【元・世界銀行副総裁のメッセージ】
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本日の一冊は、元・世界銀行副総裁、西水美恵子さんがつづったメッセージ集。
もともとは、電気新聞の連載コラム「時評ウエーブ」をまとめたもので、氏が世界中を巡って感じたリーダーシップの問題を3~4ページでつづった内容が、計48収められています。
日本の政治への批判や、観光立国への取り組みへの批判など、マクロのトピックもたくさん入っていますが、そのほとんどは、根っ子にあるリーダーシップを論じています。
無意識の差別意識に気づくこと、マイノリティの立場に意識を向けること、人々の幸せを第一に考えること、腐敗を防ぐこと…。
書かれていることのほとんどは、何らかの本に書かれていることですが、著者がそこに至った過程のエピソードが興味深い。
おねしょが止まらなかった女性職員の子ども(小学生)を出張に同行させたら、意識が変わり、成績が上がった話、毎年醜い予算争いをしていたチームが変わった話、ブータン国王から学んだこと、そして「権力は腐敗しがちであり、絶対権力は絶対に腐敗する」という名言を遺したアクトン卿の言葉…。
興味深いエピソード満載で、なかには思わず涙を誘われるものも含まれています。
タイトルの『あなたの中のリーダーへ』も相まって、背筋がピンと伸びる一冊です。
ぜひ、以前おすすめした『自省録』と併せて読んでみてください。
※参考:『自省録』
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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世界銀行の部下に意思が伝わらず、悩んだ昔を思い出す。相談にのってくれた経営コンサルタントに「悩むと損」と、笑われた。「人間の耳は選り好みをするし、自分に都合よく聞き取るようにもできている。だから、何事も繰り返すこと。壊れたレコードのようにね。自分自身に聞き飽きて、うんざり諦めかける頃、やっと通じるものなのだ」。半信半疑で試してみたら本当で、人の上に立つのは難しいと、心底感じ入った
人口減少を目前に「労働人口が減るから困る」と騒ぐ財界人が多い。可能労働人口の大半を無駄にして何を言うのかと、呆れる。ガラスの天井や差別待遇に何人の女性が働く意志をなくしたことか
ちなみに「グリーン車」の名付け親は、世銀。料金設定を手伝う世銀職員が、「一等車」は身分階級を匂わすと嫌う国鉄チームの民主精神に感激し、考えたらしい
「金貸し」に執着する銀行は、いつか潰れる。良い仕事を続ければ融資要請は探さずとも出て来る
嫌なことにぶつかると、夢を膨らます糧となる
リーダーのDNAに染まりすぎたら、持続的な意識改革にはならない
人事のすべてについて、職員のみを対象とする思考を捨てた。家庭を対象に入れ、人間としての幸せを考えるようになった。職場でも家庭でも同じ人間。どちらかが不幸せならもう一方に響く。働きがいと生きがいがつながって初めて、人間の「生産性」が大きく変わる
◆パワー・スピーチの技法 ※一部紹介
・始めは単刀直入に力強く
・声量を下げる。耳はうるさい声を避け、静かな声に聞き入る
・沈黙も語彙の内
・言葉で絵を描く。人間の脳は物語や、実例、色などに正反応して、覚えがよくなる
道義なしの解雇は組織を駄目にする
「自由とは好きなことをする権力ではなく、為すべきことができる権利である」(雷龍王四世が好んだアクトン卿の言葉)
成す術はなくても、夢を見るのはいいものだ。おかしな夢を追う人だと笑われることが多く、それが却って夢を膨らます糧となる
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『あなたの中のリーダーへ』西水美恵子・著 英治出版
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◆目次◆
第一部 本気のリーダー 本気の仕事
第二部 私たちのリーダーシップ 私たちの国づくり
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