【スティーブ・ジョブズが選んだ工業デザインの第一人者】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798121169
本日の一冊は、世界トップレベルの工業デザイナーであり、あのスティーブ・ジョブズも認めた男、ハルトムット・エスリンガーによる、デザイン戦略の本。
アップルやディズニー、マイクロソフト、GE、モトローラなど、世界の名立たる企業がデザイン戦略を相談しに来るというデザイン戦略家が、ビジネスにおけるデザインイノベーションをどう考えているのか。
…じつに読み応えのある一冊です。
学生時代に今や業界の標準となった電波時計を創り出し、その後、フロッグデザインを起業。
マッキントッシュ大ブレイクのきっかけとなったアップルのデザイン言語「スノーホワイト」を考案し、さらには、「手ごろな価格の贅沢品」というコンセプトでルイ・ヴィトンの世界戦略に一役買った…。
この実績だけでも驚きますが、その思想と戦略、ノウハウはさらに面白い。
「世界はフラットではない」「戦略的に予備を持つ」「融合製品の開発に力を入れるべき」…。
原書が出されたのは2009年6月ですが、ここで書かれていることは、まさにこれから起こること、使える考え方と言っていいと思います。
どうすればデザイン会社やコンサルティングファームを成功させることができるのか、という話も書かれているので、少なくともデザインファームのオーナー、デザイナーは必読。
もちろんデザインでイノベーションを起こしたい経営者、ビジネスパーソンにもおすすめの一冊です。
ぜひ読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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わたしは消費者に美しさと使いやすさゆえに愛してもらえる工業製品を作りたかった。そしてわたしを含めたすべてのデザイナーが、自分で自分の進むべき道を決めるべきであり、雇い主に言われるまま、使い古された陳腐なアイデアにきれいな新しい衣装を着せる役割に、甘んじるべきではないと考えた
アップルの創造的な戦略の成功―そしてそのほかの数多くのフロッグのクライアントの成功―が示しているのは、多くのビジネスリーダーたちの考えとは裏腹に、世界はフラットではないということだ。世界は多様な文化のからみあった「球体」であり、それぞれの文化にはそれぞれにちがったニーズや要望がある
誰も定価で買おうとしないありふれた製品―供給過剰の状態ではなおさらそうなる―ではなく、人間に合わせた製品を生み出すのが、創造的な戦略だ
古代ローマの偉大な戦略家カエサルは、どれだけ苦しい状況に追い込まれても、軍隊には予備軍が必要だということを知っていた。元気な部隊をひそかに温存しておいて、戦闘が激化したとき、その部隊を送り込むというのが、カエサルの有名な「第四列」戦略だ
主戦場を決めるにあたっては、自分が得意にしていて、他人が得意にしていない分野を探した。そして見つけたのが、電子テクノロジーという分野だった。わたしはエンジニアの勉強をしていたおかげで、電子テクノロジーの理論や製法については、ほかのデザイナーより詳しかった
イノベーション企業には、共通する特徴がある。それは財務的に健全で、むだがないということと、リーダーが好奇心旺盛で、絶対あきらめない人間だということ(これがいちばん肝心)だ
わたしは部下に機械的な発想とはちがう、創造的な発想を理解させるため、目の前で安いティーポットを叩き割って、その破片で新しいものを作らせるということをよくする(もとのティーポットを再現するのでは、創造的な行為にはならない)。新しいアイデアはたいがい、目の前にあるものの中に隠されているので、肝心なのは、それを見つけられるかどうかだ
これからの発想は「これは売れるか?」ではなく、「欲しいと思ってもらえる製品を、どのようにデザインしたらいいか?」だ。そしてこの問いに答えるためには、消費者がクリエイティブな製品を欲しがるだけでなく、製造方法の倫理性や持続可能性にも目を向けていることを、忘れてはならない
わたしたちデザイナーは、融合製品の開発に力を入れるべきだ
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『デザインイノベーション』ハルトムット・エスリンガー・著 翔泳社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798121169
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◆目次◆
1.デザイン主導の戦略 創造的な経済の主役
2.真のうそ イノベーションにおけるリーダーシップの役割
3.勝つためのデザイン 創造的なビジネス戦略
4.頼りになるのは金より人間 イノベーションプロセスの三ステップ
5.ビジネスデザイン革命 地球緑化会社
6.よりよいビジネス、よりよい世界のためにデザイン主導の戦略を
7.工場
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