2014年8月21日

『首都水没』土屋信行・著 vol.3684

【ゲリラ豪雨で首都が水没する?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166609807

最近は、各地でゲリラ豪雨が相次ぎ、痛ましい事故もいくつか報告されています。

じつはこのゲリラ豪雨、一過性のものではないようです。また、いざ起こった場合、全国の都市の中には、水の被害が起こりやすい、脆弱な場所がいくつかあるようです。

2020年の東京オリンピックが発表されて以来、日本ではちょっとした不動産投資ブームが起こっていますが、災害の可能性を考えずに不動産購入するのは、ちょっと危険と言わざるを得ません。

そこで本日ご紹介するのは、元都庁の土木専門家が、今後日本に起こりうる水の被害について述べた一冊。

タイトルに『首都水没』とあるように、主に首都圏の危険地域を解説していますが、他の地域でも充分参考になる内容だと思います。

本書が指摘しているのは、東京一極集中の危険性。なぜなら著者によると、“東京は世界一危ない都市”だからです。

著者のコメントを引いてみましょう。

<日本は国土の約73%が山岳地帯と丘陵地で、残りが台地(約11%)と低地(約14%)です。低地とは高さが海抜100m以下の地域で、その面積の約70%が、洪水になると水没する可能性があります。この低地に、国民の約半分が集まって暮らし、総資産の約75%を集中させてしまったのです>

では、具体的にどこがどう危ないのか?

その点についてもコメントがあったので、紹介しておきます。

<今、ゲリラ豪雨で、気をつけなければならない場所は、中小河川を暗渠化して道路にした所や、その周りに建設された住宅地、溜め池だった所を埋めたてて住宅地にした所などです>

<水害では、東京東部(下町)の低地の被害が、西側のいわゆる山の手とは比べ物にならないほど大きいのが実態>

本書を読む限り、大切なのは、その土地の地形と歴史を知ること。水没マップでチェックしておくのも手だと思います。

※参考:水没マップ
http://flood.firetree.net

本書では、東京の治水の歴史や、どんな場所にどんな安全対策がなされているか、どこに脆弱さがあるかを、プロである著者が述べています。

ぜひチェックした上で、不動産購入、オフィス移転に役立てていただければと思います。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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道路が全て舗装され、宅地開発が進み建築物が立て込んで、降った雨の大半が下水管の中に流れ込むようになっている東京のような場所では、雨が降りはじめたら、直ちに下水管から逃げ出さなければなりません

今、ゲリラ豪雨で、気をつけなければならない場所は、中小河川を暗渠化して道路にした所や、その周りに建設された住宅地、溜め池だった所を埋めたてて住宅地にした所などです

水害では、東京東部(下町)の低地の被害が、西側のいわゆる山の手とは比べ物にならないほど大きいのが実態

最終的に、江東区、墨田区、江戸川区の辺りは、東京湾の干潮位よりも低くなってしまいました。ゼロメートル地帯の出現です。この地域で一番地盤の低い江東区南砂7丁目は、干潮位からマイナス約1・4mとなっています

堤防決壊後6時間で西日暮里など6駅、9時間で上野駅など23駅、12時間で東京・大手町など66駅、15時間で銀座・霞ヶ関・赤坂・六本木など89駅が浸水、地上より早く地下が浸水してしまう駅が35、後楽園駅や神保町駅、霞ヶ関駅、六本木駅など44の駅では、地上の浸水がなくても地下が水没することが判明しました

2020年の東京オリンピックへ向け、渋谷では大規模な地下街建設も進んでいます。これらの地下街が洪水時には浸水の危機にさらされるのです

台風が発生し発達するには、海面水温は28度以上であることが必要だと言われています。また、一般的に台風の勢力を維持する海面水温は26~27度以上と言われています(中略)台風は反時計回りに回転し進行方向の中心から右半分の勢力が強くなります。という事は日本海の海面水温が高いと、日本海を通過する台風は海面から水蒸気の供給を受け続けることができるので、勢力を落とさずに日本海を北上し続けます。そのとき台風の右側に位置した日本は台風の強いほうの勢力圏にすっぽりと収まってしまうのです。あらゆる点で日本周辺の海水温度が高いという事は大問題なのです

地震があったら地下鉄から逃げろ!

江戸川区の住民は約68万人ですが、避難所に指定されている小学校・中学校106校のうち、想定される浸水の高さ以上の床が確保されているのは、21校しかない

被害のなかった「神社仏閣」

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『首都水没』土屋信行・著 文藝春秋
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166609807

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◆目次◆

第1章 山の手にも洪水は起こる
第2章 東京は世界一危ない場所にある
第3章 地球温暖化で首都は壊滅する!
第4章 利根川の東遷事業が東京を危険都市にした
第5章 雨が降らなくても洪水になる「地震洪水」
第6章 なぜ東京は世界一危ないのか?
第7章 東京の三大水害に学ぶ
    明治43年の「東京大水害」
    大正6年の「大海嘯」
    昭和22年の「カスリーン台風」
第8章 洪水は流域一帯で起こっている!
第9章 強靱な日本を創るために

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