【これはユニーク。】
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本日ご紹介する一冊は、元ギリシャ財務大臣にして、ベストセラー『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』の著者、ヤニス・バルファキス氏による注目の新刊。
※参考:『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478105510
今回は、資本主義なきあとの世界を構想するという、異色の経済SF小説で、経済とギリシャに興味がないと楽しめないのでは? と思わせるディープな内容です(笑)。
編集担当から、「ギリシャ通の土井さんならこの面白さ、わかってくださるかと…」とメッセージいただきましたが、確かにその通りでした。
もちろん、資本主義がここまで生き残ってきたのにもそれなりの合理性がありますから、著者が提案する新しい社会システムが機能するかというと、そんなに簡単ではないと思いますが、一国の経済に深く関わってきた著者の思考実験だけに、一読する価値はあると思います。
本書の登場人物は、語り部であるヤンゴ・ヴァロ(=私)と、クレタ島生まれの左派の天才エンジニアであるコスタ、マルクス主義者のアイリス、リバタリアンの経済学者イヴァと、その息子トーマス。
天才エンジニアのコスタが作り出したマシンによって、彼らは違う経済システムのなかで暮らす、自分の分身と対話することになります。
果たして著者が考える、新しい経済システムとは? そこで人々はどんな暮らしをしているのか?
ところどころに、新しい経済システムを考えるのに役立つ政治・経済思想や理論が登場し、教養書としても楽しめます。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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「プロレタリアであるとは実際、どういう意味か」<私>が答える間もなくコスタが続けた。「ああ、こういうことだ。僕の苦い経験を話そう。それは、君が生産プロセスの歯車の歯のひとつで、そのプロセスは君がなにをしてなにを考えたか、その上に成り立っているのにもかかわらず、君がまさにその商品でしかないことだ。自主の終わりだよ。あらゆる経験価値から交換価値への転移だ。人間の自主性の最終的な敗北だよ」
少しでもチャンスがあると見れば、権力者層はそれらのハイテク武器を駆使して、私たちに総力戦を仕掛けてきます。防御の可能性を少しでも高めたいのなら、それらのハイテクを彼らよりも先に装備しなければなりません
自分の望みを叶えるために指輪の力を使う者は誰でも、みずからの欲望の奴隷である。途方もない指輪の力を使わない能力は、道徳だけでなくその人の幸福をも左右する
未来は愚か者の賭け。そして最大級の愚か者は、私たちの未来に賭けているテクノストラクチャーを支援して、けしかけてるヤツらよ
その時だ。怒りに燃える、たいてい腹を空かせた抗議デモ参加者がブエノスアイレスやアテネの通りを埋め尽くすのは。歴史は同じシナリオを幾度となく繰り返してきた。貿易不均衡に端を発する定期的な景気後退が、赤字国の民主主義を毒し、黒字国において赤字国の国民に対する軽蔑の念を煽り、それが今度は、赤字国の国民のあいだに外国人嫌悪を誘発する。簡単に言えば、長引く貿易赤字が、そしてその鏡像としての貿易黒字がハッピーエンドに終わることはない
専制的な権力についての真実は、専制君主の武器や銀行口座やコンピュータサーバーのなかにはない。それは、専制君主が支配する者たちの頭のなかにある。つまり、おおぜいの者が自分たちは無力だと信じる限り、無力でしかない
偉大な芸術が、芸術家の欲望の計算によって生まれることはない。同じように、妙なる音楽や優れた数学の証明は、それ自体のために生まれるのであって、音楽家や数学者の自己の利益のために生まれるのではない。自由は理性的な自制の上にのみ存在する
民主化された市場はいまなお、取引の見返りの精神を優先し、それが善の至高性を傷つけ、結局は、私たちの根本的な幸せを揺るがしている
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われわれの社会がどうやって進歩してきたのか、どこに欠陥があるのか、これからどうしていくべきなのか、考えさせられる一冊です。
ビッグテックの問題点や、来たるべき管理社会のリスクについても書かれており、これからの社会システムを考える上で、参考になる内容だと思います。
ぜひ、読んでみてください。
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『クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界』
ヤニス・バルファキス・著 江口泰子・訳 講談社
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◆目次◆
第1章 現代性に敗北する
第2章 パラレル世界との遭遇
第3章 コーポ・サンディカリズム
第4章 資本主義が死に絶えたそのあとの世界
第5章 審判が始まる
第6章 資本主義のない市場
第7章 天国でトラブル発生
第8章 再びの審判
第9章 脱出
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