2017年2月21日

『楽しく学べる「知財」入門』稲穂健市・著 vol.4598

【ビジネスマンの教養としての「知財」】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062884127

ビジネスパーソンにとって、法律と会計は、知っておかなければならない必須の教養。

なぜならその他の教養と違い、この2つはビジネスをする上での「ルール」だからです。

なかでも、最近注目が集まっているのが、法律では知的財産権、会計ではM&A。

本日ご紹介する一冊は、そのうち「知的財産権(=知財)」を扱った教養書です。

著者の稲穂健市さんは、弁理士・米国公認会計士の資格を持つ方で、大手電気機器メーカーにおいて、ソフトウェア関連発明の権利化業務に携わった人物。

既に一度、BBMで『すばらしき特殊特許の世界』を紹介していますが、今回も興味深い読み物に仕上がっています。(「稲森謙太郎」は、同著者の科学技術ジャーナリスト名)

※参考:『すばらしき特殊特許の世界』稲森謙太郎・著 太田出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4778313887/

実際に裁判で争ったケースや、疑いをかけられたケースなど、さまざまな事例が登場し、特許戦略の「ツボ」が学べるという、実用的かつ楽しい一冊です。

さっそく、いくつかポイントをチェックしてみましょう。

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思想・感情と関係のない「事実・データ」は著作物ではないし、頭の中で考えているだけで、具体的な「表現」として外部に現れていない「アイデア」も著作物ではない

毛筆などで書かれた「書」は、一般的に「美術の著作物」に該当する

ほとんど同じにしか見えない中央大学の「C」マーク、広島東洋カープの「C」マーク、米大リーグのシンシナティ・レッズの「C」マーク、智辯学園和歌山高等学校野球部の「C」マークについても、おそらく著作物性はない

ちょっとややこしいのは、キャラクターの人物像(性格やスキルなどの設定)は著作物ではなく、キャラクターの容姿を表現する「絵柄」が著作物となり得るという点だ。「ドラえもんはどら焼きが大
好き」とか、「スーパーサイヤ人は無敵」といったキャラクター設定は抽象的な概念であって、具体的に表現されたものではないため、著作物ではない

身体に彫った「刺青」も美術の著作物である(中略)「自分の身体の一部なのだから、勝手に載せても問題ないのでは?」と考える方もいるかもしれないが、事はそう単純ではない。彫り師は、版元である「本の泉社」と鬼塚氏の行為が、自らの「著作者人格権」の侵害にあたるとして、東京地裁に訴え出た

三越の包装紙は、もともとは、洋画家・猪熊弦一郎氏の抽象画を包装紙に転用したものであるから著作権があり、その一方で、高島屋の包装紙は、初めから包装紙としてデザインされているため、著作権がない

有名人は自己の氏名や肖像を商業的に利用できる「パブリシティ権」を持っている。そのため、有名人に無断で他人がその氏名や肖像を利用すると、その有名人のパブリシティ権を侵害することになる

ウォールペイントアーティストのロコサトシ氏が、自らイラストを描いた横浜市営バスの車体が幼児用書籍『まちをはしる はたらくじどうしゃ』(永岡書店)に無断で掲載されたとして裁判を起こし
たことがあったが、「市営バスとして、一般公衆に開放されている屋外の場所である公道を運行する」ため、屋外に一定の状態で置かれていると判断されて著作権侵害は認められなかった

腕時計「G-SHOCK」(「重力Gravityの衝撃Shockにも耐えられる」ことから命名された)についても、商標権者の「カシオ計算機」は、「A-SHOCK」から「Z-SHOCK」まで、アルファベット26文字をすべて登録して、押さえている

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<インテリアメーカーの「ニチベイ」が、扉を指定商品として「どこでもドア」を商標登録している><「お魚くわえたどら猫」は登録NG>など、雑学として読んでも、十分楽しめる内容です。

知財のセンスが身に付くと同時に、雑学のネタまで仕込める、一粒で二度美味しい一冊です。

ぜひチェックしてみてください。

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『楽しく学べる「知財」入門』稲穂健市・著 講談社

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◆目次◆

序 章 知的財産権とは?
第1章 その作品の模倣は許されるのか? 著作権
第2章 その目印の模倣は許されるのか? 商標権
第3章 そのアイデアの模倣は許されるのか? 特許権・実用新案権・意匠権
第4章 その権利は永遠なのか?──知財の複合化と「知財もどき」

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