【「M&A」の実体とポイント】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582857582
本日の一冊は、事業再生コンサルタントの著者が、下町の部品メーカー「水田部品工業」(仮称)のM&A物語を綴った一冊。
来年から相続税が改正され、いよいよ事業承継、相続が注目されるようになりそうですが、本書は中小企業経営者にとってリアルな選択肢である「M&A」の実体とポイントをわかりやすくまとめたもの。
税制上有利で、従業員の雇用も守れるM&Aを、もっと多くの中小企業経営者が知るべきと思いますが、本書ではそのM&A成功の秘訣と、どこがネックになるのか、実際の実務がどう進行するのか、具体的にまとめています。
本書によると、<M&Aは人、物、金の順番で難しい>そうですが、本書にはこれら3つのポイントが書かれており、勉強になります。
どうやって残された従業員に納得してもらうか、契約上のポイントは何か、どうやって企業価値を算定するのか。
いずれもさわりだけで、本格的にM&Aを考えるなら別の書籍が必要です。
しかしながら、M&Aがどんなものか知っておきたい経営者には、良い疑似体験コンテンツだと思います。
読み物としても面白いので、ぜひチェックしてみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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企業の退場には「余力」が必要なのです。そのタイミングを見極めるのも、経営者の大きな仕事です
「時間と人間」が買えること──それが買い手にとってのM&Aの魅力であり本質です
書い手から見る生産設備(工場)の価値は、新たに工場を建設するまでの時間だけでなく、土地収用の手間や費用、また従業員の募集からその教育に至るまで、通常なら大きな時間とコストがかかる部分を省略することができる
◆金融機関との交渉のポイント
1.交渉には資料を提出して、説明責任を果たす
2.全行平等のリスケジュールであることを強調する
3.経営改善計画の提出
口の固い者がM&Aを制する
企業価値を算出するのにはいくつかの方法があります。シンプルに考えれば、今この企業を清算したらいくら残るのかという「清算価値」を求める「純資産法」と、現在のままの企業活動を継続していくと一定の期間でどの程度の現金を生み出せるのかという「ディスカウント・キャッシュフロー法」が中心となります
買い手の「尊大さ」がM&Aを失敗させる
契約書は買い手が作る、というのが私の基本的な考えです。なぜならM&A実行におけるリスクは買い手にあると考えるからです
一般的に契約は「◯◯をする」「◯◯をしない」というように、ある行為を「する、しない」で規定されています。しかしM&Aの契約では、「する、しない」の他に、M&Aの前提となったある事実があったかなかったかを、一方(通常売り手)が相手側(通常買い手)に表明し保証します。「前提となる事実」とは、
・売り手がこのM&Aを実行するために契約上の義務を履行するための権利能力と行為能力を有しているか
・それを実行するために、法令上および売り手の内部規則において必要とされる一切の手続きを履践しているか
退職金が出ること、慰労金が出るという表現があったこと、社員全員の就職先探しが目標であると明言したこと、芳男専務の言葉の一つ一つは、社員たちの不安を予め見越して用意されたものでした。経営者として、社員たちへのせめてもの誠意と言ってもいいでしょう
まずは、私的再生を選ぶことで「可能な限り雇用を守れる」こと。事業継続で「取引先に迷惑が掛からない」こと。「税金の滞納がなく」これからも納税していけること。金融債権者には、事業継続することで「破産配当以上の返済」ができること。これらの条件が揃うならば、私は法的整理(破産手続きなど)をするよりも私的整理を優先すべきと考えます
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『下町M&A』川原愼一・著 平凡社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582857582
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◆目次◆
第1章 Xデーがきた──苦渋の決断
第2章 倒産危機から再生への歩み
第3章 経営者の孤独──口の固い者がM&Aを制する
第4章 売り手と買い手、それぞれの鉄則
第5章 社員たちのM&A
第6章 「私的再生」という出口戦略
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