【必読。アップル天才デザイナーの素顔】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822250709
本日の一冊は、スティーブ・ジョブズとともに、アップルユーザーの心をわしづかみにしてきた天才デザイナー、ジョナサン・アイブ(ジョニー)の素顔に迫った、注目のノンフィクション。
著者は、12年以上アップルを取材し続けるジャーナリストのリーアンダー・ケイニーです。
ジョナサン・アイブの生い立ちと、デザインセンス・思想に多大な影響を与えた銀細工職人の父マイク・アイブとのやり取り、彼が受けた教育と出会った人々、そしてスティーブ・ジョブズとともに世界を揺るがすデザインを手掛けるまでの軌跡が描かれています。
ジョナサン・アイブの天才性を感じさせるエピソードが盛り沢山で、通常なら飽きてしまいそうなものですが、その裏に隠された真摯な態度、そして美しい思想に思いっ切り魅了されてしまうのです。
ユーザーが思わず息を呑むアップル製品のデザイン思想がどうやって育まれたか、それがどう製品に反映しているのか、デザイン思考の組織を目指すには何が必要なのか、関係者の証言をもとに浮かび上がらせており、じつに読み応えのある一冊です。
<ソフトの時代だからこそデザインが重要になる>
本書からは、そのデザインに必要な思想とは何か、何がデザインの軸にあるべきなのか、大切なメッセージを学ぶことができます。
いくつか、ジョナサン・アイブのデザイン思想に触れられる部分を引用してみましょう。
<ジョニーは、あるべきものを正しく作ること、それが目的にかなっていることをいつも気にかけていた。彼の関心は、テクノロジーに人間味を持たせることだった>(グリナ─)
<絶対的な基準にこだわると、評価しにくい特徴や売り込みにくい品質が失われてしまう。コンピュータ業界は、感情に訴えるような目にみえない特質を見過ごしてきた。だが、僕がはじめてアップルのコンピュータを買った理由はそれなんだ。僕がアップルに入った理由もそこにある>(ジョニー)
<フロッピードライブがないことについて、ジョニーは言い訳を強いられた。「フロッピーの件でアップルとして答えることはできない。だが、僕個人はこう思う。先に進もうとすれば、置いていくものが出る。だれがなんと言おうと、フロッピードライブは、古臭い技術だ。批判は承知しているが、前進に摩擦はつきものだし、進化が段階的に起きるとは限らない>
文章だけで製品の美しさを感じさせてくれる著者・訳者の力量、アップルが創り出してきた伝説、そしてジョナサン・アイブの素朴で美しいデザイン思想…。
仕事は、本来美しいものだという原点に立ち返り、新年早々、心が洗われるような気がしました。
これはひさびさに「買い」の一冊です。
———————————————–
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
———————————————–
デザインとは、ただ電子基板に皮を被せて化粧を施すことではない。消費者にどんな商品を提供して、どう彼らの生活を変えたいかに思いを巡らせることである
簡単に化けの皮がはがれる他社の製品とは対照的に、アップルの製品は皮を一枚むくごとに「こんなところまでしっかり作り込んでいるのか。ここにまで思いを巡らせていたのか」と驚かされることが多い
「いつもジョニーとデザインについて語っていました。ふたりで道を歩きながら、マイクはいろいろな場所で違う種類の街灯を指さして、なぜ違うのかをジョニーに訊ねていましたよ。明かりがどんな
ふうにさすのか、天候がどうデザインに影響するかを聞いていました。周囲の建物や、身の回りの製品について、もっといい物を作るにはどうしたらいいか、そんなことをいつも語っていました」
(ラルフ・タッブラー)
「ジョニーはその頃から、製品にとってラインとディテールがいかに大切かを理解していました。高校生の頃からすでに今の携帯電話に近い、薄くて精密な携帯電話をデザインしていたんです」
(デイブ・ホワイティング)
触りたくなるデザインは、その頃すでにジョニーのトレードマークとなりつつあった(その後、アップル製品のデザインにも、ハンドルやその他の「触りたくなる」要素が取り入れられた)
「四度目の正直で、やっと来てもらえた。それが採用というものだ。すばらしい才能を見つけたら、手に入れるまで誘い続けるのさ」
(ブルーナー)
「絶対的な基準にこだわると、評価しにくい特徴や売り込みにくい品質が失われてしまう。コンピュータ業界は、感情に訴えるような目にみえない特質を見過ごしてきた。だが、僕がはじめてアップルのコンピュータを買った理由はそれなんだ。僕がアップルに入った理由もそこにある」(ジョニー)
フロッピードライブがないことについて、ジョニーは言い訳を強いられた。「フロッピーの件でアップルとして答えることはできない。だが、僕個人はこう思う。先に進もうとすれば、置いていくものが
出る。だれがなんと言おうと、フロッピードライブは、古臭い技術だ。批判は承知しているが、前進に摩擦はつきものだし、進化が段階的に起きるとは限らない」
ジョニーの回想は続く。「スティーブは常に問い続けていました。『これでいいのか? これが正しいのか?』と」。ジョブズの最大の勝利は、「皮肉に負けずみんなのために偉大ななにかを作ることを喜び、一〇〇回ダメだと言われても諦めなかったこと」
————————————————
『ジョナサン・アイブ』リーアンダー・ケイニー・著 日経BP社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822250709
————————————————-
◆目次◆
日本語版序文 林信行
主な登場人物
まえがき
1.生い立ち
2.イギリスのデザイン教育
3.ロンドンでの生活
4.アップル入社
5.帰ってきたジョブズ
6.ヒット連発
7.鉄のカーテンの向こう側
8.iPod
9.製造・素材・そのほかのこと
10.iPhone
11.iPad
12.ユニボディ
13.サー・ジョニー
謝辞
守秘義務と情報源
注記
この書評に関連度が高い書評
この書籍に関するTwitterでのコメント
同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)
お知らせはまだありません。