【エンデがくれた、善く生きるヒント】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4006022220
本日の一冊は、作品を通して現代人にさまざまな疑問を投げかけた作家、ミヒャエル・エンデの遺稿集。
着想を書きとめたメモや創作ノート、詩や芝居、文明批評、児童文学に関する見解、生い立ちを綴ったエッセーなど、さまざまな文章がごった煮になっています。
読んでいて刺激を受けるのは、その痛烈な批判精神。
著者は、「科学的啓蒙」が生み出した現在の世の中に対し、こんな批判を加えています。
<文明砂漠で合理性や科学的啓蒙とよばれるものは、理性や誠実さが健全な人間に要求するのとちょうど反対のものを生み出したように思われる。そこに見るのは、かれらの科学的啓蒙が天や地や河川を汚染することだ。そこに見るのは、かれらが心身ともに滅びることだ。そこに見るのは、かれらの認識作業が頂点にあるとき、この世界の全生命を一度どころか数度も殺せるような爆弾を造ったことだ>
合理性やマーケット至上主義を嫌った著者ですが、クリエイターとして売れるための条件はきっちり押さえていたらしく、こんなコメントも残しています。
<もし君が現代の文化界で、できるだけ早く名を売り、市場価値を得たいなら、なによりも次の三つの規則を大切にするんだよ。その一 メディア社会に生きているという事実に、いつも留意すること。だから、芸術のどの分野で天才として仕事をするかを決める前に、君のアウトフィットを考えるんだ(中略)その際にいつも大切なのは、君のアウトフィットがどこか“嫌な感じ”を与えることだ(中略)その二 芸術や文化理論的な意志表明に、ちょっとは労力を投じなきゃいけない。そのとき注意がいるのは、君がやることより、その根拠のほうが重要だということだ。世間で議論できるのはそれだけなんだからね。君の“ステートメント”は短く、あつかいやすくあるべきだ。テレビやラジオの文化番組で、応答が三分間でできるようにね>
資本主義の仕組みのなかで勝利することができたとしても、そこに拘泥して本来の生きる目的を失ってしまったら、本末転倒。
そうならないために、本書を読んで、偉人エンデの思索の世界にどっぷり浸かることをおすすめします。
これは、興味深い一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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科学的啓蒙により、命の地下水を涸らされた者たちの多くは、ひたすら不可思議なものへの、どうしようもない渇望をおぼえるのだ
文明砂漠で合理性や科学的啓蒙とよばれるものは、理性や誠実さが健全な人間に要求するのとちょうど反対のものを生み出したように思われる。そこに見るのは、かれらの科学的啓蒙が天や地や河川を汚染することだ。そこに見るのは、かれらが心身ともに滅びることだ。そこに見るのは、かれらの認識作業が頂点にあるとき、この世界の全生命を一度どころか数度も殺せるような爆弾を造ったことだ
今日児童文学とよばれるものは十九世紀初頭に源を発する。それ以前にはおとぎ話があったが、それはけっして“子どもたちのためだけ”ではなかった
もし君が現代の文化界で、できるだけ早く名を売り、市場価値を得たいなら、なによりも次の三つの規則を大切にするんだよ。その一 メディア社会に生きているという事実に、いつも留意すること。だから、芸術のどの分野で天才として仕事をするかを決める前に、君のアウトフィットを考えるんだ(中略)その際にいつも大切なのは、君のアウトフィットがどこか“嫌な感じ”を与えることだ(中略)その二 芸術や文化理論的な意志表明に、ちょっとは労力を投じなきゃいけない。そのとき注意がいるのは、君がやることより、その根拠のほうが重要だということだ。世間で議論できるのはそれだけなんだからね。君の“ステートメント”は短く、あつかいやすくあるべきだ。テレビやラジオの文化番組で、応答が三分間でできるようにね(中略)その三 残念ながらまったく“作品”なしというわけにはいかない
時が計れる、つまり日、時、分にわけられるという事実が、実は時間が──数学的に見て──無限でない証拠である
基準の喪失から、“新しい芸術原理”をつくりだすことはできない
悪用されるおそれのない信頼というものがあるだろうか?
知識はある程度“客観化”できるが、尺度はいつの世でも教える者の人格から切り離せない
社会批判というものは、共通の価値を、つまり人類の価値を前提とします。この価値をつねに新しく生み出すことこそ、詩人が負う課題なのです
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『エンデのメモ箱』ミヒャエル・エンデ・著 岩波書店
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4006022220
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◆目次◆
よくある幽霊ばなし
ニーゼルプリームとナーゼルキュス
愛読者への四十四の問い
死と鏡─メルヒェン
木の言語
発明しない者への讃歌
これもまた根拠です
アンルラ
クエスト
魔法の時計(ほか)
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