【世界一の模型メーカーに学ぶ。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167257033
本日ご紹介する一冊は、世界一の模型メーカー、田宮模型(現・タミヤ)の会長、田宮俊作氏による仕事論(模型論?)。
もともと1997年に発売された『田宮模型の仕事 木製モデルからミニ四駆まで』を文庫化したもので、2000年に出されて以来、13年のロングセラーとなっています。
空襲により父の事業が焼失し、借金の取り立てをしながら学んだ苦学生時代、プラモデルとの出合い、「戦艦武蔵」の大赤字、そして日本一のイラストレーター小松崎氏を迎えての大逆転劇…。
事業の醍醐味やドラマが、びっしり詰まった内容となっています。
著者は、人気イラストレーターの小松崎氏しかり、ホンダF1チームの初代監督、中村良夫氏しかり、模型を愛する人々に何度も助けられるわけですが、仕事において、「志」や「愛」「ドラマ」が人を動かすのは、事実だと思います。
今のような変革の時期、必要なのは小賢しいノウハウ書ではありません。
読者に内省を促し、どんな困難に直面してでもやりたい事業を見つけるきっかけを与えてくれる本が必要なのだと思います。
その点、本書は古くても、まさに今読み直されるべき一冊。
タミヤのモノ作りの視点、模型へのこだわり、ぜひ感じていただきたいと思っています。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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私の会社は製材から販売までを一貫してやっていたため、簡単にプラモデルに切り替えることができず、完全に出遅れてしまいました
ひとつひとつの戦車、飛行機、艦船などの背景にはさまざまなドラマ、夢、歴史が秘められている
模型づくりの楽しさとは実物の背景にある物語をそれぞれの人が新たに読み解くことにある
高校卒業後、東京の大学に行かせてもらいましたが、父から条件をひとつつけられました。「いま、うちの経済状況は苦しいから生活費は出せない。東京の取引先の会社に債権があるから、そこに集金に行け。最初の二年間はその金で生活しろ」というのです。まさか十代で、借金の取り立てを経験することになろうとは、思ってもみませんでした
(パンサー戦車の箱絵が小松崎先生の絵だったら、もっとよく売れるのではないか)私は、以前からパッケージの重要性に着目していました。子どもたちが、どこを見て模型を選んでいるのか。もちろん値段や種類も大切な要素ですが、箱絵に描かれた世界に引かれて手をのばすのではないかと思っていたのです
あらためてふりかえってみますと、約三十五年前のあのころに金型部を発足させておいて、本当によかったと思います。自社に金型技術があるのとないのとでは大違いです。父も私も機械好きということもあり、設備投資は惜しみませんでした
結果としては、この小さなジオラマのほうが大作のジオラマより、だんぜん注目を集めました。あまりに大きすぎるものはどこを見てよいのかわからず、作意がボケてしまうのです
いわゆる大衆車を模型にして発売しても、さほど売れないのです。それは大衆車にたいしての「あこがれ」が弱いからです
なによりも大切なのが、組み立てるお客さんの立場になって設計しているかどうかです。これは「組み立てやすい」ということだけではありません。組み立てていく過程が楽しいかどうかです
われわれの商品は、売りっぱなしではいけない。タミヤの模型はお客さんが買ったあと、ちゃんと楽しんでもらえているかどうか、その満足度を調べなければならない
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『田宮模型の仕事』田宮俊作・著 文藝春秋
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◆目次◆
第一章 木製模型との幸せな出会い
第二章 泣く泣くプラモデル製作に転向する
第三章 プラモデルは金型が命
第四章 取材こそ模型づくりの基本
第五章 とことんやるのがホビーの世界
第六章 山あり谷ありミニ四駆の十八年間
終 章 一外国人の見たタミヤ模型──二十一世紀のタミヤ
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