【柳井正、渾身のメッセージ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569806929
本日の一冊は、ファーストリテイリングの代表取締役会長兼社長、柳井正さんが、現在の日本の政治、経済、労働意識をぶった切り、日本人を叱咤激励した問題作。
「清貧の思想」や「求めない生き方」を<およそ馬鹿な話>と切り捨て、<もっと豊かになりたいと思うから、人は創意工夫し、努力を重ね、成長する>と喝破していますが、そこには、著者自身の強烈な原体験がありました。
お話は、日本のある炭鉱の町が辿った歴史から始まります。
その炭鉱は、1960年代に起こったエネルギー革命の影響で閉山に追い込まれました。
本書から、ちょっと引用してみましょう。
<炭鉱労働者で成り立っていた町からは、徐々に住民が去っていき、小学校も廃校。やがて町全体が消えてなくなった。閉山によって、その都市の人口は激減した。山口県宇部市。私の生まれ故郷である>
当時中学生だった著者のクラスからも、何人もの同級生が出て行き、著者はこの体験をもって、以下の意識を持ったそうです。
<成長しなければ、即死する──>
この意識が「世界のユニクロ」を育てたわけですが、この<成長しなければ、即死する>という考え方は、まさに現在のグローバルビジネスの本質だと思います。
本書のなかで著者が述べているように、<現在のビジネスはどの業界でも、世界ナンバーワンでなければ儲からない構造になっている>。
では、日本企業が世界でナンバーワンになるために、われわれビジネスマンはどんなマインドを持ち、どう行動していけばいいか。国はそれをどう支援していけばいいか。
本書には、そのヒントが書かれています。
中国大陸から泳いで香港に渡り、巨大SPAを創設したジョルダーノの創設者、ジミー・ライ氏、靴屋の店番から身を起こし、フィリピン最大の財閥になろうとしているSM社の女性社長、テレシタ・コソン氏など、日本人が知らないグローバルビジネスマン、グローバル企業の横顔を紹介しながら、現在起こっている競争の本質を説いており、じつに刺激的な内容です。
また、太平洋戦争、東日本大震災を含む強烈な政策批判、税制批判。およそ死期が迫っている人でもなければ書けない大胆な内容で、正直、ビックリしました。
後半では、日本の偉大な起業家たちのエピソードと若者へのメッセージをまとめており、こちらも読んでいてモチベーションが上がります。
<サラリーマン社会のなれの果て>と著者が説く、現在の日本人のていたらくぶりに、喝を入れてくれる一冊。
これはぜひ、読んでおきましょう。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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この国には一億三〇〇〇万の人間を食べさせていける資源などない。だから日本人は必死に働き、知恵を絞って付加価値を生み出し、稼いだお金で生活を成り立たせてきた
重要になるのは「職人気質」ではなく、「商品気質」
現在のビジネスはどの業界でも、世界ナンバーワンでなければ儲からない構造になっている
その国でナンバーワンの人材が「入社したい」と言ってくれる企業にならなければ、並みいる強敵を抑えてトップに立つことなどできない
稼ぐ人も、稼がない人も一様に食べられる社会からは、確実に活力が失われる
いまの日本は、資本主義の精神を忘れたサラリーマン社会のなれの果て
「入るを量りて、出るを制す」。つまり収入をきちんと勘案して、支出をしっかり抑えることが、事業を立て直す基本である
どうしたら学生の就職内定率が上がるか、ではなく、どうしたら世界で戦える人間を一人でも多く輩出することができるか──。それこそ厚生労働省の考えるべき課題ではないか
「生きる」というのは、そもそも「求める」ことだろう(中略)「求めない生き方」は、自らの可能性を閉ざし、人間性の否定にすらつながる。およそ馬鹿な話だと思う
売れる商品というのは、国や地域に関係なく、世界中どこでも同じ。これが悪戦苦闘しながらグローバル化を進めるなかでつかんだ、一つの真実である。いい商品というのは、買った人が自分で使い方を考えてくれる
戦うのなら、「勝ち戦」をすること
永守氏は、「工場の再開が遅れれば、それだけ多くの人に迷惑がかかる。タイの従業員も、工場が動かなければ、お金が入らない。なるべく休ませずに働かせてあげたほうが、すべての人にとってメリットがある」と判断した
松下は「(企業経営では)五%よりも、三〇%のコストカットのほうが容易」という。そうしなければ会社が潰れるという状況になれば、従業員も必死で方法を考える
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『現実を視よ』柳井正・著 PHP研究所
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◆目次◆
プロローグ 成長しなければ、即死する
第1章 いまやアジアは「ゴールドラッシュ」
第2章 「資本主義の精神」を忘れた日本人
第3章 政治家が国を滅ぼす日
第4章 あなたが変われば、未来も変わる
エピローグ 二〇三〇年・私が夢見る理想の日本
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