【「近距離移動」社会のインパクト】
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オリンピックが行われる2020年も大事ですが、2025年はもっと大事。
なぜなら、2025年は団塊の世代が75歳を超える年だからです。
75歳というのは、いわゆる「後期高齢者」の年齢。身体機能が著しく低下し、いろんな活動を諦めなければならなくなる年なのです。
なかでも問題なのは、車世代だった団塊世代が、マイカーを運転できなくなる、という点。
車の需要が減るのはもちろんですが、彼らが車なしでも生活できる「コンパクトシティ」が実現できなければ、買物や医療など、あらゆる面で問題が生じる可能性があるのです。
そこで読んでおきたいのが、本日ご紹介する『ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか』。
ドイツ在住ジャーナリストで、環境コンサルタントでもある著者が、コンパクトシティ化に成功したドイツの「フライブルク」市を見本に、日本のコンパクトシティがどうあるべきか、地方をどう再生するべきか、論じています。
著者の提言が必ずしも上手くいくかどうかわかりませんが、都市を作る時に参考になる基本情報がきちんと紹介されているのが便利です。
人口密度はどれくらいが理想なのか、徒歩、自転車、公共交通、マイカーではそれぞれどれぐらいの都市空間を消費するのか、など、興味深いデータが示されており、勉強になりました。
理詰めでじっくり読んでいきたい本ではありますが、ここでは気になったポイントだけピックアップしておきましょう。
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フライブルクは、全市民の70%以上が路面電車(トラム)の停留所から300メートル以内のエリアに居住しており、バスの停留所も含めると公共交通のカバー率は98%に及ぶ。日中の路面電車は6~8分に1本運行されているため、時刻表を見る必要がなく、早朝5時半から深夜0時半まで路面電車とバスで移動できる。それどころか、若者に夜遊びの自由を与え、飲酒運転を防止するために、金曜日、土曜日などの休前日には深夜でも30分間隔、24時間体制で路面電車が、そして郊外行きのバスが運行されている
ドイツでも日本でも、伝統的な都市(小中規模)においては、住宅地の人口密度は自然発生的に最低130~150人/ヘクタール程度で形成されてきた。これは、戦前や産業革命前であっても、市街地を平均するとおおよそその数値になっている
地域の住民や企業が自身の地域内で省エネ対策に投資をしたり、再生可能エネルギーに投資をするならば、その投資額は地域経済を豊かにし、かつその初期投資費用は省エネ効果、再エネ効果で10~20年間で回収できる
オフィスや商業用の床面積の価値が住居よりも上回るような場所は、ドイツでも、日本でもかなり限定的である。それ以外のほとんどの地域では、建物の投資効率を最大限に高めようとすれば、地上階部分も住居として販売・賃貸することが理性的な判断になる。それゆえ市場原理に任せたままでは、非住居スペースがつくられることはない
ウィーン工科大学のヘルマン・クノーフラッハー教授によると、人間が移動する際、徒歩であればおよそ0.95平方メートル/人(時速4キロメートルの移動時)の都市空間を消費するだけで済むという。公共交通やタクシーの場合は4.1平方メートル/人(時速30キロメートル)の空間を消費する。自転車では、自転車レーンや駐輪場に起因して6.7平方メートル/人(時速30キロメートル)の空間が必要だ。しかし、マイカーはそのレベルではない。人間1人を移動させるのに最低でも10.7平方メートル(駐停車時)、極端な場合は199.0平方メートル(時速50キロメートルで走行時)を超える都市空間を消費してしまう
この当時、フライブルク市議会は一つの英断を行った。中心市街地を歩行者天国にすることにしたのだ。しかし、日本でもお馴染みの「車が来ないとお客が来ない」という論法によって、中心市街地で商売を営む小売店関係者からは猛烈な反対を受けた。そこで市はアーヘン工科大学の力を借りて、市役所横の一つの通りを時限的、試験的に歩行者天国化することにした。すると、歩行者天国にしたその日から、その通りは人で溢れ、通り沿いの小売店は軒並み売上げを伸ばしたという
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これからの街づくりをどうするか、という公の視点で読んでも興味深いですが、不動産投資、ビジネスの視点でも勉強になる部分がたくさんあります。
なかでも、これから人口が激減する地域の情報、人口が減ると地方がどうなるのか、という話は参考になりました。
視野を広げるために、そして2025年以降のビジネスチャンスをつかむために、ぜひチェックしておきたい一冊です。
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『ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか』村上敦・著 学芸出版社
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◆目次◆
はじめに 車がないまちの豊かさ
1章 日本のコンパクトシティはなぜ失敗するのか
2章 地域経済を活性化する交通とは
3章 ショートウェイシティ 移動距離の短いまちづくり
4章 マイカーを不便にするコミュニティのデザイン
5章 費用対効果の高いまちづくりのツール、自転車
6章 交通のIT化とシェアリングエコノミーは地域を幸福にするか
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