本日の一冊は、ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会(JECS)が、クライアント企業の事例をもとに、ナレッジ・マネジメント実践の要諦をストーリー形式でまとめた、注目の一冊です。
1950年代に創業されたユニバーサル精機という精密機械部品メーカーを舞台に、ナレッジ・マネジメントによる「営業改革」のドラマを繰り広げられる、なかなか刺激的なビジネス小説です。
体系的にまとめられた理論書では決して表現できない関係者の利害関係や心情がうまく描き出されており、改革を実践する際の、現実的な問題点を理解することができるのが特長です。
プロジェクトチームにどんなメンバーを招集すればいいのか、各部署の利害関係の調整はどうするのか、ナレッジ・マネジメントを成功させるための具体的な手順はどうすればいいのか…。じつにさまざまなトピックが、このストーリーに凝縮されています。
ただ、問題があるとすれば、明確な手順を示したとはいうものの、「本当にこの施策で人は動くのだろうか?」という疑問が残る点。
社員が実際に参加するしくみ、という点では、『100億稼ぐ超メール術』で紹介されていたライブドアの営業日報の方が参考になると思います。
※参考:『100億稼ぐ超メール術』
http://tinyurl.com/5ojhg
全体的には、小説の内容もおもしろいし、マネジメント的にも参考になる部分が多いと思います。ナレッジの共有に関心のある方は、ぜひ読んでみてください。
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■ 本日の赤ペンチェック
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雇用の流動化で腰が落ち着かない新人に、先輩だって親身に仕事を教えるはずがない
成果主義の弊害=トラブルやクレームに対する減点意識
研究開発や生産、そして営業という基幹部門は、知識と経験とノウハウが要求される分野だけに、そう簡単に優秀な人材を補充できるものではない
プロジェクトは、秘密にすればするだけ、ねたみや批判的な人が出てくる。全社的な危機意識を持たせるためにも、ある程度はオープンにしておいたほうがいい
神経が切れているなら、つなげばいい
成功している企業は、すべて固有の価値を持つ製品をつくっている。その根幹にあるのは人間のアタマのマネジメントであり、ヒトの配置や業務プロセスやカネの使い方は、それを中心として発想されなければならない
すべきことと目標は、できるだけ単純化したほうがいい。現場では詳しい説明が必要な言葉は使わないほうがいい
ナレッジマネジメントを目的でなく、何かを達成する手段として位置づけておかないと、人は動きません
オマケ的な評価では本腰を入れた協力はしてくれない
訪問記録にせよ、提案書にしても、結果だけでなく、なぜそうなったのかといった背景情報がついていなければナレッジにならない
事業の課題は組織で解く。組織の課題は事業で解く
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『思考停止企業』
http://tinyurl.com/93ryw
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■目次■
第1章 忍びよる危機
第2章 スペックと価格だけではモノは売れない!
第3章 組織の壁を乗り越える
第4章 成果への確かな歩み
エピローグ
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