの感動の声が届き、この分野の書籍としては異例の即重版となった一冊です。「無理をしない生き方」が推される今だからこそ、信念を持って生きた人生が多くの方に届くのかもと感じました。ご掲載、ご検討いただけましたら、ありがたく存じます。『道を継ぐ』著者 佐藤友美

「伝説の女性美容師」の正体は、2000年代のカリスマ美容師ブームを牽引したMINXの「顔」鈴木三枝子さん。

美容業界で「鈴木さん」といえば、「鈴木三枝子さん」を指すほどの有名人であり、美容師の中には、「鈴木さんに憧れて美容師を目指した」という人も多いのだとか。

とはいえ、業界を離れれば無名の人物。かつ、出版社も神奈川県逗子市にある「アタシ社」という謎の出版社。しかも調べてみたら、この出版社にとって本書が初めて発行する書籍だとのこと。

そんな希少な本が届いたとあれば、読まないわけにはいきません。品定めするぐらいのつもりで手に取ったのですが、読み始めたら、一気に引き込まれてしまいました。

著者は、「はじめに」で、こんな疑問を投げかけています。

<どのように生きていけば、彼女のように、死んでも忘れられない人になるんだろう>

享年、四十九。
青山葬儀所で行われた、伝説の美容師・鈴木三枝子さんのお別れ会には、全国から3000人を超える人が集まったといいます。

なぜ、一介の美容師がそこまで人に愛されたのか。彼女は、弟子たちにどんな教えを遺したのか。

本書を読めば、その生き方の秘密がよくわかります。

さっそく、その秘密の一部を見て行きましょう。

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人は命が尽きたときに死ぬのではない。誰にも思い出してもらえなくなったときに、初めて死ぬのである

夫である高橋さんに、鈴木さんが最初に伝えたひと言は、「ごめんなさい」だったそうだ。「高橋さん、ごめんなさい。私、がんになっちゃった」自分の体の心配よりもまず、高橋さんを気遣った

「自分たちの仕事の価値はお客さまが決めてくれる。だから、お客さまに育ててもらえ」

自分が持てるエネルギーをひとつのものごとに打ち込む時期があった人は、人生に拠り所を持つことができるのではないか。そして、心血を注いでひとつの仕事にとことん向き合うことは、実は、命を削ることではなく、命を救うことなのではないか

お客さまが嬉しいと思うことなら、迷わずやりなさい。
自分が嬉しいと思うことは、よく考えてからやりなさい。

「お客さまにとっていつでも新鮮な存在でいられるかどうかは、自分にどれだけ気をかけているかで決まる。ヘアもメイクも、いつも新鮮でいなくてはいけない」

「服は自分のために着るな。お客さまのために着ろ」

「仕事は一発で決めろ」
これは、鈴木さんのお気に入りのフレーズだったが、一発で決める仕事を可能にしていたのは、完璧な段どりだった。たとえばある女優さんのカレンダー撮影では、12か月分のヘアスタイルをデッサンしてメイクルームに貼って準備をしていた。どのカットから撮影すれば無駄がないかが一目でわかるようになっていた

髪を切るときも、乾かすときも「毛先の先まで魂を込めろ」

「辛いことがあったときほど、仕事に出なさい。仕事がお前を救ってくれる」

「もし人間が平等であるとするならば、それは、不平等になる機会を平等に持っているだけだ」

「お前ができるかどうかは私が決めるんだよ。お前は、そんな小さな器のままでいいのか? それでいいと思ったら終わるぞ。自分で自分の器の大きさを決めるな」

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厳しいながらも、愛を持ってスタッフに接した鈴木三枝子さん。

その教えは実践的であり、かつ啓発的。

やはり一流の人は言葉を「持っている」のだと思いました。

残念ながら、生前お会いすることは叶いませんでしたが、本書が書かれたことで、その貴重な教えが世に遺りました。

貴重な人生訓、仕事哲学を、ぜひ読んでみてください。

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『道を継ぐ』佐藤友美・著 アタシ社

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◆目次◆

第1章 その瞬間まで、自分でいられるか
第2章 お客さまに育ててもらえ
第3章 神は先っぽに宿る
第4章 欲望と義務のシーソーゲーム
第5章 怒涛の叱られ自慢
第6章 カラスは白か黒か問題
第7章 愛と情熱のかめはめ波
第8章 愛だろ、愛
第9章 MINXを、頼む
第10章 伝承

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