【疲弊しないで生きるには】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4906790259
本日紹介する一冊は、精神科医・名越康文さんによる注目の新刊。
これまでに5000人をカウンセリングしたという著者が、現代人が感じている漠然とした「不安」や「疲弊感」の構造を読み解き、どう生きるべきか処方箋を提示しています。
社会が豊かになればなるほど人間関係が「人生のすべて」になり、やがて人は「心の中の他人」の声に縛られるようになる。
心の中の他人の声が四六時中、「こうあるべき」「こうすべき」「これはやってはいけない」といったプレッシャーをかけてくる、という指摘はもっともだと思います。
そして、唸らされたのは、以下の記述です。
<責任ある仕事につき、友人や家族、恋人と語り合い、芸術や趣味に興じる。そんな、傍目から見れば人が羨むような生活を送っている人が、ふとした瞬間に、自分の人生に対してどうしようもない「虚しさ」を覚えてしまう。それは、「今、自分のいる群れ」がどれほど居心地が良いとしても、それがいつしか失われてしまうことを、心のどこかで予感しているからです>
変化が激しい時代になると、企業も業界も変化して、最悪なくなってしまうかもしれない。
そこで人はコミュニティやパートナーを求めるわけですが、好き嫌いで結びついた関係もまた脆いわけです。
現代人の心の病の本質を突いた論述は見事。
ポイントをまとめてご紹介しましょう。
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社会が豊かで安全になればなるほど、私たちは、社会や、周囲の人々との関係性を大切にするようになります。現代に生きる私たちは、猛獣の爪から逃れ、食料を確保して飢えをしのぐかわりに、仕事を通して社会の中で認められたり、家族や友人、恋人や同僚との関係性をうまく取り持つことを求められるようになった
高いレベルのコミュニケーションスキルそのものは、決して悪いものではないと私は思います。ただ、その一方で、それが「当たり前」のように求められてしまう社会は、多くの人を疲弊させてしまう可能性が高い
「人間関係が人生のすべて」になることが、現代人特有の不幸を生み出している
私たちの心の中には、たくさんの「他人」が棲んでいます。そして、対人関係のストレスの多くは、実は、現実の相手というよりは、「心の中の他人」によってもたらされるものです
心の中の他人を追い払い、自分自身向き合う「ひとりぼっちの時間」(=ソロタイム)を過ごす。そうすることによって、私たちは、日ごろのさまざまなプレッシャーから解放され、初めて、自分自身に向き合うことができる
なぜ、人間の群れは、それほど巨大に、複雑に進化することができたのか。それは人間が言葉を操り、さまざまな「幻想」を共有できるようになったからです
近代以降、私たちは職業や結婚相手、場合によっては暮らす国さえ、自由に選ぶことができるようになりました。ただ、その自由と引き換えに、私たちはひとつの群れの中で安住する生き方を、。失ってしまったのです。責任ある仕事につき、友人や家族、恋人と語り合い、芸術や趣味に興じる。そんな、傍目から見れば人が羨むような生活を送っている人が、ふとした瞬間に、自分の人生に対してどうしようもない「虚しさ」を覚えてしまう。それは、「今、自分のいる群れ」がどれほど居心地が良いとしても、それがいつしか失われてしまうことを、心のどこかで予感しているからです
人間というのは本来、どう生きたってかまわない
私たちは何かに集中している時、「群れ」からの評価を気にせず、自分の内側にある、自分だけの尺度で物事に取り組んでいる
誰かに振り向いてほしいという感情は、往々にして、振り向いてくれない相手への怒りとセットなのです
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対処療法しか書いていないあまたある心理本と違い、問題の本質をきちんと捉えた、良い本だと思いました。
ただ、すべての人が「ひとりぼっち」でいられるかといったら、それはまた違う話。
本書には、一人で生きるためのノウハウは書かれていますが、良い見本がいなければ、また社会全体が変わっていかなければ、理想を実現するのは難しいでしょう。
今後の生き方を考える上で、示唆に富んだ一冊です。
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『「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』名越康文・著 夜間飛行
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◆目次◆
第1講 あなたは群れの中で生きている
第2講 本当の自分の人生の見つけ方
第3講 自分の心に打ち勝つ
第4講 身体に秘められた知恵と出会う
第5講 人生を変える習慣の力
第6講 もう一度、人と出会う
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