【中華の鉄人・陳建一、初のビジネス書】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492044752
本日の一冊は、かつて人気料理番組「料理の鉄人」に出演していた四川飯店グループの代表、陳建一氏による初のビジネス書。
「料理は段取り」とはよく言ったもので、料理を題材にしたビジネス書も、過去あるにはあるのですが、面白いものにお目にかかったためしがない。
それはおそらく、ビジネスマンが「料理ってビジネスに似てるよね~」なんて感覚でこじつけで作った本が多いからではないでしょうか。
本書の著者、陳建一氏は、父建民氏の後を継いで四川飯店グループのトップに就任し、現在400名の従業員を抱える正真正銘の経営者。
一流の料理人ですが、ビジネス書もよく読む方らしく、本書の根底には、ビジネスマンとしての基本と心構えが感じられます。
<僕の中には、一流も二流も三流も存在しない。一流というのを決めるのはお客さまだ>
この言葉からもわかるように、徹底した顧客第一主義で、ミスをなくすしくみから、良い料理を作るための段取り、さらにはスタッフ育成のステップまで、すべてを手順・段取りにして、本書で紹介してくれています。
最初の半年間はホール、三年目になって初めて点心を担当、続いてホールから入ってきた伝票を読み上げる係、実際に料理を作り出すまでに約10年という同社の教育システムは、「一連の流れをつかむ」「お客様の喜びを知る」など、各ステップそれぞれ思想があり、同業ならずとも、参考になると思います。
著者のやり方で感銘を受けたのは、心を込めるべきところでは、きちんと手間ひまをかけ、お客様を喜ばせようとするところ。
・「手作りを崩すな」(=「面倒くさいことを喜んでしろ」)
・「麻婆豆腐を混ぜるときは小指を立てて」(=「優しさを伝えなさい」)
・食べにくい料理を女優さんに出す場合には、包丁であらかじめ切れ目を入れておく
など、その細やかな心遣いには、素直に頭が下がります。
テーマは「段取り」ですが、ホスピタリティを学ぶ本としても、経営書としても、楽しめる一冊。
ぜひチェックしてみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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人の感性はみなそれぞれ違うから、人数が多くなればなるほど誤差が生じてしまう。だから、僕は必ず「何グラム」という指示の仕方をしている
「申し訳ございません、鮎が逃げてしまいました!」
(350人の宴会で100匹鮎が足りなくなった時のジョーク)
当初の段取りが達成できないという事態が生じた場合には、瞬時に考えて行動を切り替えていく
四川飯店の三代目となる息子の建太郎や、その周りの料理人たちに、以前から言い続けていることがある。それが、「手作りを崩すな」ということ。これは、「面倒くさいことを喜んでしろ」と言っていることでもある
絶対に譲れない流儀を曲げてまで、既存の段取りに従う必要はない
僕はスタッフの指導でも、「麻婆豆腐を混ぜるときは小指を立てて」と言っている。これは、実際に小指を立てて調理をしろということではない。「優しさを伝えなさい」という意味だ
父も僕も共通して仕事の根幹にあるのは、「お客さまに最高の状態で料理を出したい」という思いだ。それが最優先で大前提。料理をしている自分の気分が良いからとかそういうことは関係ない。それは料理人としては間違えてはいけないところだと思う
「品質がとても良い」と評判になっているモヤシ工場へ足を運んだ。すると、品質の良いのはモヤシだけではなく、そこで働く従業員の方たちもみなモヤシ以上に生き生きとしていた
少し食べにくい料理を女優さんに出す場合には、包丁であらかじめ切れ目を入れておくこともした。「女優さんだったら、カメラの前で大きな口を開けて食べるところは見せたくないだろうな」と、大きなお世話とは思いつつも、そういった配慮を心がけていたのだ
「怒っていると塩が多くなる」なんていうのは意外と本当のことで、やっぱり怒っていていい料理は作れない
つらくて損な場面こそ微笑せよ
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『「段取り」の鉄人』陳建一・著 東洋経済新報社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492044752
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◆目次◆
第1章 大きなプロジェクトでこそ、段取りが磨かれる
第2章 日々成長していくための段取り
第3章 一流のサービスは、こうして作る
第4章 プロを育てる段取り
第5章 段取り上手な組織を作る
第6章 自分らしい生き方のための段取り
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