【MITメディアラボ所長、語る】
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本日ご紹介する一冊は、MITメディアラボ所長、伊藤穰一氏による待望の本格的著作。
IoT、AI時代に成功するための原則を9つ紹介しており、それぞれに、技術をめぐる興味深い歴史的事実やエピソードが付されています。
本書の「はじめに」で、著者は、われわれが漠然と感じていたことを言語化し、学習・行動することの大切さを強調しています。
<ある技術にいちばん近いところにいる人々こそが、その最終的な用途をいちばん予測できないらしい>
<われわれの技術は、社会としてそれを理解する人間の能力を追い越してしまったということだ。だからいまやわれわれが追いつかなくてはならない>
本書は、まさにわれわれが技術に「追いつく」ための本であり、また技術がもたらす変化に耐えうるメンタリティーと行動原則を身につけるための本だと思います。
「権威より創発」「プッシュよりプル」「地図よりコンパス」「安全よりリスク」「従うより不服従」「理論より実践」「能力より多様性」「強さより回復力」「モノよりシステム」
9つの原理だけを取り上げれば、どこかで言われていることではあるのですが、読めばその意味がより深く理解できると思います。
さっそく、内容をチェックしてきましょう。
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エジソンは蓄音機を発明はしたけれど、ジョンソンはもっと重要なことをやった。かれはレコード産業を発明したのだ
企業はいまや希少な資源のための最適な組織単位じゃない
実は、無知を認めることが、将来の出来事を予測するというますます無駄な目標のために資源を支出する──小委員会だのシンクタンクだの売上げ予測だの──より戦略的な優位性を持つ時代にいまや突入しているのだ
教育よりも学習を重視する
アリの巣が実質的にTCP/IP──インターネットで情報が配信される中心的な手法──を、人類より何百万年も前に発明していた
学問分野として見れば、合成生物学はまだ生まれたてだけれど、ほとんど想像もつかないような形で人類に影響を与える潜在力を持っている。分子コンピュータは、シリコンチップの限界を突破できるかもしれず、そうなればスーパーコンピュータを針の頭に載せられるようになる。人類全体が、あらゆるウィルスに免疫を持つようプログラムしなおせるかもしれない
偉大な科学者の性質として最も過小評価されているのが、バカと思われても平気だということだ
ビットコインとブロックチェーン──簡単に言えば、これまで行われたビットコイン取引すべてが記録される公開台帳──の重要性は、そのアーキテクチャにある。つまり、ネットワークが形成と維持に必要な資源をプルするという理解に基づく構造だ
イノベーションの費用が下がり、もっと多くの人々が新製品や新ビジネス創出のリスクを取れるようになると、イノベーションの中心は周縁にシフトする
新しいパラダイムはほぼまちがいなく、どこかの科学者が支配的な思想を受け入れなかったからこそ実現した
理論より実践ということは、加速する未来では変化が新しい常態となるので、実際にやって即興するのに比べ、待って計画するほうが高い費用がかかるということを認識するということだ
イノセンティブ社の「ソルバー」と呼ばれるこの人々のうち六割以上が修士号や博士号を持っているという事実以上に驚異的なのは、四割近くの人が持っていないということだ。(中略)これは、よく考えればそんなに驚異的じゃない。イノセンティブ社の課題はしばしば、賢い頭脳がすでに解決に失敗したモノだらけだというのを思い出そう
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じつに興味深い内容ですが、惜しむらくは翻訳が読みにくかった点。
これで文章が良ければ、かなり良い作品だったのではと思えるだけに、残念でなりません。
ある程度の知力と忍耐を必要とする本ですが、掘り出すだけの価値は充分にあると思います。
ぜひ読んでみてください。
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『9プリンシプルズ』伊藤穰一、ジョフ・ハウ・著
山形浩生・訳 早川書房
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◆目次◆
1.権威より創発
2.プッシュよりプル
3.地図よりコンパス
4.安全よりリスク
5.従うより不服従
6.理論より実践
7.能力より多様性
8.強さより回復力
9.モノよりシステム
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