【教育の新常識】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4799316850
アマゾンのバイヤー時代は、ビジネス書に限らず、さまざまなジャンルの本を扱いましたが、なかでも「いい加減だなあ」と思ったのが、教育に関する書籍。
人間の未来を創る大事なジャンルだというのに、ほとんどの本が科学的根拠を持たず、個人の子育て体験かまだ結果の出ていない新理論。
教育の失敗は、本人のみならず、国力にも悪い影響を与えるわけですから、「単なるトレンド」ではいけないのだと思います。
そこで読んでおきたいのが、教育経済学に基づく『「学力」の経済学』。
米コロンビア大学で博士号を取得し、現在慶應義塾大学総合政策学部准教授を務める教育経済学者の中室牧子さんが、学力・教育に関する最新理論をまとめ、論じています。
以前、メルマガで『成功する子 失敗する子』という、アメリカの最新教育理論をまとめた本を紹介しましたが、似たような切り口で、日本の現状も含めて論じています。
※参考:『成功する子 失敗する子』
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世間でよく言われる以下のような「常識」に、真っ向からNoというのが痛快です。
・ご褒美で釣っては「いけない」
・ほめ育てはしたほうが「よい」
・ゲームをすると「暴力的になる」
正解は……
・ご褒美で釣っても「よい」
・ほめ育てはしては「いけない」
・ゲームをしても「暴力的にはならない」
さっそく、その教えの一部をご紹介しましょう。
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体験談では、往々にして、あまたの研究が示す「子どもの学力にもっとも大きな影響を与える要因」については、ほとんど触れられていません。それは、親の年収や学歴です
子どもに対する関心が高い親は、子どもを勉強するように促すでしょうし、同時に子どもに本を買い与えたりもするでしょう。その「関心の高さ」こそが両方の変化を同時に引き起こしているにもかかわらず、あたかも、読書と学力の間に相関関係があるかのように見えてしまう。これが「見せかけの相関」です
ご褒美は、「テストの点数」などのアウトプットではなく、「本を読む」「宿題をする」などのインプットに対して与えるべき
アウトプットにご褒美を与える場合には、どうすれば成績を上げられるのかという方法を教え、導いてくれる人が必要
子どもが小さいうちは、トロフィーのように、子どものやる気を刺激するような、お金以外のご褒美を与えるのがよいでしょう。一方、同じ実験の中で、中高生以上にはやはりトロフィーよりもお金が効果的だったこともわかっています
子どもの自尊心を高めるようなさまざまな取り組みは、学力を押し上げないばかりか、ときに学力を押し下げる効果を持つ
1時間テレビやゲームをやめさせたとしても、男子については最大1.86分、女子については最大2.70分、学習時間が増加するにすぎない
子どもと同性の親のかかわりの効果は高く、とくに男の子にとって父親が果たす役割は重要
子どもの学齢が低い時に習熟度別学級を実施すると、格差が拡大し、平均的な学力も下がってしまう
「自分のもともとの能力は生まれつきのものではなくて、努力によって後天的に伸ばすことができる」ということを信じる子どもは、「やり抜く力」が強いことがわかっています
能力の高い教員は、子どもの遺伝や家庭の資源の不利すらも帳消しにしてしまうほどの影響力を持つ
教員免許制度を変更し、能力の高い人が教員になることの参入障壁を低くすることが有力な政策オプション
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金銭的インセンティブが効くことや、ほめることの弊害、意外に小さいテレビやゲームの影響…。
これまでの教育の常識をひっくり返す、興味深い研究結果がいくつも紹介されています。
知らずに子どもをスポイルすることのないように。
ぜひ買って読んで欲しい一冊です。
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『「学力」の経済学』中室牧子・著 ディスカヴァー・トゥエンティワン
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◆目次◆
第1章 他人の?成功体験?はわが子にも活かせるのか?
データは個人の経験に勝る
第2章 子どもを?ご褒美?で釣ってはいけないのか?
科学的根拠に基づく子育て
第3章 ?勉強?は本当にそんなに大切なのか?
人生の成功に重要な非認知能力
第4章 ?少人数学級?には効果があるのか?
エビデンスなき日本の教育政策
第5章 ?いい先生?とはどんな先生なのか?
日本の教育に欠けている教員の「質」という概念
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