【鉄道デザインの巨匠、哲学を語る】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822275418
デザインとは意志である。
長い年月を経て生き残った歴史的建造物を見ていると、思わずそんなことを考えさせられます。
どんなに予算をかけても、どんなに巨大なものを作っても、それが人の心を捉え、時の試練に耐えられるかどうかは、まったく別問題です。
「デザイン思考」という言葉が流行りましたが、そこでは優れたデザイナーの「意志」については、あまり論じられていなかった気がします。
セミナーでよくお話することですが、表現というのは、突き詰めれば4つの要素で支えられている。
素材→切り口→表現力→受け手
だから、優れた表現をしようと思ったら、この4つの変数を大きくしていくことが肝心。
その時、原点となるのは、受け手である顧客や社会への想いなのです。
良い素材を手に入れようとする努力、問題を解決するためにひねり出した他者とは違った見方、表現力を磨き続ける継続力は、結局、その人の目的意識から来る。
そんなことに気付かされたのが、本日ご紹介する一冊、鉄道デザインのカリスマ、水戸岡鋭治さんによる『鉄道デザインの心』です。
以前、たまたま手に取った雑誌で、イタリアのカーデザインの巨匠、ジウジアーロさんと並んで紹介されていた水戸岡鋭治さん。
恥ずかしながら存じ上げなかった土井が調べてみたところ、JR九州の大人気豪華列車「ななつ星」のデザイナーであることが判明しました。
JR東海もJR東日本もできなかった、世界をあっと驚かす豪華列車がなぜ生まれたのか、その真相を学ぶことができます。
ビジネスというのは妥協の連続ですが、そんななかでも理想を忘れてはいけない。
お客様や社会に貢献するには、どう考え、どう闘えばいいのか、本書はデザイン以上に大切な「意志」や「精神」を教えてくれます。
水戸岡さんの名言を、さっそく見て行きましょう。
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「安全のために燃える素材を使わない」というのは正しい。しかし「安全のために木材を使わない」というのは正しくない
飾りビスもデザインしました。何重にも複雑な枠が重なっているので、何か故障があったときに外す必要がありますよね。外すのが簡単じゃないと職人の手間がかかりすぎるので、もうビスを見せるしかないということになりました。金色のビスと銀色のビスです。普通、ビスを隠すのが工業デザインの基本です。「見せるビス」を造るのは覚悟が要ります。星形の飾りビスを造りました
僕は利用者の代表として、ものを申したい。自分がやりたいことのために闘うわけではなくて、ユーザーのために闘います。JRの立場とか、建築家の立場とか、ゼネコンの立場とか、職人の立場とか、そういうことは一切考えたくないんです
子供は最初に見たものが、ものを考える基準になっていくわけですから、子供がどう見るかはデザイナーとしていつも意識するべき視点だと思います
日本の国内で最近大事になっているのが観光産業で、僕たちはその観光産業を手伝っているわけです。国も言っている観光立国のために鉄道車両を造る、船を造る、飛行機を造る、といろんなものを造ろうとしたとき、国土交通省のルールが厳しくて楽しいものが造れない。建物だって建築基準法が厳しすぎて、面白い建物を造れない
自分がこれまで生きてきた人生を懸けて、全身全霊でものづくりとか仕事に向かわないと、感動を与えるようなものはつくれません
「水戸岡さん、こんな本革と木を使ったら子どもたちが傷付けますよ、通学している生徒の中には不良もいっぱいいるんだから」って言われました。「じゃあ何ですか、プラスチックと合成皮革でやるわけ?そんなこと言わずに、最高のものを不良に提供しましょうよ」
柿右衛門をそこに使って、もしかしたら割れるかもしれない、落としたら割れるかもしれないって思うところに、初めて本気のマナー、作法が生まれるんですよ
みんな、自分の能力は自分のものだと思っている。そうじゃなくて優秀な子は、みんなのために能力をもらっているのだっていうのが自然の摂理なのに、今の世の中はそういうふうになってないでしょう
数字にすると、次の世代に教えることができる
会社の仕事は自分が稼ぐための仕事、つまり「稼ぎ仕事」としてやらなくちゃいけないんですが、もう一つ「務め仕事」っていうものがあるだろうって思ってるんです
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意志を貫くためには、クライアントにも盾突く。そんな水戸岡さんのスピリットが伝わってくる、感動の一冊でした。
誤植が目立ちましたが、ぜひ細部までこだわって、売り続けて欲しい一冊です。
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『鉄道デザインの心 世にないものをつくる闘い』水戸岡鋭治・著 日経BP社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822275418
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◆目次◆
序 章 はじめに・デザイナーはアーティストではない
第1章 雇い主に盾突く
第2章 本当の顧客に尽くす
第3章 攻撃的職人列伝
第4章 「ななつ星」でできたこと
第5章 鉄道車両は椅子が命
第6章 時には妥協もします
第7章 コピー上等
第8章 贅沢だけど高価ではない
第9章 青臭くてもやり通す
第10章 稼ぎ仕事と務め仕事
第11章 次は「或る列車」
第12章 大分の駅を引き受ける
第13章 クルーズは再び海へ
第14章 街づくりはお任せください
第15章 これからは提案します
終 章 終わりに・盾突くということ
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