【経済学的に見た人命の価値とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862381324
本日の一冊は、オハイオ大学で経済学を教えるハロルド・ウィンターが、費用と便益のトレードオフを論じた、注目の一冊。
人気翻訳家の山形浩生さんが翻訳を担当しており、巻末には氏の解説もついています。
人命の価値を見積もる、なんて言ったら、社会通念的には問題となりますが、確かに著者の言う通り、現実の政策や企業活動は、費用/便益のトレードオフで動いており、人命に無限の価値を認めてはいません。
本書でも提示されているように、もしあなたが500万ドルの予算を持っていて、昏睡状態の子供を1人、最大1カ月生かしておけるとして、同じ予算で10人の病気の子どもの命を救えるとしたら、どちらを選ぶだろうか?
著者の母親が答えたように、両方救う、という考えがあってもいい。しかし、その場合には、やはり1人を救えるお金で、さらに10人の病気の子どもを救うことができる。
読者が好むと好まざるとにかかわらず、公の場では、人命すら費用便益の観点から論じられてしまうのです。
本書を読んでわかるのは、相手が国であれ、優良企業であれ、あなたにサービスをするのに何らかのトレードオフを考えて提供しているということ。
つまり、完全に健康な食品もなければ、絶対に安全な椅子もない。さらに言えば、戦場に赴いて捕虜になっても、国が保護してくれる保証もないということです。
これを認識し、賢い消費者になれるだけでも、本書を読んだ価値があると言えるのではないでしょうか。
人道的にはどうかと思う内容ですが、ロジックを学ぶという意味では参考になる一冊です。
政策担当者、企業経営者は読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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緊急病棟が混雑しすぎているときには、支払い能力がなかったり保険が不十分だったりする患者の受け入れを拒否してもいいことにしたほうが、社会政策として賢明じゃないか
経済学者は、社会便益と社会費用の差を最大化すること、あるいは通常、社会的厚生(または社会の富)を最大化することだけしか考えないことが多い
もしフォード社がピントの設計で11ドルの変更を加えていたら、女の子たちの命は助かっていたかもしれないのだった。さらに、フォード社はこの事実を十分に知っていた。かれらのエンジニアたちは、まさにこうした事故が起きたときの人命損失を金銭換算して、費用便益分析をやっていたからだ。その分析の結果、フォード社はその変更を加えるよりも、被害者に損害賠償するほうが費用対効果が高い、という結論を出した
人命に無限の価値をおくのはばかげている。もしそんな極端な議論をしたら、自動車の本当にまともな安全策とは、一台も生産しないことになってしまう
人命の価値を低く設定しすぎたら、多くの安全対策は費用対効果が低いということで実装されない。高く設定しすぎると、安全対策だらけになってしまう
ぼくが初めて受けた経済学の講義では、教授は経済学というのは希少な資源の分配についての学問だと述べた。資源が希少でなければ、みんな欲しいものがすべて手に入ることになる――トレードオフなんか考えずにすむ
取引費用が高いと、取引の利得が活用されないことがある。情報費用と取引費用は、しばしば「市場の失敗」と呼ばれるし、市場以外のやり方で資源を配分する手法を正当化するものとして挙げられることも多い
泥棒はほとんどどんな文脈でも、経済学的に効率的なのだ
たくさん企業のいる競争市場では、価格は変動費近くにまで下がる
負の外部性とは、個人の私的な行動が、別の個人にコストをかけるということだ
人は他人のものよりは自分のものを大事に扱うことが多い。所有権はそれ自体として人のふるまいに影響する
HIV陽性だと思っていたのに実は陰性だった人々は、性的パートナーの数を増やした(中略)HIV検査を補助すると病気の拡大を増やすことはあり得る
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『人でなしの経済理論』バジリコ ハロルド・ウィンター・著
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◆目次◆
はじめに――ぼくの世界へようこそ
謝辞
1.社会問題へのアプローチ
2.人命の価値っていかほど?
3.取引しようか?
4.おまえのものはオレのもの
5.持っているなら吸ってはいかが
6.人に迷惑をかけないとは?
7.規制と行動の変化
8.警告――製品に注意
9.解決策などない?
訳者あとがき
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