本日の一冊は、かつて中国の工場で奮闘していた日本人が、その現場の悲惨さといいかげんさを伝える、涙の物語です。
かつて、『システム管理者の眠れない夜』という本がベストセラーになりましたが、本書は、この中国工場編といったところです。
※参考:『システム管理者の眠れない夜』
http://tinyurl.com/cysjs
「一を聞いて十を(勝手に)語る」通訳や、いい加減な管理者、偽ブランドを平気で売りつけるショップ、不良品の責任を部品に求めるメーカー、自分でガラスを割っておいて修理を要求する作業員…。
うわさに聞く中国のひどい実態が、体験者の声を通して理解できる、生々しいレポートです。
ただ、一冊通して読んで感じることは、問題は中国人の側だけでなく、日本人の側にもあるということ。
本書では、この点もふまえ、中国人とやり取りする際の注意点や改善点を詳しく書いてくれています。
著者の失敗談がたくさん盛り込まれているため、少なくとも、現地に進出した時の心構えぐらいはできます。
未然にトラブルを防ぐためにも、ぜひ読んでおきたい一冊です。読み物としても楽しめるのではないでしょうか。
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■ 本日の赤ペンチェック
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「同じ漢字を使う国同士。筆談すれば通じるだろう」と簡単にいう人がいますが、漢字だって微妙に違うし、加工方法については同じ漢字が使われているとも限らない
中国では習慣的に、法律ではなく、権力や権限を持っている人によって物事が判断、処理されていく。つまり、法によって治められる「法治」ではなく「人治」
作業員に対しては、規則の遵守を厳しく求める管理者たちが、自身はちっともその規則を守っていない。そんなケースが中国では非常に多く見られます
通訳を使うと、10分で終わるはずの会議が一時間かけても終わらない
中国で優秀な人材を集め、長期に確保することは極めて難しい
チェックすべきはコストに関する事項だけではありません。三要素である「品質」「納期」「コスト」のすべてを満たす要件を備えているかを見極める必要があります
代金をもらう前に製品を納入したら、その代金はさまざまな理由で減額されたり、支払ってもらえなくなったりする可能性がある。逆に、発注した工事が完了していないうちに支払いを済ませてしまったら、その後はとことん手を抜かれるかもしれない
何が何でも、自分を有利にしようとすることが当たり前の中国では、製品の価格交渉においても言い方次第で価格が乱高下します
見積もりは発注を取るための方便
質の高い中国製品だけを見て「中国製品の品質が全体的に上がってきた」と考えるのは、大きな間違い。むしろ、良いところと悪いところの格差が広がってきたと考える方が正しい
事故を防ぐ手段は一つしかありません。すなわち、相手を信用しないこと。信用したければ、相手を信用に足る存在に自らの手でつくり変えることです
中国の工場で雇うのは中国人。日本流は捨て、当地流でいかなければ優秀な人材は集まらない
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『中国的工場カイゼン記』
http://tinyurl.com/b5mnr
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■目次■
序章 ストレスと涙から始まった
第1章 取引してみたら…
第2章 品質は大丈夫?
第3章 人材採用、人材活用の落とし穴
最終章 甘く見たら痛い目に
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