2017年9月20日

『コレクションと資本主義』水野和夫、山本豊津・著 vol.4809

【迫力の対談】
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今年、最もインパクトがあった書籍の一つに、『アートは資本主義の行方を予言する』があります。

※参考:『アートは資本主義の行方を予言する』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569826172/

<有用性が低いもの、「使用価値」が低いものほど価値は転換し飛躍する。その飛躍によって「交換価値」がどんどん上がっていく>

東京画廊・山本豊津さんが書いたこの本は、まさに、「衝撃的」のひと言でしたが、本日ご紹介する一冊は、この本に感銘を受けたというエコノミストの水野和夫さんが、山本豊津さんとの対談形式で「資本主義の終焉」と、「資本主義の先」を論じた一冊。

資本主義の原点とも言える「蒐集」というコンセプトを軸に、資本主義とは何なのか、それはどこに向かい、これからどうなっていくのかを、ヨーロッパの歴史を振り返りながら論じています。

政治・経済と芸術がリンクしながら論が展開する、じつに知的な読み物で、こんな知識がベースにあれば、世界史はもっと面白くなるのに、と思わざるを得ませんでした。

ビジネス視点で見ても、ヒントが満載で、じつに刺激的な一冊です。

さっそく、本書のポイントをチェックしてみましょう。

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「歴史の危機」において最もしてはいけないことは「専門化」(水野)

有用性の低さにもかかわらず、他のどのような商品よりも、ある条件では価値が膨れ上がっていく。その部分にこそ、私は資本主義の本質があるのではないかと思います(山本)

価値というのは、何かを集めることによって生まれます(水野)

空間の広がりによって知識と情報が広がり、それが出版資本主義によって人々のあいだで共有される。情報が共有されることで人々はあるコンテクストを見出し、そこに価値を認める(山本)

スピードというのは、動力革命によってもたらされた価値観(水野)

なぜ二つの大戦が避けられなかったか? 互いの国家の「蒐集」のシステムがぶつかり合い、衝突したという見方ができるでしょう。世界が飽和状態になったとき、新たに進出する新世界がなくなる。結局、お互いを侵食し合わなければ「蒐集」ができなくなるわけです(水野)

新興ブルジョアジーと絵画が結びつき、印象派とその後の絵画のマーケットができあがっていった。それはつまり、パトロンというものがかつての王侯貴族や聖職者から、一般の市民階級になった時代、と表現できますね(水野)

これから百年の年月をかけて、世界には「閉じた帝国」が複数並び立つだろう(水野)

資本主義が終焉を迎えるとはいえ、いきなりすべての活動が終わるわけではなく、グローバリゼーションやバーチャル経済にフロンティアを求めるなど、さまざまな動きが出てくる。同じようにアートの世界も二次元としての絵画の時代は終わっても、「表現」すること自体はその後も続いたのです(山本)

芸術は必ず、反芸術によって延命してきた(山本)

反芸術も含めて時代が「イスム」を失ってしまったとき、簡単にいうなら「やるべきこと」を失ってしまったときに出てくるのが、マニエリスムといえるでしょう(中略)日本では村上隆や奈良美智がその代表です。作品のメッセージ性というよりも、技術のための技術、表現のための表現という側面が強い(山本)

芸術こそが希少性と無限性を併せ持つ特殊な代物であることがわかるはずです。それは芸術が自然物ではなく、人間がつくるフェイク=虚構だからともいえると思います(山本)

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政治家や経営者が読むべきなのはもちろんですが、教育熱心なお母さんにこそ、読んでいただきたい。

親が経済とアートの関係を理解し、人間の創造活動の原点を理解すれば、きっと受験偏重の教育も変わると思いますし、何より子どもが大局観を持った人間に育ちます。

あまりに濃い内容で、まだ消化し切れていませんが、もう一度世界史の教科書、美術史の教科書と格闘してみたいと思いました。

これはオススメの一冊です。

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『コレクションと資本主義』水野和夫、山本豊津・著 KADOKAWA

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◆目次◆

第1章 なぜ資本の本質が芸術に現れるのか 水野和夫
第2章 「コレクション」の本質を歴史から考える 水野和夫×山本豊津
第3章 利子、自我、そして絵画の「作者」の誕生 水野和夫×山本豊津
第4章 「長い十六世紀」とパトロン=コレクターたち 水野和夫×山本豊津
第5章 近代資本主義を「蒐集」から読み解く 水野和夫×山本豊津
第6章 そして戦後、「長い二十一世紀」が始まった 水野和夫×山本豊津
第7章 最先端の芸術が予言する「新中世時代」 水野和夫×山本豊津
第8章 芸術、蒐集、資本主義のしたたかさ 山本豊津

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