2009年8月4日

『名言の正体』山口智司・著 vol.1842

【大人のやり直し偉人伝】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4054042295

本日の一冊は、長い間独り歩きして誤解を生み続けている古今東西の「名言」の数々に、出典をもとに解釈を加えた一冊。

「誤解された名言」「カットされた名言」「誇張・捏造された名言」といった分類で紹介されているのですが、まあ、よくもこんなに間違って伝わっているものだと、呆れてしまいます。

しかも、登場するのは、

「天才とは、99%の努力と1%のひらめきである」(エジソン)
「芸術は長く人生は短し」(ヒポクラテス)
「初心忘るべからず」(世阿弥)
「児孫のために美田を買わず」(西郷隆盛)

といった、あまりに有名な名言の数々。

われわれが普段使っている、「狭き門」や「目から鱗」といった言葉も、これほど間違って使われていたのかと驚くばかりです。

名言は、その時々のイデオロギーや、人間が美しいと思う形、人物への偏見など、都合の良いように歪められるようで、たまにこうした本を読んで正しい教養を得るのは重要なことだと思います。

また、偉人たちが本当に伝えたかったことに触れることで、また新たな気づきを得ることもできるでしょう。

ビジネスマンの教養として、またメディア人の常識として、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「天才とは、99%の努力と1%のひらめきである」(エジソン)
エジソンが伝えたかったのは実は、「努力すること」ではなく、「ひらめきを大切にすること」だった

「芸術は長く人生は短し」(ヒポクラテス)
「医術を修めるには長い年月を要するが、人生は短いから勉学に励むべきである」というのが、本来ヒポクラテスが言いたかったことだ。言い換えるならば「少年老い易く学成り難し」というわけである

「狭き門」(マタイ伝)
本来の意味ならば、希望者が殺到する有名大学や一流企業は「狭き門」であるはずがない。それは誰もが目指す、わかりやすい、大きな門だ。そうではなく、誰も見つけないような、地味で狭い門こそ、天国の救いに至る門なのだ、と聖書は説いている

「酒は百薬の長」(『漢書』「食貨志」)
酒の健康効果を高らかに謳った言葉ではなく、「塩と鉄と並ぶほど重要なものだから国が専売する」という経済政策を発表したに過ぎない

「初心忘るべからず」(世阿弥)
世阿弥がここで言いたかったことは、「若い頃の未熟な芸や、年齢ごとの芸の初めての境地を忘れるな」ということだった

「武士道と云ふは、死ぬ事と見つけたり」(山本常朝)
生死のこだわりを捨てること。いつでも死ぬ覚悟の前提として、「いつでも死んでいる」という意識を持つこと。そうすることで、毎日毎日を大切にして最高のものにしろ、と山本常朝は伝えようとしていた

「児孫のために美田を買わず」(西郷隆盛)
西郷が言いたかったのは、「子孫を堕落させないために、財産を残さない」といった小さなことではなく、「志を果たすために、すべてのものを犠牲にせよ」ということだった

「和をもって貴しとなす」(聖徳太子)
「人々の意見が異なるのは当たり前だ。だれもが仲間の利益をまず考え、また物事の道理をわきまえた人は少ないのだから。意見が違うからといって、争ってはいけない。互いに穏やかな気持ちで話し合いなさい。そうすれば、道理の通った合意に達することができ、どんなことでも可能になるのだ」と書いている

「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない」(マリー・アントワネット)
アントワネットが生まれる以前から、この言い回しは、「庶民の苦しみを知らない高貴な者たち」への皮肉として使われていた(中略)晩年、マリー・アントワネットは、次のような言葉を残している。「不幸になって初めて、人は本当の自分が何者であるかを知るのです」

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『名言の正体』学習研究社 山口智司・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4054042295
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◆目次◆
はじめに
第1章 誤解された名言
第2章 カットされた名言
第3章 誇張・捏造された名言
第4章 「お前が言うな!」と言いたい名言、
「そこまでやらなくても」と言いたい名言

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