2011年12月19日

『経営者・平清盛の失敗』 山田真哉・著 Vol.2707

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062174332

本日の一冊は、160万部突破の大ベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の著者、山田真哉さんによる、2年ぶりの新刊。

※参考:『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334032915

ビジネス書の世界に、わかりやすさとエンターテインメントを持ち込んだことで知られる作家ですが、じつはその正体は、歴史研究家であり、かつ公認会計士。

今回の新刊は、そんな著者の強みを最大限生かした、ビジネス・歴史エンターテインメントです。

2012年のNHK大河ドラマ「平清盛」を先取りした企画で、何と平清盛のビジネスマンとしての側面にスポットを当てています。

当時、宋商人がすべてを取り仕切っていた日宋貿易を、父・平忠盛はどのようにして自分の利益に変えて行ったのか? 平清盛はどうして宋銭を輸入したのか? そして、「絹・米を交換手段とする物々交換経済が、たったの10年で貨幣経済へと変わった」のはなぜなのか?

歴史教科書の説明を疑うところから始まり、平家が滅亡するラストまで、一気に読ませてくれる、じつに刺激的な読み物。

ミステリーの手法をビジネス書に持ち込んだあたりは、さすが山田真哉さんといったところでしょうか。

歴史ファンを意識したためか、表紙がやぼったいのが玉に瑕ですが、読み始めたら、止まりません。

これからの日本経済の行方を示唆するところもあり、これは読んでおいて損のない一冊だと思います。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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日本史上において、本当に経済に強い武士は平清盛と坂本龍馬の二人だけだ

◆貿易の4大リスク
1.カントリーリスク
2.信用リスク
3.為替リスク
4.シー・ペリル(海固有の危険)

当時は、日本最大の貿易港・博多に宋商人が多く住んでおり、「唐房」と呼ばれる街を形成していました。その宋商人の中心的存在が、船の所有者である「博多綱首(ごうしゅ)」です。彼らは自らも船に乗り、日本との貿易のすべてを仕切っていたのです

すべてを宋商人が仕切っていたとしても、彼ら以外の者が莫大な利益を得る方法があります。それは、独占貿易です

◆貿易で儲ける3条件
1.販売単価が高く 2.形状が小さく 量が多い

賢い人は希少性の高いモノを「売る」ことなどしません。売らずに「贈与」するのです

忠盛は貿易で得た希少品を献上することで、豊かな国の国司になり、巨万の富を築いていったのです

権力の源泉というのは、ふたつしかありません。それは、金と人事権です

日本で初めて人工島をつくったのは平清盛

清盛は、貿易の中心地を博多から神戸に移すことで、貿易実務を宋から日本に移す一大革命を起こそうとしていた

日本で宋銭が普及したのは、おおむね1160年代から1170年代です。そして、1179年6月には「近日。天下上下病悩。號之銭病。」……つまり「銭の病」が流行った、という記録が残っています(『百練抄』)

「もしかして『銭』としてではなく『モノ』として宋銭を欲しがる人々がいて、流通していったのではないか」

現代の消費者金融が多重債務者問題を引き起こしたように、当時の銭貨出挙も多額債務者問題を引き起こした可能性がある

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『経営者・平清盛の失敗』山田真哉・著 講談社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062174332

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◆目次◆

まえがき
第一章 教科書にはない日宋貿易の真相
第二章 日本経済史最大のミステリー、「宋銭」普及の謎
第三章 平家滅亡の真犯人、そして清盛の「失敗」
第四章 経営者・平清盛
終章

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