【アートに学ぶ投資の視点】
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日本一の投資家として名を馳せた故・竹田和平氏が、亡くなる前に、お金の使い道についてお話してくれました。
「お金持ちのお金は、アートか教育に行き着くしかない」
確かに、偉人のお金の処分方法を見ていると、芸術品を収集するか、学校を創るケースが多い。
資産価値を考えてのことか、お金持ちでも手に入れられない「永遠」への憧憬があるからなのかわかりませんが、今日は「投資としてのアート」を考えてみたいと思います。
ナビゲーターとなるのは、「東京画廊」オーナーの山本豊津(やまもと・ほづ)さんが書いた、『アートは資本主義の行方を予言する』。
日本大学教授で、ベストセラー『資本主義の終焉と歴史の危機』を書いた水野和夫さんも絶賛の、注目の一冊です。
※参考:『資本主義の終焉と歴史の危機』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087207323/
著者が経営する「東京画廊」は、日本初の現代美術画廊として知られる画廊で、本書にはアートの価格決定メカニズムと投資の視点、そしてアートの歴史、鑑賞のポイントが手際よく盛り込まれています。
「投資としてのアート」を知るための、絶好の入門書。そして、「資本主義の終焉」の先にあるものは何か、われわれは何に価値を見出し、どう生きるべきなのか、ヒントを与えてくれる、示唆に富んだ一冊でもあります。
さっそく、ポイントを見て行きましょう。
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有用性が低いもの、「使用価値」が低いものほど価値は転換し飛躍する。その飛躍によって「交換価値」がどんどん上がっていく。絵画とはまさにそんな資本主義の“価値と価格のパラドックス”を体現するもの
絵画のマーケットは当初のフランス、イギリスから周縁のドイツ、イタリア、スペイン、ロシアに移り、第二次世界大戦後は米国、そして今や中国へと移ってきています
安く買って高く売る。将来値が上がりそうな作品をできるだけ安く手に入れる。そのためにはまだ注目を浴びていない周縁の作家の作品を安いうちに買うことです
成長センターは次々と周縁へ広がっていくのですが、最初の中心は動きません。それが資本主義の構造であり、同時にアートの市場の仕組みでもあります。美術市場の中心はどこかといえば、それは依然としてヨーロッパなのです
そもそも中国では、美術品にお金が流れる構造的な理由があります。経済が発展しお金が余るようになると、最初に値段が上がるのが土地です。バブルの頃は東京の地価が跳ね上がり、二三区の土地の値段だけで米国全土を買えてしまうほどでした。投資家はまず土地を買います。同時に、余っているお金が株式などの証券へ流れます。そして、さらに余っているお金が美術品に流れるのです。ところが中国はご存知のように共産主義国ですから、土地にお金が流れにくい構造になっています。土地は国家の所有物であって、個人のものではないからです
結局、大多数の日本人は、評価が高くなってからしかお金を払えない
「有用性」の枠にとらわれないからこそ、私たちは真に自由な発想と創造ができる
もはやものを作ることにお金をかけるのではなく、逆に近代以降作ってきたものや価値観を壊すことにお金をかけてみたらどうでしょうか。近代以降に作られたもので美しいものは少ない。これは私の実感であり、正直な感想です
芸術ならば宗教の違いも関係ありません。イデオロギーの違いも関係なければ人種の違いも関係ありません。貧富の差も家柄もまったく関係ない
生活から離れ、用の世界から離れた時、初めて対象の美しさを純粋に感じることができる
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かねてより、「経済が成熟した後は文化しかない」と訴えていた土井にとっては、「我が意を得たり」の一冊です。
現代アートに関してはちんぷんかんぷんでしたが、本書を読んで、その意味や価値の本質がよくわかりました。
著者が指摘するように、<大多数の日本人は、評価が高くなってからしかお金を払えない>。
価値を見極められる人間になるために、さっそく画廊を訪れてみたい気分になりました。
教養としても、また投資のヒントとしても、得るところの多い一冊です。
ぜひ読んでみてください。
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『アートは資本主義の行方を予言する』山本豊津・著 PHP研究所
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◆目次◆
第1章 資本主義の行方と現代アート
第2章 戦後の日本とアート
第3章 日本発のアートと東京画廊の歩み
第4章 時代は西欧からアジアへ
第5章 グローバル化と「もの派」の再考
第6章 「武器」としての文化
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