2004年7月20日

『プロフェッショナルマネジャー』

出版業界7不思議のひとつ。それは、「編集と営業の仲が悪い」ということです。これはどうやら雑誌部と書籍部にも当てはまるようで、先日来社した某社の営業マンは、「雑誌に著者のインタビュー記事が載っているにもかかわらず、書籍紹介がまったくない」と嘆いていました。

こんな出版界の現状をあざ笑うかのように、1冊の黒い本が売れています。そう、ユニクロ柳井さんの「幻のバイブル」として、プレジデント誌ででかでかと紹介された

『プロフェッショナルマネジャー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/483345002X
です。

行間がびっしり詰まっていて、翻訳も決して読みやすいとは言えませんが、内容は本当に素晴らしい。著者は、かつてITTのCEOとして、14年半連続増益を達成した辣腕経営者、ハロルド・ジェニーン。ITTはジェニーン在任中、あのエイビス・レンタカーやシェラトン・ホテル、ハートフォード保険会社はじめ、名立たる企業を傘下に持つ、一代企業グループだったようです。

この本は、日本企業が世界を席巻していた時期に書かれたもので、若干、アメリカ人へのエールといった要素も含まれています。
MBAホルダーに対する風当たりが強かった時期でもあり、ジェニーンも第13章「気になること」でこのように述べています。

「MBAの称号をもらって社会に巣立った若い人たちは、経営の情緒的要素の価値と、それを身につけるために支払わなくてはならない代価を知るまでは、私の定義に当てはまるビジネス・マネジャーにはなれない」

他にも彼は、

「マネジメントには目的が、献身がなくてはならず、その献身は情緒的な自己投入でなくてはならぬ」

「リーダーシップは物事を遂行するように人びとを駆り立て、答えを出さなくてはならないと感じるがゆえにそれをやり続け、満足できる結果を得るまでやめないように駆り立てる情念の力である」

などと言った金言を残しています。

賢明な読者なら、もうお気付きでしょう。そう、この本は、極めてロジカルでありながら、一方で非常に「人間くさい」本なのです。

それもそのはず。ジェニーンは、証券取引所のボーイから、図書の訪問販売、新聞の広告営業を経て、一流のプロフェッショナルマネジャーになった、まさに「実践の人」だったのです。

だから、中小企業経営者や、普段薄い本を好んで読む人も、装丁を見て敬遠しないでいただきたい。この本は、読む価値がある本です。何たって、久々に、本が赤ペンで真っ赤になりましたからね。

※今日の教訓:良い本は優れた人物に聞くのが一番手っ取り早い

『プロフェッショナルマネジャー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/483345002X

主要目次

はじめに 「これが私の最高の教科書だ」柳井 正
第一章 経営に関するセオリーG
第二章 経営の秘訣
第三章 経験と金銭的報酬
第四章 二つの組織
第五章 経営者の条件
第六章 リーダーシップ
第七章 エグゼクティブの机
第八章 最悪の病―エゴチスム
第九章 数字が意味するもの
第十章 買収と成長
第十一章 企業家精神
第十二章 取締役会
第十三章 気になること―結びとして
第十四章 やろう!
付録 「創意」と「結果」7つの法則 柳井 正
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