2007年6月19日

『ウィキノミクス』

【】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/482224587X

本日の一冊は、シンクタンク兼コンサルティング会社「New Paradigm」のCEOとして活躍、日本では『デジタル・エコノミー』や『bウェブ革命』などの著書で知られるドン・タプスコットが、これからの新たな商品開発のあり方「ウィキノミクス」を提唱した一冊。

ウィキノミクスは、世界中の人々がコラボレーションすることで展開されるまったく新しい経済・モノづくりのあり方ですが、この背景には、「情報技術が普及して、コラボレーションや価値の創出、競争が行えるツールをだれでも使えるように」なったことがあります。

これにより、「普通の人々が革新や富の形成に参加できるようになった」わけですが、このインパクトは、本書をひも解くまでもなく、「ウィキペディア」や「リナックス」「セカンドライフ」の成功でみなさん感じていることでしょう。

本書では、それらの議論を一歩進めて、アメリカで話題になっている各種サービスの概要と、企業がオープンなコラボレーションを採用した事例を取り上げ、ウィキノミクスの新たな可能性を探っています。

本書によると、IBMやP&G、ボーイング、レゴ、BMWなどは、既にこのウィキノミクスの恩恵を受けており、それぞれ新製品の開発や発展、そして開発のコスト削減に大きな効果があったと報告されています。

アメリカの最新事例を盛り込んだレポートだけでも十分魅力的ですが、本書が明らかにした最大のポイントは、インターネットが単なる情報チャネルではなく、巨大な「マスコラボレーション」の場だということ。

出版はじめメディアビジネスにとっては、本当の脅威がすぐそこまで来ている、といったところでしょう。

これからのビジネスチャンスおよび世界の変化を感じる上で、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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二〇〇〇年三月、総額五七万五〇〇〇ドルの賞金を、すぐれた方法
と評価を提出した人々に与えるとして「ゴールドコープ・チャレン
ジ」が開始された。二〇〇平方キロメートルあまりの広大な地域に
関するすべての情報を、ゴールドコープのウェブサイトで公開。こ
のニュースはすぐにインターネットで広まり、一五カ国、一〇〇〇
人以上が地質データと格闘し始めた(中略)鉱脈の存在が示唆され
た場所は一一〇カ所、その半分はゴールドコープが気づいていない
ものだった。また、その八〇%で実際に大量の金が発見された

P&Gでは、すでに退職した、失業中の、あるいは高い志を抱いた
化学専攻の人物を求めている。この業界ではここ五年間で開発ペー
スが倍になり、七五〇〇人というP&Gの研究員だけでは業界をリ
ードすることが困難になってしまった

ウィキノミクスには、四本の柱がある。オープン性、ピアリング、
共有、グローバルな行動である。この四大原則が、古いビジネス教
義を駆逐しつつあるのだ

ドクトロウの言葉を借りれば「人は表現することやコミュニケーシ
ョンをとること、新しい何かを始めることが好きで、インターネッ
ト接続が普及しユーザーフレンドリーなコラボレーションツールが
使いやすくなったことに伴い、人がもつこの特性がひとつにまとま
ろうとしている」のだ

ピアプロダクションでは、契約や交渉といった間接業務がなく、興
味のあるプロジェクトへ参加者が自由に参加できるから、資源の分
配効率が高い

イノセンティブには、ボーイングやダウ、デュポン、ノバルティス、
プロクター・アンド・ギャンブルなどの企業が提出する課題を解決
しようと、一七五カ国、九万人もの人が集まっている

リンデンラボは一%にも満たないコンテンツしか作っておらず、毎
日、二万三〇〇〇時間もの開発努力をユーザーから「無償」で譲り
受けている

顧客が最も価値をおく部分でベストな企業となるよう努力し、それ
以外はすべてパートナーに任せる

製造業において革新を推進し、反復型の設計プロセスを実現するに
は、モジュール型アプローチが最適

出版業界は、インターネットを「情報ハイウェイ」と表現したがる。
だから、インターネットをピアツーピア・コラボレーションのプラ
ットフォームだとは考えず、巨大なコンテンツ流通メカニズムであ
る、パッケージされ、使った分だけ支払うコンテンツを世界に分配
するコンベアであると考えるのだ

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『ウィキノミクス』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/482224587X
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┃▼目次▼
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┃ はじめに
┃ 第1章 ウィキノミクス
┃ 第2章 嵐のなかの嵐
┃ 第3章 ピア開拓者
┃ 第4章 アイデアゴラ
┃ 第5章 プロシューマー
┃ 第6章 新アレクサンドリア人
┃ 第7章 参加のプラットフォーム
┃ 第8章 世界工場
┃ 第9章 ウィキワークプレイス
┃ 第10章 コラボレーションの精神
┃ 第11章 ウィキノミクス攻略法を作ろう
┃ 
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