2017年2月22日

『「原因と結果」の経済学』中室牧子、津川友介・著 vol.4599

【科学的に考えるための基本とは?】
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・メタボ検診を受けていれば長生きできる
・テレビを見せると子どもの学力は下がる
・偏差値の高い大学へ行けば収入は上がる

われわれの社会で「常識」とされているこれらの主張、じつは経済学の有力な研究により、すべて否定されています。

なぜこんなことになったのか?

それは、われわれ人間が「因果関係」と「相関関係」を取り違えてしまうから。

念のためおさらいすると、因果関係というのは、2つのことがらのうち、どちらかが原因で、どちらかが結果である状態。一方、相関関係というのは、2つのことがらが原因と結果の関係にないものです。

ただ厄介なのは、本来相関関係でしかないのに、一見因果関係のように見えてしまうものがあるということ。

たとえば、アマゾンの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」は、相関係数をもとに表示されていますが、そこに因果関係があるかどうかはわかりません。

著しい相関関係があったとしても、じつはその原因は「BBMで紹介されたから」ということもあり得るのです(苦笑)。

ビジネスパーソンたるもの、「原因」と「結果」を取り違えることがあってはならない。

そのために読んでおきたいのが、本日ご紹介する『「原因と結果」の経済学』です。

ベストセラー『「学力」の経済学』の著者であり、教育経済学者である中室牧子氏と、医師かつ医療政策学者である津川友介氏が、教育と医療を題材に、「因果推論」のやり方を教えています。

さっそく、ポイントを見て行きましょう。

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テレビを見ている時間が長くなると、学力は低くなるのではなく、逆に高くなることが示唆されている

大学の偏差値と将来の収入のあいだに因果関係はない

因果関係なのか相関関係なのかを正しく見分けるための方法論を「因果推論」と呼ぶ

「軽薄な人間は運勢を信じ、強者は因果関係を信じる」(エマーソン)

◆因果関係を確認する3つのチェックポイント
1.「まったくの偶然」ではないか
2.「第3の変数」は存在していないか
3.「逆の因果関係」は存在していないか

常識的には「地球温暖化が進んだから海賊が減った」とは考えにくい。一見この2つのあいだに関係があるように見えるのは「まったくの偶然」だからである。このように、単なる偶然にすぎないのだが、2つの変数がよく似た動きをすることを「見せかけの相関」と呼ぶ

反事実とは、「仮に◯◯をしなかったらどうなっていたか」という、実際には起こらなかった「たら・れば」のシナリオのことを指す。(中略)因果関係の存在を証明するためには、原因が起こったという「事実」における結果と、原因が起こらなかったという「反事実」における結果を比較しなければならない

「観察された差が偶然の産物である確率」が5%以下であるときに、「統計的に有意である」と言い、2つのグループの差は誤差や偶然では説明できない「意味のある差」だということになる

差の差分析を行うには、介入群と対照群のそれぞれにおいて、介入前と介入後の2つのタイミングのデータを入手しなければならない

認可保育所を増やしても母親の就業率は上がらない

最低賃金を上げても雇用は減らない

学力の高い友人に囲まれても自分の学力は上がらない

医療費の自己負担割合が引き下げられると、高齢者は病院に行く回数が増えるものの、それによって死亡率や健康状態に影響が出ることはない

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因果関係を意識した発言ができるようになると、周りから一目置かれる人になります。

反対に、間違った分析や提言をすると恥をかくことになる。

転ばぬ先の杖として、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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『「原因と結果」の経済学』中室牧子、津川友介・著 ダイヤモンド社

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◆目次◆

第1章 根拠のない通説にだまされないために
    「因果推論」の根底にある考えかた
第2章 メタボ健診を受けていれば長生きできるのか
    因果推論の理想形「ランダム化比較試験」
第3章 男性医師は女性医師より優れているのか
    たまたま起きた実験のような状況を利用する「自然実験」
第4章 認可保育所を増やせば母親は就業するのか
    「トレンド」を取り除く「差の差分析」
第5章 テレビを見せると子どもの学力は下がるのか
    第3の変数を利用する「操作変数法」
第6章 勉強ができる友人と付き合うと学力は上がるのか
    「ジャンプ」に注目する「回帰不連続デザイン」
第7章 偏差値の高い大学に行けば収入は上がるのか
    似た者同士の組み合わせを作る「マッチング法」
第8章 ありもののデータを分析しやすい「回帰分析」

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