2014年1月7日

『文系のためのエネルギー入門』リチャード・A・ムラー・著 早川書房 vol.3458

【文系ビジネスマン必読。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152094281

みなさんは、米同時多発テロで、世界貿易センタービルが崩壊したロジックを、正しく説明できるでしょうか?

また、2011年にソーラーパネルを最も多く製造したという中国が、生産できるとした「2ギガワット」の意味をご存じでしょうか?

本日ご紹介する一冊は、ビジネスマンが知っておくべきエネルギーの基礎知識を、カリフォルニア大学バークレー校の名物物理学教授、リチャード・A・ムラー氏がわかりやすく解説した講義本。

ユーモアたっぷりの講義と、生徒たちとの対話により、これまで新聞・ニュースで見聞きしていた曖昧な科学知識がすっきり理解できる、文系のための「お助け本」です。

<1馬力は746ワット>
<キロワット時は、1キロワットの電力を1時間使ったときのエネルギーの量>

などといった基礎知識にはじまり、さまざまな構造物のしくみや今後のエネルギー問題、環境問題のツボを、的確に解説してくれます。

たとえば、前述した世界貿易センタービルの倒壊について。

著者の解説は、こんな風に進みます。

<そうだ、本がある。これを1枚の紙で支えてみよう。(1枚の紙を垂直に立てて、その上に本を載せようとする)そんなばかなって思うだろう。紙にそんな強度はないって>

<それでは、ちょっとしたトリックを見せよう。こうやって紙を筒状にすると、どうだろう。紙は紙だが、簡単には折れないようになる。(紙を筒状にし、ホチキスで固定して立てる)ここに本を置くとどうなるだろうか。(本を載せても折れない)じつは、高層ビルはこの構造で建てられている。この構造なら、材料の鉄をかなり節約できるんだ。薄い曲面からなるこの建築構造はシェル構造と呼ばれる。これにより、高層ビルが曲がったり折れたりしないようにするわけだ。しかも低コストで造れる>

<だが、これを上から押していくと、どこかで折れてしまう。では、安全を保つためにどれだけの条件をつければいいのか。アメリカの建築業界が採用する基準は、必要な強度の2倍の強さと定められている>

<ビルを600℃まで熱するとどうなるか。600℃になると、鉄の強度は半分になる>

どうでしょう? じつにわかりやすい解説ですね。

本書では、このような解説があらゆるトピックに及び、地球温暖化の問題がどれだけ深刻なのか、今後有望な代替エネルギーは何か、シェールガスが現実化するにあたって政治的な課題は何か、さまざまな視点から「エネルギーの未来」を検証しています。

投資家目線で見ても、ビジネスマンの教養として見ても、じつに興味深い一冊。

これはぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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君たちがすべきなのは、何が重要であるかを理解し、その基準となる数字を覚えておくことだ

アメリカでは自動車に使う燃料をどうするかという問題がある。アメリカは膨大な量の石油を輸入しており、その額が貿易赤字の半分を占めている

アメリカのエネルギー省も、20年後には電力需要の20%を風力でまかなうようになると予測している

電気料金は1キロワット時あたり12セントだったね。それに相当する電池を近所の店で買うとしたらいくらかかるか。試しにこの近くの店で単3電池を探して、1キロワット時のエネルギーを供給するのにいくらかかるかを算出してみた。いくらになったと思う? 正解は、1000ドル

こうやって紙を筒状にすると、どうだろう。紙は紙だが、簡単には折れないようになる。(紙を筒状にし、ホチキスで固定して立てる)ここに本を置くとどうなるだろうか。(本を載せても折れない)じつは、高層ビルはこの構造で建てられている。この構造なら、材料の鉄をかなり節約できるんだ。薄い曲面からなるこの建築構造はシェル構造と呼ばれる。これにより、高層ビルが曲がったり折れたりしないようにするわけだ。しかも低コストで造れる

◆天然ガスのリスク
1.地域への環境汚染(水汚染)
2.地球温暖化

ソーラーパネルの2ギガワットというのは、最大発電量を指す。つまり、正午に太陽が真上からパネルに降り注いだときに得られる電力が2ギガワットということだ。では、夜はどうなる? 発電できないね。だから、平均すれば半分の1ギガワットになる

風速が2倍になると、発電できる電力量は8倍に上がる

国連は、およそ40年後の2050年に世界人口は90億に達すると予測している。だがもし、年2%でエネルギー効率を向上させたら、その人口すべてに必要な電力をまかなえる

クールルーフについても触れておこう。クールルーフとは、屋根に特殊な塗料を塗り、太陽熱の半分を反射させるものだ(中略)赤外線を100%反射できれば、エアコンは必要なくなる

天然ガスのほうがクリーンで安い。だから、切り替えたら石炭の仕事は全部なくなってしまうだろう。しかも、石炭産業が盛んなオハイオ州は、大統領選挙の勝敗の鍵を握る州だ。もしかしたら、大統領の任期の最後のほうで何か手を打つかもしれないね

アメリカでは広大な範囲の土地にシェールガスが眠る。こうした地域において、フラッキングとは1849年のカリフォルニアのゴールドラッシュのようなものだ。それが今回はテキサス州と、北東部のペンシルベニア州で起きた。バーネットシェール、ペルミアン盆地、イーグル・フォード。この3つの地域が世界で有名になりつつある

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『文系のためのエネルギー入門』リチャード・A・ムラー・著 早川書房
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/ 4152094281

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◆目次◆

第1回 君なら、どのエネルギー源を選ぶ?
第2回 クリーン・エネルギーを検証する
第3回 地球温暖化の真実
第4回 原子力を知る
第5回 エネルギーの未来──大統領に提言せよ

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