2018年1月2日

『アマゾンが描く2022年の世界』田中道昭・著 vol.4913

【アマゾンの未来戦略から、5年後を読み解く】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569837336

年初に選ぶ本には、必ず未来予測本を入れる、というのがBBMの定番ですが、今回はあえてシンクタンク本や未来予測ムックではなく、ビジネススクールの教授が書いた「アマゾン本」を採用。

というのは、今後のビジネス環境を論じる上で、アメリカのIT4強「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の動向を知ることは、最重要と思うからです。

本日ご紹介する一冊『アマゾンが描く2022年の世界』は、立教大学ビジネススクールで教鞭をとり、上場企業取締役、経営コンサルタントの顔も持つ、田中道昭さんによるアマゾン考。

グーグル、アップル、アリババとの戦略の対比もあり、じつに読み応えのある内容に仕上がっています。

アマゾンが音声アシスタント端末「アマゾン・エコー」や音声認識技術「アレクサ」、無人コンビニ「アマゾン・ゴー」、「AWS」で最終的に狙うのは何なのか、未来のビジネス環境はどうなるのか、気になる話が本書一冊で一気に解明します。

アマゾンが手掛ける顧客への利便性の向上は、同時に、同業他社にとっての脅威でもある、というのはこれまで通りですが、本書が描く未来は、さらに強烈。

<ビッグデータ×AIは「マスカスタマイゼーション」に向かう>を読めば、小売はもちろん、ファッションブランド、メーカーも落ち着いてはいられないはずです。

ジェフ・ベゾスが描くアマゾンのグランドデザインとは一体?

さっそく、気になるポイントを見て行きましょう。

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「長期におけるフリーキャッシュフローの極大化」が目標(ベゾス)

ホールフーズの買収を契機に顧客の位置情報も取得できるような新たなアプリも導入してくるのではないか

次世代のスマートホームはアマゾン・エコーを起点に構築されていくことになるでしょう

実は動画の視聴データもアマゾンにとっては「ビッグデータ×AI」の対象。プライム・ビデオもまたビッグデータの集積装置なのです

考えずにいられないのは、「アマゾンがユニクロの脅威になる」という未来です。アマゾンがプライベートブランドでファッションに乗り出すにはベーシック・カジュアルは最適な分野

米国の事例でも、アマゾン・エコーは台所関連情報や買い物関連情報には強い一方で、ビジネス上のスケジュール管理等の用途では機械学習が遅れているとの指摘もなされています

ECの王者アマゾンが、ネット上のエブリシング・カンパニーを経て、リアル店舗展開から小売り・流通の王者というポジションを狙うばかりではなく、メーカーとしてのアマゾンという新たな顔を持つ。そんな未来がすぐすこまでやってきています

「ユーザーの位置×行動範囲×時間のデータ」が揃うと、より正確なその人のプロファイリングが可能になる

「自分はアマゾンという大きな宝くじを当てた。その資金を宇宙事業につぎ込んでいる。そのためにアマゾンをやっているといってもいいくらいだ」(ジェフ・ベゾス)

「利益率を低くする」マネジメントもアマゾン急成長の秘訣です。利益率の低さは顧客還元率が高い証拠、低価格かつ利便性が高いサービスは多くの顧客を集める一方で、利益率が低いために競合が参入しにくい、という構造があります

日米欧の金融機関当事者は認めたがりませんが、専門家筋によれば、フィンテック最先進国は中国であり、その最大のプレイヤーがアリババであるというのはすでに常識です

「5年以内に中国の国内はどこでも24時間以内、世界中どこでも72時間以内に配達できる」物流ネットワークを構築すると公言し、そのために菜鳥は、日本では日本通運と、米国では郵政公社と組むなど、国外の事業者との連携を着々と進めています

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土井もかつてアマゾンにいた人間ですが、本書の分析はじつに鋭く、未来のアマゾンの姿をよく表現していると思います。

同時に、グーグルやアリババ、LINEなどのプレイヤーの優位性についても触れられており(グーグルは機械学習、アリババはフィンテック、LINEはコミュニケーション)、現時点でもっとも冷静かつ正確にアマゾンを分析した本といっていいと思います。

未来を読む方法はさまざまですが、未来を創ろうとしている人間の頭の中を探る、というのも有効な手だと思います。

ぜひ読んでみてください。

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『アマゾンが描く2022年の世界』田中道昭・著 PHP研究所

<Amazon.co.jpで購入する>
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◆目次◆

序 章 なぜ今、アマゾンに注目が集まっているのか
    ──日本・米国・世界で起きていること
第1章 アマゾンの大戦略を5ファクターメソッドで読み解く
第2章 なぜ、アマゾンは「現実世界」に参入するのか
第3章 アマゾンの収益源はもはや「小売り」ではない
    ──ビッグデータ時代の覇者・ベゾスの野望
第4章 ジェフ・ベゾスの宇宙戦略
第5章 アマゾン、驚異のリーダーシップ&マネジメント
第6章 アジアの王者「アリババの大戦略」と比較する
第7章 ベゾスは真の顧客第一主義者か、それとも利己主義者か
    ──アマゾンの攻略法を考える
おわりに──これから日本、米国、そして世界で起きること

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