2018年11月7日

『チャイナ・トリックス』高橋五郎・著 vol.5151

【アメリカを脅かす経済大国・中国のしくみ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4781651046

昨日、中国・深センから帰ってきました。

今回の訪問で、やっとなぜ中国が成長し続けているのか、その本質が理解できました。

とはいえ、見ただけではわからないことがあるのも事実。帰り道の飛行機で、旅の直前にたまたま本棚から持ってきた本が、その深層をじつによく説明していたので、ご紹介します。

本日ご紹介する一冊は、中国研究歴45年、愛知大学現代中国学部教授の高橋五郎さんが、中国経済が伸び続ける「トリック」を、さまざまなデータから導き出した一冊。

統計だけで語る中国悲観論がなぜ間違いなのか、中国経済の本当の強さはどこにあるのか、その本質がわかる内容です。

アリババ、テンセントに勝つには、ただ良いプロダクト・サービスを作ってもダメだということが、本書を読めばよくわかります。

一方でなぜ日本が中国のようにイノベーションを起こせないのか、その理由もよく考察されており、政策担当者、経営者、必読の内容です。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

———————————————–

もし物価上昇率が一・二%ではなく、実態に近い三%だったとすると、実質GDPは公表の数字よりも一・八%分少ない七二兆一八〇三億元(約一二二七兆円)に減るはずだ

実は、中国の庶民や農民にとって、これまで銀行とは、預金するだけのところで、どんなに重大な理由があろうとも、お金を貸してくれるところではなかった。ネット金融の爆発的な普及と発展には、そんな背景もあった

中国では、人びとが求めあい、満足し、社会道徳に反しないかぎり、新しい革新的ビジネスの登場としてもてはやされる

第三者決済では、日本でも使えるアリババ系の「支付宝」(支付とは、支払うという意味)やテンセント系の「微身支付」などが有名で、前述したように、これらは銀行顔負けの預金機能を持っている。実際には預けていた資金を運用することで高い預金金利を得られる高金利商品で、中でもアリババ系の「余額宝」、テンセント系の「理財通」が二大サービスサイトだ。この預金サービスは、日本人にもなじみのある銀行の総合口座に似ているが、一週間程度の運用をすると、預金金利が年率換算で四%以上にもなる

中国の場合、最初にあるはずの売買交渉がない。価格交渉もない。なぜかというと、制度上、農家個人は農地の所有者ではないからだ

農民から、ほぼただで取り上げた農地を、住宅を建設するための用地目的で開発業者に売った県政府は、多額の売却利得をふところに収める

中国の戸籍制度は日本などとは異なり、農村戸籍と都市戸籍とに分かれている。農林漁業者は農村戸籍に、それ以外は都市戸籍に属する

可処分所得が最も高い上海市と最も低い甘粛省との差は三・七対一もある

新幹線建設の速さは、目を疑うほどだった。その総距離は日本の数十倍。しかも、スピードが常時、時速三〇〇キロ以上と速い。日本の新幹線は蛇行するように走るが、中国の新幹線は大地をほぼまっすぐに走るからだ。土地が公有なので、直線の線路のための用地取得がたやすくできる

中国の労働分配率の高さは、社会主義の建て前が作り出すトリックだ。もしほかの国のように、名実ともに、労働者の所得を総国民所得で割った本当の労働分配率を求めると、二〇%に満たないのではないか

———————————————–

本書を読めば、中国経済が農民たちの犠牲のもとに成り立っていることや、非常に危険なバランスの上に成り立っていることがよくわかります。

果たしていつまでこの強さが続くのか、神のみぞ知る世界ですが、本書をあらかじめ読んでおけば、ショックにもすぐ対処できるでしょう。

経済大国、中国の強さも弱さも、一読すればすぐにわかる内容。

これはぜひ、読んでおいてください。

———————————————–

『チャイナ・トリックス』高橋五郎・著 イースト・プレス

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4781651046/

<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07GXMNTP4/

———————————————–

◆目次◆

中国のGDPに隠されたトリック
一〇キログラムの金貨に隠されたトリック
ネット預金の時差金利トリック
まさかの領収書の売買市場のトリック
ネット・ショッピング高利益のトリック
住宅過剰下の価格高騰のトリック
土地価格市場のトリック
中国の失業者数のトリック
中国の農村国家と都市国家のトリック
成長率ダウン下でも伸びる豊かさのトリック
加工食品、健康そっちのけのトリック
異常に膨れる投資のトリック
中国の異星人農業のトリック
高労働分配率のトリック
銀行不良債権のトリック
世界一の外食産業を生み出す「炊き増え」のトリック
増える財政赤字のトリック
キャッシュ・レスと人民元政策のトリック
中国の減価償却制度のトリック
庶民の味方の高利貸しトリック

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー