2024年5月29日

『ザ・スタートアップ ネット起業!あのバカにやらせてみよう』岡本呻也・著 vol.6487

【名著復刊】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478119813

本日ご紹介する一冊は、ネット起業が最も熱かった2000年、起業家のバイブルとして話題となった名著『ネット起業! あのバカにやらせてみよう』の待望の復刊。

昔のバージョンは、文藝春秋から出ていて、そこには「磐田鉄五郎」という、水島新司の野球漫画を彷彿とさせるペンネームの書評が乗っているのですが、これはじつは、新聞社で懲戒免職となり、転職先のアマゾンでも同様のことをやらかしてクビになった、某人物の原稿。

まあそれぐらい、ネット草創期には、ならず者や落ちこぼれ、天才が入り混じり、活況を呈していたわけですが、本書は、その時代特有の「熱狂」を映し出し、大好評を博した一冊です。

現在、スタートアップに関わっている方の多くも、本書に触発され、起業を志した方がほとんどではないでしょうか。

そんな「伝説の一冊」が、復刊するだけでもニュースなのですが、さすがは伝説の「バカ本」。

ただ前回の原稿をそのまま載せているのではなく、前回構成上やむなくカットしたビズシーク時代の小澤隆生氏(後のヤフー社長)を描いた”幻の原稿”、さらに当事者が当時を振り返るインタビューも収録されています。(しかも、ライターが井上理氏、岩本有平氏、「復刊に寄せて」がANOBAKAの長野泰和氏という贅沢なラインナップです)

名立たる起業家、クリエイターが参加したいと思わせるのも、さすがは伝説の「バカ本」。

改めて読んでみましたが、やはり面白いですね。

時代背景がわからない若い方にとっては、やや理解が難しいところもあるかもしれませんが、ネット草創期の「熱」を見事描き切った、起業ルポルタージュの名作だと思います。

忖度(そんたく)を是とする日本社会において、ここまで生きている起業家の資質・人間性を否定できるものかと、今となっては驚くばかりです。

これから起業する方、現役起業家の方にとっては、起業そのものの面白さ、そして難しさを実感する内容だと思います。

起業家たちの着眼点とその検証、事業につきもののタイミングや運不運、それにもめげずに挑戦を続ける起業家たちの姿勢に、ぐいぐい引き込まれてしまう、魅力的な作品です。

最近出たビジネスノンフィクション系では、この本と『ユニクロ』がトップ2決定ですね。

『ユニクロ』
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4296001868

さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。

—————————-

僕は仕事柄、これまでにいろんな起業家たちの姿を見てきた。その中で学んだのは、最終的に成功の鍵を握るのは、事業の優位性よりも、熱意の方が圧倒的に大切だということであった(ANOBAKA 長野泰和氏)

人に青春時代というものがあるように、産業や業界にも青春時代がある(真田哲弥氏)

もしハイパーネットの資金が続いて、日本人の使うパソコンのほとんどにハイパーネットのブラウザーソフトが組み込まれるようになっていたら、板倉は孫正義と並ぶネット界の帝王になっていたかもしれない

経営者がよく陥るワナは、カネが入って来ないと”カネはないか”と探し回るし、増資で簡単にカネが入ってくるとわかると、それに振り回されてますます事業に専念しなくなる。みんな同じ思いをしてますよ。でもね、本当に大事なのは事業をどうやってつくっていくかということです(中略)板倉君を見ていると、途中からは金繰りと資金調達ですべての才能を潰してしまったように思いますね(住友銀行 國重惇史氏)

失敗する可能性を理解した上で、本人も利害関係者も集まっているなら、何度だって挑戦をしていい。僕はそれを伝える生き証人でいたいと思っています(板倉雄一郎氏)

理想の会社なんてない。だから自分で起業して、熱意の持てる仕事を楽しくやるしかない(西川潔氏)

”起業”という言葉には、”自分の人生の中で本当にやりたいことは一体何なのか”ということを考えさせてくれるパワーがあります。僕は、周りにいる学生たちの就職一辺倒の意識を解放したかったんです(宮城治男氏)

帰りの車まで同道したビットバレー事務局の宮城に石原は、「こういうことをやっていると、周りからいろいろ批判されるだろう。風当たりも強くなるだろうし、こんなのはファッションにすぎんと言われるかもしれない。でも気にするな。ファッションの中から一握りのジーニアス(天才)が生まれるんだ。この中から本物が出てくるんだ」と言い残して車中の人となった(石原=石原慎太郎氏)

ハイパーネットが経営の中で一番苦しんだのはパソコンの普及率でした。当時、ハイパーシステムのユーザー数は約三〇万人。当時のインターネット接続事業者としては最大級の数字でした。ただ広告ビジネスとして考えると、三〇万人はまだ心許ない。パソコンがなかなか普及しないので、広告収入も十分確保できない。どうすればいいのか……。そう悩んでいた時に真理さんの言葉を聞いて、「携帯電話がインターネットに繋がるならいける」と確信しました

—————————-

起業家本人へのインタビューのみならず、周囲の方への綿密なインタビューを経て作られた労作。

著者の岡本呻也氏はもうこの世にいませんが、これほどまで熱意を注いで作ることができたのは、おそらく著者本人が、純粋に「知りたかった」からなのではないかと推察します。

魅力的な人物、魅力的なエピソード、そして魅力的な文章。

間違いなく、ネット草創期のビジネス書の殿堂入りを果たす作品の一つだと思います。

ぜひ、読んでみてください。

———————————————–

『ザ・スタートアップ ネット起業!あのバカにやらせてみよう』岡本呻也・著 ダイヤモンド社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478119813

<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0CVLBX8XB

———————————————–
◆目次◆

復刊に寄せて
プロローグ
Chapter1 原点がダイヤルQ2にあり
Chapter2 ビル・ゲイツに睨まれた男
Chapter3 ゴールドラッシュの予感
Chapter4 誕生 ビットバレー!
Chapter5 敗者復活戦としてのiモード
Chapter6 もう一人の”あのバカ”
あとがき サラリーマンのみなさんへ
データ出所・参考文献
取材協力者

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー