【遺伝子を変える生き方とは?】
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遺伝子の解析がものすごい勢いで進み、医療や食事、果ては適職までが遺伝子解析でわかろうとしています。
本日の一冊は、そんな遺伝の最新科学「エピジェネティクス」を、遺伝学者で医師、かつノンフィクション作家の著者が解説した一冊。
ミステリー仕立てで解説した、知的刺激あふれる内容で、これなら素人でも遺伝の最先端がよくわかります。
興味深いのは、著者が本書で「フレキシブルな遺伝」という考え方を示している点。
つまり、われわれは遺伝に完全に振り回されるのではなく、行動や習慣によってそれに対して影響を与えることができる、ということです。
本書のなかで著者は、われわれが遺伝からどのような影響を受けるのか、それがいかに個々人で違うのか、そしてそれにどう対処することができるのか、さまざまな科学実験や実際の患者の例を元に明らかにしています。
蜂の幼虫にローヤルゼリーを与えまくれば女王蜂に変わるという話や、ほうれん草を食べる人の多くにエピジェネティックな変化が生じるという話を読んで、人生に希望を感じました。
また反対に、骨格が「使わなければ、だめになる」という話を読んで、運動の必要性も痛感しました。
遺伝子の話ではありますが、生活習慣や仕事、食習慣、結婚相手選び、子育てに至るまで、あらゆるヒントが得られる内容です。
さっそく、ポイントをチェックして行きましょう。
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たった今もーーデスクの前の椅子に座ってコーヒーをすすっていようが、自宅のリクライニングシートに沈みこんでいようが、ジムでサイクリングマシンを漕いでいようが、はたまた国際宇宙ステーションで地球周回軌道に乗っていようがーーあなたのDNAは常に改変されつづけている
「フレキシブルな遺伝」という考えが、あらゆる物事を変えつつある
ほとんどの人にとって果糖(フルクトース)は、果物に特徴的な甘さを与えている物質でしかない。だがあなたがジェフのように「遺伝性果糖不耐症(HFI)」という稀な遺伝子疾患、つまり遺伝病を抱えていたら、食物として摂取した果糖は、体内で完全には分解されない
もし両目がほとんどの人よりやや離れていたら、あなたは美男美女グループの一員なのだ。ジャッキー・ケネディ・オナシスやミシェル・ファイファーは、その隔離症気味の両目のおかげで、ふつうの人から抜きん出た存在になっている。人の顔立ちを見るとき、ふつうよりほんの少し離れた両目を目にすると、ぼくらは無意識のうちにメロメロになってしまうらしい。社会心理学者も、それを実証している
メンデルは科学に偉大な貢献をしたものの、重大なことを見過ごしてしまったからだ。それは、「表現度の差」である。(中略)ラルフの疾患は、表現度の差のために隠されたままになった。これこそが、同じ遺伝子が非常に異なる方法で人々の人生に影響を与えかねない理由だ。同じ遺伝子が、異なる人に対しても常に同じように作用するとは限らないのだ。たとえ、完全に同じDNAを持っている人であっても
放射線、有機溶剤、重金属、有害物質に身をさらすことなどは、遺伝子を傷つけて悪いほうに変えてしまう因子のほんの一例だ
遺伝的に言うと、女王蜂は特別でもなんでもないのだ。女王蜂とそのメスの働き蜂の両親は同じで、DNAもまったく変わらない。にもかかわらず、両者の行動学的、生理学的、そして解剖学的な違いには、はなはだしいものがある。ではなぜ違うのかというと、女王蜂になる幼虫のほうが、いいものを食べているからだ
いじめのトラウマは遺伝子をも傷つける
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著者は、エピローグでこう言っています。
<遺伝的強みとは、ただ自分より前の世代から渡された遺伝子を受け取ることによってしか得られないものではない。それは、自分が受け取ったもの、そして自分が与えるものを変えるチャンスからも生まれる。そして、そうする中で、ぼくらの人生の道のりはまったく別のものになりうるのだ>
「遺伝だからあきらめる」のではなく、受け取ったものを正しく理解して活かし、後世に伝えていく。
読めば、生きることに対して前向きになれる、そんな一冊です。
さすがノンフィクション作家。概念や知識は難解なのにミステリー仕立ての構成で、ワクワクしながら読むことができました。
ぜひ読んでみてください。
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『遺伝子は、変えられる。』シャロン・モアレム・著
中里京子・訳 ダイヤモンド社
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◆目次◆
プロローグ 人生も遺伝子も、あなたの手で変えられる
第1章 「顔」からゲノムを解き明かす
第2章 遺伝子が悲劇をもたらすとき
第3章 運命を変える「遺伝子スイッチ」
第4章 たった1個の書き間違い、ほんの少しの環境の違い
第5章 遺伝子の口に合わない食事
第6章 薬が効くかどうかも遺伝子次第
第7章 右か左か、それが大事だ
第8章 ぼくらはみんな「突然変異」を抱えてる
第9章 それでもゲノムをハックする?
第10章 染色体を見ても性別が決められない?
第11章 遺伝子とともに生きる
エピローグ 運命を握るのは
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