【西郷隆盛の言葉】
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本日の一冊は、2018年のNHK大河ドラマが決まっている、西郷隆盛の人生と遺訓をまとめた、興味深い一冊。(NHK大河ドラマのタイトルは「西郷(せご)どん」です)
著者は、明治大学文学部教授で、ベストセラー作家の齋藤孝さんです。
まず、西郷隆盛がどんな人だったのかを振り返るために、本書の「はじめに」を引用してみましょう。
<藩の罪人として島流しにあったかと思えば、赦されてすぐに幕府軍の参謀になり、その後は一転、倒幕軍の実質的な最高責任者として幕府を倒します。維新後は参議となり、大久保利通らが洋行している間に事実上、日本の指導者となりますが、彼らが帰ってきて「征韓論争」に敗れると、さっさと故郷に帰国。日がな一日、猟をしては温泉につかるという、カントリーライフを送ります。この間、わずか10年ちょっとの話です。これほど短期間で、生きる環境が目まぐるしく変わった人物も少ないのではないでしょうか>
本書では、そんな西郷隆盛がどんな人物だったのか、なぜ人々に支持されたのか、そんな西郷隆盛を支えたのはどんな思想だったのか、これらを明らかにして行きます。
ただの名言の羅列に終止するのではなく、西郷隆盛の一生と、各フェーズに合った名言が適宜選ばれており、読者は自分を西郷隆盛の立場に置きながら、各名言を実感を持って味わうことができます。
さっそく、その名言をご紹介しましょう。
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「知の人は惑わず、仁の人は憂えず、勇の人は恐れず」
いまでいう小学校高学年の頃、藩校「造士館」からの帰り道に、以前にケンカでやっつけた相手から刀で斬りつけられるという事件に遭います。西郷は相手を投げ飛ばしてピンチを切り抜けましたが、刀傷のため、その後3日間も高熱に浮かされてしまいました。幸い一命は取り留めたものの、右腕に受けた傷は神経にまで達していたため、以降は刀も満足に振れなくなってしまったのです。強い武士に憧れて修行に励んできた若者にはあまりにもツラい運命ですが、その悔しさをバネにして、西郷は学問の道に精進しようと心に決めました
上司となった迫田は非常に気骨ある武士で、後年、年貢の減額を一切認めないという藩庁の通達に激怒し、「虫よ虫よ 五ふし草の根を絶つな 絶たば己も共に枯れなん(藩庁の役人よ、重い年貢に苦しむ農民をさらに苦しめて根絶やしにしてしまうと、いずれは自分たちも絶えてしまうぞ)」という面白い比喩を使った歌を残し、辞職したといわれています。常に農民に寄り添い、いつくしむ迫田の姿勢に、西郷も深く感銘を受けたはずです
斉彬は西郷を常に庭に待機させ、国内外の情勢を教えたり、あるいは諸国の志士たちと連絡を取らせたりしました。水戸藩の藤田東湖や戸田蓬軒、福井藩の橋本左内といった、天下に名を馳せていた人物たちと交流をもつうちに、西郷の名も諸藩士の間で徐々に知られていくことになります
<死の妙所を得て天に飛揚致し>
「人には死ぬ意義のあるものが存在する」ということを、西郷は「死の妙所」と表現しています。自分を愛しすぎて命を惜しむようでは大きなことは成せないが、命にこだわらなければ人は強くなれる。若き西郷の覚悟を見ることができる言葉です。「人は何のために死ぬのか」ということは、「人は何のために生きるのか」につながります。生を輝かせるためには何をすべきなのかということを、私たちに問いかけているようです
<万民の疾苦は自分の疾苦にいたし、万民の歓楽は自分の歓楽といたし、日々天意を欺かず>
<夢幻の利名なんぞ争うに足らん>
名声などはしょせん夢幻みたいなものだから、わざわざ追うほどのものでもない
<命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕末に困るもの也>
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複雑に既得権が絡み、どうにも動かせない状況で、未来を創るには、「無私」の人間が必要になります。
そんな時代だからこそ、西郷隆盛の思想に触れたい。
地味な本ですが、これはぜひ、読んでいただきたい一冊です。
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『西郷どんの言葉』齋藤孝・著 ビジネス社
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◆目次◆
第1章 若き日の情熱ほとばしる言葉
第2章 理想の現実のギャップに悩める言葉
第3章 リーダーとして才気あふれる言葉
第4章 気合、失意、そして悟りの言葉
第5章 人生50年、「智仁勇」の集大成となる言葉
第6章 現代人の心に深くしみこむ「遺訓」
第7章 有名人の通信簿~西郷どん、一言でいうとこんな人~
第8章 齋藤流、西郷どんの読み解き方
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