【スティグリッツ最新作】
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世の中には、2つの儲かる商売があります。
1つは、大衆相手の商売。もう1つは、お金持ち相手の商売です。
このどちらが儲かるかというと、実際には大衆向けの商売。事実、日本で年収1億円を超える経営者のほとんどは、大衆向けのビジネスを展開しています。
なぜお金持ち向けの商売は、大衆向けの商売に勝てないのか?
それは、お金持ちがそこまでお金を使わないからです。
彼らは消費ではなく、投資する。地代(レント)を求める活動であるレントシーキングには金を投じるけれど、消費にはそれほどお金を回さない。だから、経済全体を潤さないわけです。
昨年末からトマ・ピケティの『21世紀の資本』が話題となっていますが、いま、格差が注目されているのは、大衆が疑問を持ちだしたからではありません。
※参考:『21世紀の資本』
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富裕層が、格差によって不利益を被る可能性を感じているからです。
こうした格差によって生じる問題に、真っ向から切り込んだのが、本日ご紹介する、ジョセフ・E・スティグリッツの最新刊。
過去から現在までのアメリカ経済を分析し、格差の問題と、これからの展望を論じています。
さっそく、その主張を見て行きましょう。
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現在、上位一パーセントが所有する富は、世界の総資産の半分に迫りつつあり、このままいけば二〇一六年には、一パーセントと残り九九パーセントの資産額が肩を並べるという
残念ながら不平等の拡大によって、アメリカ型経済モデルは大部分の人々に利益をもたらさなくなってしまった。インフレ調整後の数字で見ると、平均的なアメリカ人家庭の生活ぶりは四半世紀前よりも悪化している。貧困者の割合も増加してしまった
アメリカにおける不平等の拡大は、ピラミッドの底辺から頂上へ金を移動させる。そして、頂上の人々は底辺の人々より金を使わないため、需要全体を弱めることになる
金持ちになる方法はふたつ。国全体のパイを大きくするか、既存のパイにおける取り分を大きくするかだ
規制のない市場や規制の不充分な市場が失敗した例は、長い歴史において枚挙にいとまがない
従来。富の成長とは、家庭や企業が長年にわたり、余分な金を蓄えにまわしてきた結果だった。しかし、測定された富の量は、貯蓄で説明できる範囲をはるかに超えていた。データを注意深く分析すると、富の増加分の多くは、キャピタルゲインで構成されていたのだ
金では二種類のものを買える。生産物と固定物(たとえば土地)だ。金が前者につかわれれば、生産物に対する需要が増加し、(一時的な生産のボトルネックが存在しないかぎり)産出が増加する可能性も高い。しかし、後者に金がつかわれても、効果は価格上昇だけにとどまり、資産の価値は増えても量が増えることはない
上位一パーセントは最高の家に住み、最高の教育を受け、最高の医者にかかり、最高の生活様式を享受するが、ひとつだけ金で買えなかったものがある。自分たちの運命が九九パーセントの暮らしぶりに左右されるという理解だ
若者への投資こそ成長の鍵
税制の累進性引き上げを主張する団体、“税金の公平性を求める市民連合”の推計によれば、二〇一〇年、連邦税と州税と市町村税を勘案すると、上位一パーセントはアメリカの税総額の二〇パーセント強しか負担していない
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格差の他にも、知財制度がイノベーションを抑制するという話や、グローバル化のマイナス面など、現在の世界経済の問題点がひと通り考察されています。
過去の記事をまとめて一冊にしたということもあり、若干話の重複が多く、気になるところ。
それを除けば、なかなかに面白い論考だと思います。
ぜひチェックしてみてください。
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『世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠』
ジョセフ・E・スティグリッツ・著 徳間書店
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◆目次◆
Prelude 亀裂の予兆
第1部 アメリカの“偽りの資本主義”
第2部 成長の黄金期をふり返る(個人的回想)
第3部 巨大格差社会の深い闇
第4部 アメリカを最悪の不平等国にしたもの
第5部 信頼の失われた社会
第6部 繁栄を共有するための経済政策
第7部 世界は変えられる
第8部 成長のための構造変革
余波 すべての人に成功の基盤を
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