2014年3月25日

『シンプルな戦略』 山梨広一・著 vol.3535

【『シンプルな戦略』で、自社の課題が見える】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492533419

レストランで「さっぱり味」と書かれたメニューがあったとして、本当にさっぱりなだけの味だったら、顧客の支持は得られません。

たとえ「シンプル」が売りだとしても、われわれ消費者は、何か引っ掛かる「味付け」を求めているものでしょう。

本日ご紹介するこの『シンプルな戦略』を手に取った時も、同じことが頭をよぎりました。

「本当にシンプルなだけだったらどうしよう?」

――幸いなことに、それは杞憂でした。

本日ご紹介する一冊は、マッキンゼー・アンド・カンパニーに在籍して25年、パートナー経験20年のトップコンサルタントが教える、「シンプルな戦略」の指南書。

タイトルに偽りなく、戦略の要諦をズバリ、言ってのけています。

その戦略の要諦とは、「一言で言えること」。さらには、以下の3大基本要件を満たしていることです。

・顧客に喜ばれる
・競争に勝つ
・儲かる

自社の戦略がこの3大基本要件を満たすかどうかは、以下の質問に答えることで、容易に理解できます。

Q1 顧客にとって、うれしいことかどうか
Q2 それは他の会社とは違うのか
Q3 自社は儲かるのか

著者は、この「シンプルな戦略」を実践している企業として、ファーストリテイリングやすき家、その他の有名企業を挙げ、その戦略の秀逸さを解説しています。

ZARAを追うファーストリテイリング、吉野家を逆転したすき家、「グローバル企業」を目指し、首位のネスレを追うサントリー…。

各業界のリーディングカンパニーが、どんなファクトに基づき、どうやって「シンプルな戦略」を見出したか。そして実際に今、どう取り組んでいるのか。そのプロセスを追体験するだけでも、ワクワクします。

なかでも勉強になったのが、「境界条件の再定義」という考え方。戦略構築に際して必ず満たすべき前提条件を再確認し、不要な境界条件をなくしたり、変えることで斬新な戦略が打ち出せるという考え方は、戦略で行き詰まっている企業経営者に、ぜひ知っていただきたい考え方です。

シンプルなだしだと思って口にしたら、かつおの風味がふわーっと香り、思わずよだれが出てきた。そんなテイストの一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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戦略のWhatが明快であることと同時に、その背景であるWhyも明快であることが重要

戦略を作る経営陣およびスタッフは、組織階層間での情報伝達はある程度歪んでしまうものだと、思っておいて間違いないだろう。修飾語や条件節がいくつもあるような難しい戦略になればなるほど、歪みや誤解を生む余地が大きくなってしまう

◆新ビジネス参入の典型的な二つの成功パターン
1.競争や収益性などを一切気にせず、一つは自分が非常にワクワクするようなこと、消費者にとっても楽しいことを一心にやっていたら、結果的にそれがイノベーションを生み出したというケース
2.当面は儲けを出すのは難しいが規模が大きくなれば可能だという見通しがあって、その論拠もきちんと押さえられているケース

ユニクロの戦略は、「独自の付加価値を持った目玉となる戦略商品をとにかく徹底的に最大限売る」ことだと言える

それは「これまでの牛丼チェーンのお客さんとは違うセグメントを取り込む」というものである。それまでの牛丼チェーンの主要顧客層と言えば、サラリーマンや学生など男性の一人客だった。その主要ターゲット層以外、つまりファミリーや女性客を取り込もうというのが、すき家の戦略である

◆戦略構築の6つのステップ
(1)戦略目的の設定→(2)境界条件の再定義→(3)環境分析と洞察→(4)課題の抽出→(5)戦略的方向性の創出→(6)まとめ上げ

「営業マンはいなくていい」と境界条件を変えた松井証券

ある課題に直面したとき、何もないところから自分自身で斬新なアイデアを創出するのがクリエイティビティだとすると、リソースフルとはアイデアの在庫があってAという課題に対して「これが当てはまるか?」「こっちはどうかな?」と引っ張ってこられるネタを自分の中に豊富に持っているということ

ある課題を「それはこの戦略が対応すべき重要な課題ではない」と決めてプロセスを進めようとすると、必ず「でもそれも重要でしょ?」という反応を示す人が出てくる。(中略)戦略を有効なものとするためには腹決めは避けては通れない

KCI(Key Competitiveness Indicator)とは、KPIと同様の発想で競合他社の定量分析を行うための指標として、私が名づけたものである。その業種、その事業で競合の企業力を計る固有な指標をKCIとして独自に定め、主たる競合企業と自社を同一指標で定点観測して相対評価していく。これは競合の動きを客観的に捉えるために有益である

「ポン酢ジュレ」という商品をご存じだろうか。これまでは天ぷらなどにポン酢をかけるとどうしても液体なのでサクサク感がなくなってしまっていたが、ジュレ状にすることによって食感を損なうことがなくなり、液体とは違い盛り付けにも適しているため弁当などにもよく利用されている。誰が決めたわけでもないのだが「ポン酢というものは液体である」と思いこんでいた商品形態に関する境界条件を外したことで開発できたものだろう

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『シンプルな戦略』山梨広一・著 東洋経済新報社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492533419

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◆目次◆

PARTI 今、なぜシンプルな戦略が必要なのか
PARTII 戦略構築の基本:そもそも戦略とは何か
PARTIII シンプルな戦略の三つのパターン
PARTIV シンプルな戦略で成功するために求められるもの

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