【デザインの世界史】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4314011459
本日ご紹介する一冊は、デザイン歴約40年、本の装幀や造本の仕事を中心に活躍するグラフィック・デザイナーの松田行正さんが、デザインの歴史を辿った一冊。
「デザインの世界史」とでも言える内容で、素人にも色や装飾、ロゴ、レイアウトがどう発展してきたのか、よくわかります。
先日ご紹介した『誘うブランド』に、メッセージは消費者が無防備な時に一番よく届く、といった内容がありましたが、まさに本書はデザインを使って消費者の無意識に働きかけるための基礎知識を提供するものです。
※参考:『誘うブランド』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4802510454/
印象画が鉄道のおかげで発達したという話や、ロンドンの地下鉄の初めての路線を機に、グラフ化、チャート化の流れが一気に開花したという話、色が意味した宗教的・政治的意味など、じつに良い勉強になりました。
かつて希少だった色が、原料の発見によって一般に普及する様子や、庶民のものだったデザインが上流階層に広がっていく様子など、一筋縄ではいかないところが、デザインの面白いところです。
時代によって、マーケティングによってデザインの持つ意味は変化していくのかもしれませんが、意図的に変化を起こす際に、知っておくと便利な知識が本書には詰まっています。
さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。
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鉄道ネットワークができた一八四〇年代、人々は列車の窓から、流れて実体を結ばない風景を見て驚きました。そしてこの印象をそのまま絵にとどめようとした画家たちも現れます。風景を記憶のなかで描くことでディテールはあいまいになります。これが印象画誕生の背景の一つ
ロンドン地下鉄のはじめての路線図が、ハリー・ベックによってチャート化されたのが一九三三年と、一九世紀半ばからはじまったグラフ化、チャート化の流れが一気に開花した
色は、歴史上、宗教や政治・社会状況、地域などによってさまざまなイメージを持たされてきました。二〇世紀で言えば、ロシア革命前後から現れた共産主義のシンボル「赤」、第二次世界大戦後に生まれた平和のシンボル「青」、五〇年代に生まれたかわいい色「ピンク」、六〇年代後半に生まれた環境のシンボル「緑」、八〇年代に現れたおしゃれとしての「黒」が挙げられます
ロゴマークの色といえば、かつては赤や青が多かったのですが、今は圧倒的に緑が増えました。地球環境への企業の責任が問われる時代になったので、環境に配慮しているというイメージを強調するためです。枯れた草木も、季節が変わると緑の葉をつけるので、緑にはもともと再生のイメージがありました
紫はもっぱら権威をあらわす色として使われてきましたが、白は、西洋、東洋にかかわらず、その上位にあたる神の色とされてきました
組紐は、古来より「邪」を祓うと言われ、「結ぶこと」が神聖なことと考えられてきました。日本の「注連縄(しめなわ)」など、その典型的な例です
シンメトリーは、願望実現のためのより魔術的な構図だった
いずれデザイン自体も、テキストと素材が揃えば、コンピュータ自らが過去の厖大な事例から抽出して行う時代がくるかもしれません。人間は、(デザインの方向性は設定するかもしれませんが)素材を入力するだけ。しかし、コンピュータが提示する最適解が常におもしろいものとは限りません。なにしろ、そのデザインを楽しむのはコンピュータではなく人間だからです。そうすると、人間の好き嫌いの感覚や、画竜点睛的手法(ちょっと手を加えて完成させること)
が重要になってきます。それがいわゆる「センス」であり、センス
は見聞を広めることで磨かれます
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ビジュアル抜きでしかご紹介できないのが残念ですが、実際の本は、映画の一場面や書籍の表紙、アルバムのジャケット、昔の銅版画、幾何学模様などがカラーで紹介された、じつにビジュアルに優れた内容です。
ビジュアル資料を見ながら理解を深め、一気にデザインの世界史を概観できるので、教養として読んでおくといいでしょう。
これは、おすすめの一冊です。
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『デザインってなんだろ?』松田行正・著 紀伊國屋書店
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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4314011459/
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http://bit.ly/2ndDMit
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◆目次◆
第1章 色ってなんだろ?
第2章 装飾ってなんだろ?
第3章 ロゴってなんだろ?
第4章 レイアウトってなんだろ?
第5章 表現ってなんだろ?(前篇)
第6章 表現ってなんだろ?(後編)
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