【マツダのMr.エンジンが語る成功哲学】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478061548
本日の一冊は、瀕死の状態だったマツダを、一転V字回復に導いた奇跡のエンジン「SKYACTIV」の開発責任者が、その裏側と開発成功の秘訣を語った一冊。
ハイブリッドブームにあえて背を向け、究極の内燃機関実現に焦点を絞った開発陣。
その発想と思考プロセスは、すべての問題解決に通じる学びに満ちています。
<まずは究極の姿としての理想像を定めて、そこに近づくために私たちが制御できる因子を明確にし、その制御因子を理想に近づけることだけを考えれば、もう迷うことはないはずである>
とは著者の弁ですが、この考えから導き出されたのが、エンジンの主要なエネルギー損失4つと、それらを制御する7つの因子でした。
◆4つの主要なエネルギー損失
1.排気損失
2.冷却損失
3.ポンプ損失
4.機械抵抗損失
◆7つの因子
圧縮比、比熱比、燃焼期間、燃焼タイミング、壁面熱伝達、吸排気行程圧力差、機械抵抗
思い切って誰もやったことがないと思われる高圧縮比からテストしたことが奏功して、画期的なエンジンが出来上がったわけですが、これを受けて著者はこう述べています。
<思い切って誰もやったことがないと思われる高圧縮比からテストしたからこそ発見できた現象だ。みんなと同じやり方で少しずつ変化させていたのでは、他人より早く新しい発見をすることはできない。誰もまだ見ていない世界にいち早く踏み込むことである。「大きく振ってみる」──これは、いまも教訓として身についていることだ>
このように本書には、開発を通じて著者が得た思考法や心構えが書かれており、じつに参考になります。
惜しむらくは、専門用語の解説が丁寧でなかったこと、文章がやや読みづらかったこと。
開発に携わる方、イノベーションを求める経営者には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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私は常々、電気を生み出す『発電』というものの将来像を議論せぬまま、電気自動車を語ることには疑問を感じていた。だからこそ私は、ステレオタイプの考え方や常識にとらわれることなく、社会やお客様のためになる技術を創ることこそが、技術者の役目だと考えてきた。その結果、走る歓びとグローバルなCO2削減に貢献する環境性能をお届けするためには、内燃機関の効率を極めることが最も合理的な戦略であるとの結論に至ったのだ
どんなに難しい課題でも、こねくり回していけば自分の得意な領域に誘導でき、答えを導き出せるようになるのではないか
商品というものは、ユーザーに不便さを感じさせては絶対普及しないと思う
現状を疑って、チャレンジするのをよしとする風土に変える必要がある。トップが言ったことは疑いなく守るとか、自分たちが決めた基準を金科玉条のごとく守るためにコストを高くしているもの、開発期間を長くしているもの、お客様にとって有用な技術のポテンシャルを落としているものなど、ロスを生じさせているものがかなり転がっていると思える。不具合がぜんぜん出ていない領域の基準、素人には気づかないような商品性基準などは見直すチャンスがあると考えてもいいのではないか
先行開発の重要性がわからないような企業はやがて廃れる
商品開発を効率化しない限り、結局いつまで経っても将来に対する備えは二の次のままになる。だから、先行開発に人員は回ってこない。大きなチャレンジをする機会も持てない
世界一を目指さなければ、サラリーマンだっておもしろくない!
人をやる気にさせるには、そこにたどり着いたらどんなにいいことがあるかを示すのがいい。まず宝の山を見せるわけである。すると、それまで懐疑的だった人間も含め、みんなの目の色が変わる
みんなが「私の専門には、これだけの広がりがある」と自分のカタログに書けるようになればよいと思っている。そういう発想をした者で構成される組織でないと、他社には勝てないと思う。一日八時間仕事をするにあたり、その成果がいま見えているものだけでなく、また期待されている範囲だけでなく、どれだけ広げることができるか。作業量を増やせと言っているのではない。発想を広げることで、自分の成果がもっと多くの、もっと大きなことにも役立つと思えれば、充実感、達成感はより高まるはずだ。一度成功すればもっと高いところを目指すことになる
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『答えは必ずある 逆境をはね返したマツダの発想力』
人見光夫・著 ダイヤモンド社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478061548
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◆目次◆
序章 答えは必ずある
第1章 マツダ存続の危機
第2章 「できない」とは言わない
第3章 強烈な反骨心でソリューションを探る
第4章 俯瞰し、問題点を見抜く力
第5章 答えはいつだってシンプルである
第6章 常に全体最適を考える
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