【話題です。】
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本日の一冊は、世界初のクロマグロ完全養殖、レストラン経営、ライブ会場のような入学式などで話題となった、近畿大学（近大）の経営に迫った一冊。

少子化時代に志願者数を伸ばし続け、ついに明治大学を抜いて志願者数日本一。560億円の借金を完済して純利益（正確には帰属収支差額）113億円（私立大学日本一）を達成した近大が、一体何をしたのか。

１年間で作成したプレスリリースの数が233本、うち記事となって掲載されたのは117本（掲載率50.2％）。

インパクトある広告とＰＲを展開する同社の手法からは、多くを学ぶことができます。

以下のポイントは、経営者、宣伝広報担当者、代理店の方が学んでおいて損はないと思います。

◆広告の「費用対効果」の測り方
ー＞志願者が増えるかどうか

◆広告出稿における三つの基本
・少々大学界の常識を逸脱したとしても、目立つ広告を出すこと
・大学名を隠しても近畿大学の広告であるとわかるような広告にすること
・クリエイティブを代理店に丸投げしないこと

◆広報の役割
「広報の役割は、メディアで取り上げられて終わりではないだろうと考えています。圧倒的な露出があって視聴者・読者に記憶されて、初めてＰＲになるのではないでしょうか」（広報担当　横山氏）

近大が行ったことは、財務改革、新学部創設、「エコ出願」、近大水産研究所のオープン、メディアＰＲなどいくつかありますが、その原点は、初代総長・世耕弘一氏のスピリッツなのだと強く感じました。

＜遠洋漁業だけが漁業ではない。沿海を開拓し、そこで魚を養殖すればいい。広い海を生簀に変えるのだ。海を耕すんだ＞（初代総長　世耕弘一氏）

本書を読む限り、近大は「たまたまメディアＰＲに成功しただけ」ではありません。

変化しつつある時代の新たな経営のあり方について、考えさせられる一冊でした。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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近大は2010年、新学部を設置した。狙いは、まさしく「女子の比率を高めること」。その実現に向けて「心理」「社会」といった女子に人気のある学科を含む「総合社会学部」を新設したのだった

「インパクトがあって最もわかりやすいのは、受験料の割引ではないかと考えました。そこでまず、ネット出願すれば3000円割引くことを決定した

完全ネット化は、約2500万円の経費削減効果をあげた。「近大エコ出願」は結果的に900人の志願者を増やし、その数は日本一になった

「不本意入学」者にエール

天才や秀才が研究し開発した独創的な原理や技術を、実際に社会の材に変えて上手に運用していくためには、実は多くの有能な中堅実力者が必要になります（中略）中堅実力者の宝庫になるという自覚を持ち、一人の天才より百人の中堅という分厚い中間層を育てていくことが、実学教育を掲げている私たちの重要な役割なのです

実は、天然と養殖の食べ比べという試みは、初めての仕掛けだった（中略）「近大水産研究所をオープンする時に、たくさん取材をしていただいたんですが、マスコミのみなさんから必ず出た質問があったんです。それは『天然マグロと近大マグロの味がどう違うのか』というご指摘でした」

「私が私が」と一人称で自己アピールする大学を社会は求めているだろうか。それより、第三者を介して伝わっていく第三者話法のほうが客観性を担保できる

ポスターにある、近大をぶっ壊している大きな拳は、実は卒業生であり元プロボクサーで俳優の赤井英和さんの手

「弱さ」とはいったい何だろう。それは、本当の弱さを正面から見つめようとしないことではないだろうか。目をそらし、弱点と向き合うことなく、問題を「ないことにしよう」とした時、弱さを克服していく道は閉ざされる

◆四代目理事長・世耕弘成氏が掲げた「三つの目標」
１．10年以内に「関関同立」に追いつき、追い越す
２．偏差値や大学のランクで測れない、次元の違う独自性を持った大学になる
３．世の中の役に立つ大学になる

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『なぜ関西のローカル大学「近大」が、志願者数日本一になったのか』山下柚実・著　光文社
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◆目次◆

はじめに　近大の「なぜ」には「理由」がある
第１章　志願者数トップの理由
第２章　近大マグロを誕生させた大学力
第３章　教育と経営が共存する秘訣
第４章　若者の心をつかむ情報発信力
第５章　近大が日本一へと躍進した原点
あとがき